ごみ屋敷の解決につながるために知っておきたい10個の理由(2)

次に、理由と解決方法について書いていきます。

4.10個の分類の説明

1) 大切な物やこだわっている物が大量にある人

何か大きなことをきっかけに、どうしてもそれらを集めなければならない、または、捨ててはいけない、と思わざるを得なくなる人たちがいます。本人たちは、それがバカバカしいと分かっていても、そう考えたくないと強く願っても、集めざるを得ない気持ちになります。集めなければ不安が極度に募り、自分の感情を制御できないと感じています。それが、他人から見ると、ごみにしか見えない物の場合、家の中は、ごみばかりがたまることになります。本人にとっては、ごみではないので、捨てられないということになります。

2) 衝動的にたくさん買ってしまう人

強い不安が原因であったり、衝動性を抱える精神的な障がいなどを持っている人のうち、その抱えた困難の結果として、たくさんの物を買ってしまうことがあります。捨てる力が落ちていなければ、気持ちの状態がよいときは、たまった物を処分することでバランスが保たれますが、何らかの理由で捨てる力が落ちていたとしたら物がたまっていきます。たとえば、包装紙等のごみと、価値のあるたくさんの物が散乱している状態になります。

3) 何でもかんでも集めてしまう人

何でもかんでも(他者から見たら)区別なく集めてしまう人がいます。18歳くらいから発病する人がいると言われているピック病を伴う認知症を発症したケースが、この場合の多くを占めるようです。物を盗んだり(病状としての結果)、ごみの収集場所からたくさんの物を持ち帰ったり、木の小枝ばかりを集めたりといろいろなタイプの表現があります。ピック病の診断をできる医師は少なく、記憶力の低下が目立たない段階では、病気だと気付かれない場合もあります。このため、場合によっては警察に何度も捕まっている人もいます。

4) 買ったことを忘れてしまって同じものをたくさん買う人

物忘れが原因です。本人にしてみたら、お腹がすいた⇒パンを買おう⇒買った⇒玄関に置いた⇒買ったことを忘れた⇒お腹がすいた⇒パンを買おう、というようなことが起こっています。物と自分の位置関係がわからなくなったり、物を置いた場所に注意が向かなくなったりして、買ったものがどんどんたまったりすることもあります。買う量の調整がつかなくなることもあります。たまるものは日常的に買う物が多いので、食べ物が多くなってしまい、腐っていくという衛生上の問題がでてきます。

5) 大事な物とごみとの区別がつかない人

認知機能の障がいがある人の中で、大事な物とごみの区別がつかなくなって、ごみを捨てられなくなっていく人がいます。1)で書いた「周囲にとってはごみだが本人にとって大事なもの」とは別の理由です。認知症が進むと、たとえばスプーンをスプーンと認識できなくなってごはんが食べられなくなったり、トイレがトイレとわからなくなって便器に座れなくなったりすることがあります。自分の物だという認識がある場合は、周りの人がごみだと思って勝手に持っていくと、泥棒をされたと思って怒ります。

6) ごみをためちゃいけないことがわからない人

何らかの障がいがあって、ごみを捨てるという概念がない人や、ごみをためていちゃいけないことがわからない人がいます。

7) 捨てる、片付ける体力がない人

肉体的にも精神的にも疲れてしまったなどの理由で、片付けずにそのままにして、結果的にどんどんたまっていくタイプの人です。気持ちが落ち込んでいて身動きがとれない人、ひどく疲労のある人、筋力の低下した人(低下する病気を持つ人も)がいます。筋力が落ちたことが原因で働けなくなって、ホームレス状態になった人もいました。途中で病院もかかっていたのですが診断に至っておらず(医師でさえも見逃します)、本人も「歩けない」と困っていました。筋力が落ちるとすぐに疲れるので、意欲も落ち、ホームレス状態から脱することができな状態になっていました。生きるために必要なものはゆっくりながら増えていきますが、それ以上に捨てる速度が極端に落ちています。

8) 捨てること片付けることがごみ屋敷になるほど極端に苦手な人

注意がとても散漫であったり、完璧にできないとつらくなってしまうという人がいます。物が少量のときは片付けができますが、量が多くなると片付けができなくなります。

9) お金がない人

お金は物を捨てるときに関わります。何らかの理由があってごみがたまってしまうとしても、お金があれば、引き取ってもらうことができます。

10) 捨て方がわからない人

捨て方がわからないくらい、力がもともとないか、力が落ちた人がいます。力が落ちたというのは認知機能が低下したということです。知的障がいを持つ等の理由でもともとの力がない場合で、その手伝いをしていた両親がいなくなったときに、周囲の支援とつながっていなかった場合に起こり得ます。実際にホームレス状態になっていた人もいました。親なきあとの障がいを持つ人の支援不足の課題は、とても深刻で、近所付き合いが希薄ななったために、家族ばかりに責任が押し付けられてしまう社会のあり方そのものの結果であるという点で、コミュニティーをどう考えていくかへの答えを見つけることが求められています。

5. ごみ屋敷で困ること3つ(火事、不衛生、倒壊)のときに強制介入する

ごみ屋敷問題は、ここまでの説明で、対人援助をどうしていくのかという問題だとお伝えできたと思います。

地域のコミュニティーとしっかりと繋がっている場合は、周りの人が気づいて、ごみ屋敷にならないようにと手伝っているところもあります。一方で、周囲の人と繋がらなくなった場合は、行政の力や、専門的な介入が必要になってきます。

とはいえ、ごみ屋敷になる理由が複雑で、そうそう抜本的な解決できない中で、放置もできない、といったときは、いったいどうしたらいいでしょうか。命令や罰金も解決につながりません。どうしても強制的に捨てなければならない、ということがあると思いますが、多くの場合は、数ヶ月もすれば元の状態に戻ります。大量の人手と時間、お金がかかって大変だっただけでなく、無駄になってしまい徒労感だけが残ります。

そういった場合には、問題が、大問題にならないように予防することが重要になってきます。大問題とは、火事、不衛生、倒壊です。

そうした緊急時は、ごみを、全部を片付けるという目標をいったん下げて、3つの大問題が起こらないための支援に集中することへシフトします。そこだけに、強制的に介入する焦点を絞ると、解決にかける力も少なくなります。

もしも法律を作るとしたらですが、本人と周囲の生命の危険があることに関してのみ、強制的に支援をすることが法的に守られる、というのは賛否はあるかもしれませんがありなのかもしれません。

6、では、どう解決していくか

それぞれの理由がわかれば、どう解決支援をしていくかが見えてきます。不安が強ければ不安に対して一緒に考えていき、片付けが苦手ならば片付けの手伝いをすることを支援計画に組み込んでいきます。いくつかの理由が重なっている人もいます。認知症が原因であれば、買い物の支援や部屋の片付けの手伝いができるかもしれません。少量のお薬の内服で、ごみ屋敷にならなくなることもあります。介入が難しい場合もありますが、そこは、受け手のコミュニケーション力を高めていくのにつきます。「ごみを捨てさせて」と言うと捨てさせてもらえなかったけど、本人にとって大事なものなんだなという意識を持って「これください」と言ったら、快くくれたというエピソードも散見します。原因が分からなければ、精神科医等に訪問を頼むのもひとつの解決につながるかもしれません。

大きく理由を分ければ10個でしたが、現場ではもっともっと細かく分かれていきます。個人個人に沿った支援をどう考えていけるかが鍵になってきます。

すぐには解決できないことも多いので、とにかく火事、不衛生、倒壊にだけはならないよう支援を集中することも重要です。

7、おわりに

ごみ屋敷問題は、他人事ではないこともお伝えできたと思います。自分やその家族、友人、大切な人が、ごみ屋敷を生み出す人になるかもしれません。そんなときに、命令や罰則を受けたり、地域に誤解を受けたままで冷たくあたられたりするのであれば、とても生きた心地がしなくなると思います。そして、現に、そうして苦しい思いをしている本人や、そのご家族がとてもたくさんいます。罰則ではなく、支援を、孤立ではなくコミュニケーションを、とっていけるような社会になることが、結果としてのごみ屋敷問題を解決すると思っています。

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