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波乱なし! センバツ出場校決定!  選考過程を検証

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ出場校が決まった。地区大会の結果通りの極めて順当な顔ぶれだ(筆者撮影)

 令和初のセンバツ出場校が決まった。例年、いくつかの地区で「波乱」があるが、今回は驚くほど順当な結果となった。注目地区を中心に、選考過程を検証したい。

東京決勝が痛恨だった帝京

  関東・東京のいわゆる「抱き合わせ枠」は、花咲徳栄(埼玉)が帝京(東京)を抑えた。東京大会で、関東一、日大三、創価などの強豪を次々と破って快進撃を見せた帝京だったが、国士舘との決勝では投打に精彩を欠き、0-6の2安打完封負け。結果的にはこの完敗が響いた。地区別委員会の井上明委員長は、「久々に帝京復活かと期待したが、決勝で力を出せなかった。打線のつながりのなさが残念だった」と話した。対象となった徳栄との比較では、「帝京は継投策だが、安定感に欠ける。投手力を含めた総合力で、(徳栄に)分がある」と選出理由を説明した。それでも井上氏は、「力に大差はない。実際に戦えばどちらが勝つかわからない」と帝京の実力を認めたことは救いで、選手たちにはこれを励みに夏をめざしてほしい。昨年は、大方の予想を覆して横浜(神奈川)が選出されたが、「この枠はいつも苦しい」(井上氏)と、来年以降も選考委員を悩ませそうだ。

「直接対決」をめぐる相違

 東海と北信越では、「直接対決」をめぐる相違があった。北信越は星稜(石川)の力が傑出していて、2番手争いは、最終的に準優勝の日本航空石川と8強止まりの敦賀気比(福井)の一騎打ちとなった。地区別委員会の鬼嶋一司委員長は、「気比の戦力は、星稜、航空と比較しても遜色ない」としつつも、「直接対決で勝っている航空を外せない」と石川独占の理由を説明した。同じ選考委員による東海では、残る一つの「神宮枠」を静岡勢で争い、結果的には、準決勝での試合内容が明暗を分けた。鬼嶋氏は「加藤学園が県岐阜商と延長の熱戦を演じていて、投手力でも藤枝明誠を上回る」と結論付けた。加藤学園と明誠は静岡大会決勝で直接対決していて、明誠がサヨナラ勝ちしている。鬼嶋氏は、「そういうデータがあることもわかっているが、実際に見た目を重視した」と説明した。この不一致は、選考委員が実際に試合を見たかどうかだ。北信越では、準決勝がいずれも一方的な試合になり、「上位2校と大差がある」(鬼嶋氏)として、準々決勝敗退の気比を浮上させたが、選考委員の目の前で勝った航空に軍配が上がった。しかし選考委員は、東海大会の前に行われた静岡大会を見ていない。この「直接対決」における不一致は、「実際に見た選考委員の目で判断する」としたことで、着地点にたどりついた。

近畿は戦力を評価、「無風」の選考

 近畿は、準々決勝の試合内容で明暗が分かれた。実力のある明石商(兵庫)が5番目に選ばれたのは、まったく異論ない。6番目には智弁和歌山を選び、履正社(大阪)に8回2死からコールド負けした京都翔英は涙をのんだ。それでも、地区別委員会の前田正治委員長は、「コールドでなければ、ということはない。取り組む姿勢なども含め、翔英が(智弁和歌山を)上回るところを見出せなかった」と説明した。筆者も実際に試合を見ているので戦力評価そのものに異論はないが、これで京滋勢は25年ぶりに出場校なしとなった。中国・四国の「抱き合わせ枠」は、対象校の試合内容に大差があり、広島新庄が順当に選ばれた。平田(島根)が先に21世紀枠で選ばれていて、中国4、四国2と、アンバランスになるが致し方ない。今回の一般枠は、秋の地区大会の結果がそのまま選考に反映される「無風選考会」となった。

帯広農と平田をまず選出

 一般枠の前に決まった21世紀枠は、東の1番手に帯広農(北海道)が入り、西は平田だった。東はほかに、磐城(福島)と近大高専(三重)の評価が高く、帯広農と3校で争った。帯広農は、部員の過半数が農業後継者で、平日は実習などのため全体練習ができない。個人が創意工夫した練習で打撃のレベルアップにつとめ、北海道大会4強につなげたことが評価された。西は平田と伊香(滋賀)が一騎打ち。両校とも過疎地域の伝統校で、よく似たタイプだが、平田は地元の幼稚園、保育園の子どもたちを相手に「野球教室」を開いている。部内に「普及班」の選手がいて、自主的に活動している点が高い評価を得た。平田は昨年も同じようなアピールポイントで補欠校になっていて、1年上の先輩たちも含めた評価だったと感じる。

磐城は文武両道で唯一の選出

 最後の1校は、磐城が伊香と近大高専を抑えた。磐城は台風被害に見舞われた中、東北大会で2勝し、大会後には復旧のボランティアにも尽力した。前出の2校が、「困難克服」タイプだったのに対し、磐城は県内屈指の進学校として知られ、夏の甲子園準優勝経験がある。典型的な「文武両道」として磐城の選出は、極めて順当である。3校が揃って同じようなカラーにならないことは、今後も継承されるものと思う。プレゼンテーションを傍聴して感じたのは、多くの発表者が、アピールポイントの紹介に腐心していることだ。選手や戦力にある程度踏み込んで言及したのは伊香ぐらいで、選考委員との質疑応答では、具体的な戦力に対する質問も出た。しかし、決まった3校はいずれも地区大会に出て、勝ち星を挙げている。選ばれたからにはスタートラインは同じなので、甲子園では強豪との対戦も考えられる。戦力については、その裏付けで十分ということなのだろうか。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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