Yahoo!ニュース

新ヒーロー出現 今大会最速151キロ!  作新・今井

森本栄浩毎日放送アナウンサー
6年連続出場の作新学院・今井が151キロの速球でスタンドを沸かせた

今大会は例年以上に好投手が多く、2日目に履正社(大阪)の寺島成輝(3年)、3日目には横浜(神奈川)の藤平尚真(3年)という今大会の左右ナンバーワン投手が相次いで登場し、初戦から本領を発揮した。そして6日目の12日、作新学院(栃木)の今井達也(3年)が甲子園デビュー。自己記録を2キロ上回る151キロの快速球でスタンドを沸かせ、尽誠学園(香川)から13奪三振。今大会150キロ超は初めてで、完封一番乗りのおまけまでついた。

==今大会初の150キロ超==

相手の尽誠は、香川決勝でセンバツ準優勝の高松商を破って出場した強豪で、主戦左腕の渡邊悠(3年)は粘り強い投球を見せる。先攻の作新は初回に速攻を仕掛け、無死1塁から強攻策。積極的にファーストストライクを狙い、4番・入江大生(3年)のタイムリーなどであっという間に2点を挙げた。今井の最初のピンチは2回。先頭の出塁を許し、1死1、3塁とされると、早くもエンジン全開になった。7番・渡邊、8番・松原圭亮(3年)を150キロ超の速球で連続三振に仕留めると、スタンドの4万4千人がどよめく。試合後、「スピードにも少しこだわりがあったので」と明かすように、甲子園のスコアボードに『151』の表示が出たのを確認すると表情が緩んだ。

9回2死、美技で長打を防いだ小林中堅手に手を上げて称える作新・今井
9回2死、美技で長打を防いだ小林中堅手に手を上げて称える作新・今井

試合はその後、作新が好機をモノにできず、今井も毎回のように走者を背負うタフな展開。それでも7回に入江が本塁打を放って3-0と突き放すと、今井も、ギアチェンジする。最後は渡邊からこの日13個目の三振を奪って、甲子園デビューを今大会初完封で飾った。「スタンドもいっぱいで、実力以上のものが出ました。まっすぐで空振りが取れるようにと思っていましたから、ピンチではまっすぐで勝負しました」と晴れやかな表情で話すが、好投手揃いの今大会では、まだまだ隠れた存在だったとも言える。

==昨夏は甲子園メンバー漏れ==

作新は6年連続だが、今井にとって甲子園はこれが初めてになる。昨夏から速球に定評はあったが、トータルでの力はこの日バットで今井を援護した入江の方が上だった。したがって、昨夏の栃木大会では投げたものの、甲子園メンバーからは漏れた。

作新・小針監督は、「関東勢も好調だし、波に乗っていきたい」と上位進出を見据える
作新・小針監督は、「関東勢も好調だし、波に乗っていきたい」と上位進出を見据える

このあたりについて、小針崇宏監督(33)は、「夏の甲子園で投げぬく体力、タマの質が物足りなかった」と説明する。ただ、この1年間の成長点として、「精神面での逞しくなった。自覚が芽生え、厳しい練習にも耐えられるようになった」と付け加えたことからも、練習に取り組む姿勢が変化したことは間違いない。本人は、「とにかく走りこみました。あと体幹を鍛えて、タマが速くなりました」と振り返るように、冬場の地道な努力が実を結んだようだ。また技術的には、「コントロールが良くなった。ボール先行で、ストライクをとりにいってやられる」(小針監督)パターンが解消された。尽誠・松井義輝監督(53)が、「今井君があそこまで良いとは思わなかった」と言うのも無理はない。150キロ超の速球に加え、縦に鋭く落ちるスライダー、カットボール、チェンジアップも操って、的を絞らせなかった。これだけの投手が、毎年甲子園に出ているチームで、去年までチャンスを与えられていなかったのだから、今井がノーマークに近かったのもうなづける。

==甲子園で上昇カーブ==

「まだまだ実力もないので、挑戦者のつもりでやりました。全国レベルのピッチャーと投げ合いたい」と意気込む今井。それだけ、今大会で名が挙がる投手を意識しているのは間違いない。180センチ、72キロでマスクも良く、スターとしての素質も十分だ。2戦目以降で、150キロ超を記録する投手も出現する可能性はあるが、甲子園の大舞台に合わせて上昇カーブを描き続ける今井から目が離せない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事