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150キロ超連発! 世代最速右腕高橋が本領発揮!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
中京大中京の高橋宏斗が150キロ超を連発し、世代最速を証明した(筆者撮影)

 秋の神宮大会で優勝し、センバツの目玉だった中京大中京(愛知)の最速154キロ右腕・高橋宏斗(3年)が、ついに甲子園に登場。強打の智弁学園(奈良)相手に150キロ超を連発し、最速右腕の面目を保った。

高橋は初回から飛ばす

 10日にわずか2イニングとはいえ、全力投球で愛知の独自大会優勝に貢献した高橋は、中一日で、最初で最後の甲子園のマウンドに立った。智弁には来年のドラフト1位候補・前川右京(2年)ら、強打者が揃っていて、初回から飛ばす。先頭打者の初球から148キロで、すぐに152キロが出た。2番・白石陸(3年=主将)に150キロを内野安打されたが、注目の前川には150キロで空振りさせたあと、低めのツーシームで中飛に打ち取った。

 中京打線は初回に智弁の左腕・西村王雅(2年)を効率よく攻め、速攻で3点を奪って、序盤で主導権を握る。4回1死まで5三振の高橋は、前川との2度目の対決から急におかしくなった。カットボールが死球となって歩かせると、さらに死球と安打で満塁とされる。ここで7番・浦谷直弥(3年)に押し出しの四球で1点を献上。さらに9番の西村の2点適時打で同点とされると、中盤以降は互角の好勝負となった。

タイブレークで中京がサヨナラ

 同点打で気を良くした西村は、4回裏から別人のような投球。4イニング連続三者凡退で流れを渡さず、ついに試合は終盤の1点勝負となった。高橋は、9回の139球目にこの日最速の153キロで三振を奪い、味方のサヨナラを待った。しかしその裏、自身も凡退すると、交流試合特別ルールで、10回からタイブレークに。10回表も高橋は150キロ超で圧倒すると、最後は無死満塁から二飛を智弁が落とし(インフィールドフライと失策)、4-3で中京が死闘を制した。

進学かプロか?注目の進路は?

 高橋は、「エースとして投げ切らないといけないと思い、監督にも『最後までいきます』と言った。(公式戦)無敗は、次にステップアップできるし自信になる」と、ハキハキした口調で答えた。10回5安打11三振3失点で、149球を投げたが、10回にも150キロ超があり、スタミナも無尽蔵だ。注目の進路については、「まだ考えているところ。進学が基本線ですが..」と明言は避けた。昨秋、当時慶大4年だった5歳上の兄と一緒に神宮大会に出て、春先の休校期間中の自主練習でも兄とトレーニングをしたという。尊敬する兄の背中を追うのか?それともプロか?高校ナンバーワン右腕の動向が気になる。

技術の高さ見せた前川

 その高橋との力勝負が期待された智弁の前川は、中飛、死球のあとの第3打席では、速球で追い込まれたあと、ツーシームで空振り三振。ようやく第4打席でそのツーシームを二塁右へ打ち返し、3打数1安打1三振で終えた。「4番がノーヒットではいけないと思った。最初は球が速かったので、力でいってしまって空振りもあった。最後はうまく体の回転とキレで打てた」と振り返った。速球を豪快に打ち返す場面を期待したが、全体的には高橋の投球術が上回った印象。それでも最終打席の安打は、前川の対応力と技術の高さを証明したもので、先輩に花を持たせるとしても、「完敗」でなかったことは確かだ。

タイブレークに投手の走者は?

 ところで、「タイブレーク」について気になったことがある。たまたま打順の巡りが似ていて、10回の走者の一人が両チームとも投手になった。頭部死球などで適用される「臨時代走」は直前の打者が投手の場合は、その前の打者になる。そもそもタイブレークは、消耗が最も激しい投手の健康を守るのが主目的ではなかったか。敗れた智弁の二塁走者がエースの西村で、彼は9回を投げ終えてすぐ走者になり、10回の攻撃中、ずっと炎天下にいた。そしてまたマウンドに向かい、自身の失策もあってピンチを広げた。サヨナラで終わったが、高橋も、11回まで試合が進んでいたら、同じ状況でさらに消耗したに違いない。ルールの再考を切にお願いしたい。

1年生躍動の加藤学園

 第二試合は、甲子園未経験だった鹿児島城西加藤学園(静岡)が熱戦を繰り広げた。この試合では、センバツなら存在しない1年生の活躍が見られた。加藤学園の1番・太田圭哉だ。初回、難しい遊ゴロを併殺にすると、6回には二塁打でチームを活気づける。3番・大村善将(3年)の中前打で先制の生還を果たすと、8回には盗塁も決めて追加点を演出し、勝利に大貢献した。今回は、「センバツ出場に貢献したメンバーで」というスタンスが大半で、1年生を主力として起用するチームは見当たらない。「この経験を次のチームに伝えて、また甲子園に戻ってきたい」と話す太田の表情は自信に満ち溢れていた。またとない機会で得た経験を継承しようとする初出場チームの思いが、痛いほど伝わってきた。

プロの首位打者でも感じた甲子園の圧

 同じ初出場の鹿児島城西も1-3のスコアながら、内容的には負けていなかった。最後はエースの八方悠介(3年)が息切れして突き放されたが、9回に3年生の控え選手の連打などで1点をもぎ取った。元プロ選手で首位打者経験もある佐々木誠監督(54)は、「最後は3年生で何とか1点を、と思ったが、よく頑張ってくれた」と上級生をほめた。プロで名を馳せた一流選手でも高校野球の聖地は格別だったようで、「プロの時の甲子園とは全然、違う。最高の準備をしてきたが、甲子園の圧に圧倒された」と、ほろ苦い甲子園初采配を振り返っていた。

後半戦はビッグカード目白押し

 このあと15日から後半の9試合が行われる。履正社(大阪)-星稜(石川)の昨夏決勝カードの再現や、意外にも甲子園初対決の大阪桐蔭東海大相模(神奈川)など、ビッグカードが目白押し。1試合限定だけに、ここまでどのチームも全てを出し切っている印象で、好試合が続いている。後半戦はさらにヒートアップしそうだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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