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智弁和歌山死闘制す! センバツベスト4決定!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
日曜日の甲子園はベスト8が激突し、熱戦に沸いた。いよいよ準決勝だ(筆者撮影)

 前日の3回戦から熱戦に拍車がかかり、土日の甲子園は歓声に包まれた。準々決勝では、智弁和歌山が創成館(長崎)と死闘を演じ、10回2死からの逆転サヨナラで4強に進んだ。準決勝では東海大相模(神奈川)と対戦する。大阪桐蔭は花巻東(岩手)を序盤から圧倒して大差をつけ、19-0で大勝した。星稜(石川)との乱戦を制した三重が準決勝の相手だ。

智弁和歌山 序盤の劣勢を盛り返す

 智弁和歌山は先発の小堀颯(3年)が立ち上がりから制球に苦しみ3点を失う。

智弁和歌山は黒川のアーチで反撃開始。この試合は最後も黒川のバットが勝利を呼び込んだ(筆者撮影)
智弁和歌山は黒川のアーチで反撃開始。この試合は最後も黒川のバットが勝利を呼び込んだ(筆者撮影)

 しかし2回に黒川史陽(2年)が左翼ポール際に追撃の本塁打。3回に突き放されると、その裏には林晃汰(3年)にもアーチが出て追い上げる。智弁は二番手の池田陽佑(2年)もつかまり、中盤でじわじわ離され、7-2と5点差をつけられた。それでも智弁は5回に4点を返し、終盤に望みをつないだ。6回からはエース平田龍輝(3年)がマウンドに上がるが、ピリッとしない。7回、創成館の5番・野口恭佑(3年)に2点打を浴び、またも突き放された。創成館もエース左腕・川原陸(3年)を投入して必死の逃げ切りを図るが、粘る智弁は9回2死から平田が同点打を左前に運び、9-9で延長に突入した。

延長で逆転サヨナラ

 10回の創成館は1死から野口が三塁手林の正面へ鋭い当たり。これを林がはじき(記録は安打)、盗塁と捕手の失策で三進を許した。ここで平田が犠飛で失点すると、智弁は追い詰められた。その裏、先頭の西川晋太郎(2年)が死球で出塁すると打席には林。しかし3つ空振りして倒れると、続く文元洸成(3年=主将)も投ゴロで2死になった。諦めない智弁は冨田泰生(3年)が追い込まれながらも四球を選ぶと、好調の黒川に回った。「練習でもずっと当たっていたし、今日はいくやろな、と思っていた」と高嶋仁監督(71)も期待を寄せる2年生が、左翼手の頭上に大きな当たり。打球がぐんぐん伸びてフェンスに到達する間に、2者が還り奇跡的な逆転サヨナラ劇となった。

主砲の涙 準決勝での活躍誓う

 黒川は、「自分が決めてやる、と思っていた。ここまで結果は出ていなかったが、自信をもっていこうと言いきかせていた」とふり返った。父の洋行さん(42)は、上宮(大阪)の主将としてセンバツ優勝に輝いている。「父を超えたい。甲子園では2回以上優勝したい」と目標も高いだけに、大仕事をした割には平然としていたが、先輩の林と並んで話を聞かれると、相好を崩した。「林さんが泣いていたんで」と言って林に視線を送った。それを聞いた林は、「泣いてない」と強がったが、「悔しかったのとありがとう、という気持ちがあった」と涙の理由を話し、後輩に感謝した。「守備のミスを(三振で)取り返せなかった。それが悔しかった」と大振りで三振した10回の打席を反省し、「次はしっかり打つ。ずっと迷惑かけてるんで」と準決勝での活躍を誓った。

因縁の東海大相模と準決勝

 準決勝の相手は東海大相模に決まった。平成12(2000)年の春、決勝で敗れた因縁の相手だ。

甲子園歴代最多勝監督の高嶋監督は、この日の勝利で「67」まで伸びた(筆者撮影)
甲子園歴代最多勝監督の高嶋監督は、この日の勝利で「67」まで伸びた(筆者撮影)

 当時の智弁は歴代でも最強レベルの強打を誇り、夏は優勝した。高嶋監督は、「今日みたいにあれだけ投手が打たれたら。ある程度は抑えてくれないと」と3人で16安打を浴び、10失点した投手陣の奮起を促した。「走者を出してからの配球が課題」とも話し、休養日にバッテリーを再教育するつもりだ。東海大相模は、日本航空石川の左腕に苦戦したが、森下翔太(3年)が今大会初打点となる適時打を放った。大会を代表する左右のスラッガー、林と森下の競演も楽しみだ。高嶋監督の言うように、智弁投手陣の踏ん張りが最大のポイントで、この日のように序盤から離されると苦しい。東海大相模は左腕・野口悠斗(2年)が大きく曲がるカーブを武器に相手攻撃陣を揺さぶって、エースの本格右腕・斎藤礼二(3年)へつなぐパターン。外角中心の慎重な投球をするので、智弁は大振りすると斎藤のペースにはまる。

大勝の大阪桐蔭は三重と

 大阪桐蔭は、予想外の大差で花巻東(岩手)を寄せつけなかった。エース柿木蓮(3年)を5回で降板させ、消耗なく準決勝へ進めるのは大きい。準決勝でも柿木を先発させるか。できれば根尾昂(3年)を登板させずに決勝進出を決めたい。決勝の相手は、いずれにしても今大会屈指の強打線を誇るチームになるので、根尾が万全で登板できればベストだ。準決勝の相手は三重で、4年前の夏の決勝カード。三重は、変則右腕の福田桃也(3年)を星稜(石川)との乱戦で温存できたのが大きい。力投派の定本拓真(3年=主将)も体力的に問題なく、投手陣は万全で臨めそうだ。三重が桐蔭の中軸左打者に連打を食らうようだと苦しい。福田がうまくタイミングを外して、粘り強く投げられるか。

消耗激しかった星稜、花巻東

 準々決勝では、連戦となったチームが消耗から崩れる場面が見られた。好救援して近江(滋賀)から逆転を呼び込んだ星稜の奥川恭伸(2年)が、準決勝では最終回に失策から大量失点し、石川勢初のセンバツベスト4を逃した。花巻東も延長サヨナラ勝ちの勢いを発揮する間もなく、大阪桐蔭に先制パンチを浴びて意気消沈したのは残念だった。延長を戦ったチームには酷な日程だったとも言える。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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