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最後に大阪桐蔭名乗り  甲子園56代表決まる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
100回大会出場の56校が出揃った。大阪桐蔭、2度目の春夏連覇なるか(筆者撮影)

 8月5日に開幕する夏の全国高校野球の代表56校が決まった。残っていた4地区の決勝が30日に行われ、センバツ優勝の大阪桐蔭が、大阪大会の新記録となる23得点のすさまじい攻撃力で北大阪大会優勝。昨年逃した「2度目の春夏連覇」に挑む。

波乱もあった地区大会

 各地区大会では序盤に波乱が多かったものの、概ね、予想されたチームが勝ち上がった。序盤の波乱で言えば、三重大会で、センバツ4強で大阪桐蔭を追い詰めた三重が、初戦で松阪商に敗退。同8強の日本航空石川も、ライバル・星稜と対戦することなく、早々に姿を消した。チームが軌道に乗る前に力を発揮することなく敗れた有力校は、悔いが残ったことだろう。終盤戦では、高知大会で、9年連続出場を狙った明徳義塾が決勝で高知商に完敗。投打とも全国トップクラスの戦力だっただけに意外な敗退だった。北神奈川では、東海大相模が準決勝で敗れたが、相手がセンバツ出場の慶応義塾だったから、これは波乱とまでは言えないが、有望1年生も加わった新チームに期待したい。

私学全盛の流れ止まらず

 今大会は、春夏通じて初の甲子園が白山(三重)、折尾愛真(北福岡)、沖学園(南福岡)の3校。公立は史上最少だった昨年と同じ8校にとどまるが、全出場校が去年より7校多いため、割合で言えば事実上の史上最少。「強豪私学全盛」の流れは止まりそうにない。各地区大会では、公立の健闘もあり、「公立対強豪私学」の決勝もかなりあった。埼玉の2大会はいずれもその図式で、北埼玉の上尾は34年ぶりの選手権出場をあと一歩で逃した。静岡では、78年ぶりの出場を狙った島田商が、福井では勝てば49年ぶりとなった若狭が、いずれも厚い壁に跳ね返された。日曜日には、都立の文武両道・小山台が東東京決勝で惜敗。古豪・福島商は、聖光学院の12連覇阻止に燃えたが、力尽きた。また、高松(香川)と先述の松阪商は、いずれも決勝で公立対決に敗れ、それぞれ84年ぶり、59年ぶりの大舞台出場はならなかった。

かつての名選手や宣誓主将が監督で甲子園に

 聖光学院は、自身の持つ戦後最長の連続出場記録を「12」に伸ばし、「8強の壁」突破に挑む。一昨年の甲子園覇者・作新学院(栃木)は、8年連続で、今回も上位をうかがう。久しぶりでは、東海大熊本星翔が35年ぶり。前回出場時の校名は東海大二で、東海大一(現東海大静岡翔洋)と初戦で当たり、完敗している。藤蔭(大分)は28年ぶりで、開会式で選手宣誓をした原秀登監督(45)がチームを率いる。優勝経験のある佐賀商も10年ぶりの復活で、九州に復活組が目立つ。初出場では、折尾愛真が創部15年目で大舞台へ。元女子高で、女子野球部もある。1980年代、三重に君臨した明野で4番打者だった奥野博之監督(48)が、当時を彷彿とさせる強打のチームを作り上げた。白山は、部員不足から廃部の危機を乗り越えての甲子園で、地元の期待も大きい。

2度目の春夏連覇狙う大阪桐蔭

 さて、本大会の焦点は、何と言っても大阪桐蔭の史上初の「2度目の春夏連覇」なるか、だ(タイトル写真=7月27日撮影)。昨年も大きな期待を受けたが、3回戦で仙台育英(宮城)に9回2死から逆転で敗れた。

大阪桐蔭を牽引する根尾。西谷監督は大事な試合を必ず根尾に任せる。打っても5番でポイントゲッターだ。(筆者撮影)
大阪桐蔭を牽引する根尾。西谷監督は大事な試合を必ず根尾に任せる。打っても5番でポイントゲッターだ。(筆者撮影)

その試合で痛恨の失策をした主将の中川卓也をはじめ根尾昂、藤原恭大ら主力がその悔しさを知っていて、北大阪大会準決勝の履正社戦では、先攻の9回2死走者なしから逆転する底力を発揮した。レギュラーの半数以上が前チームから攻守の軸であり、センバツ優勝の実績も加味すれば、揺るぎない優勝候補の一番手と言える。西谷浩一監督(48)は、「去年夏の辛い負けからスタートしたチーム。甲子園が決まって、本当の挑戦権を得た。正々堂々と春夏連覇に挑戦したい」と力強く宣言した。しかし、それを追うライバルたちも力をつけている。

智弁和歌山、横浜なども差なく追う

 センバツ決勝で当たり惜敗した智弁和歌山は、その後の近畿大会でも決勝で当たってまたも惜敗。昨秋からこのチームでの公式戦は大阪桐蔭の3連勝となったが、その差はわずかだ。選手個々の力で迫るのは横浜(南神奈川)。昨夏も投げた板川佳矢(3年)、及川雅貴(2年)の両左腕に加え、1年から主力だった万波中正(3年)がマウンドにも上がるなどタレントが揃っている。センバツ8強で、圧倒的な強さで石川大会を制した星稜は、1年生の新戦力がさらに勢いをもたらしている。西東京大会決勝をサヨナラ本塁打で制した日大三は、投攻守に高いレベルでまとまる。龍谷大平安(京都)は、甲子園通算99勝で、節目の大会で100勝の大台超えを狙う。昨夏甲子園準優勝の広陵(広島)は、「豪雨災害の被災地に明るい話題を」と燃え、初の選手権優勝を誓えば、昨夏王者の花咲徳栄(北埼玉)は、4番を打つ野村佑希(3年)がエースとして夏の連覇に挑む。大阪桐蔭にとっては、春以上の厳しい戦いが待っていることは間違いない。注目の組み合わせ抽選会は、8月2日に行われる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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