なぜごみ屋敷対策法案は問題を悪化させるのか?

5月16日(金)

日本維新の会など野党4党は、自宅に大量のごみをため込む、いわゆる「ごみ屋敷」への対策として、自治体がごみの撤去を住人に命令できるようにし、従わない場合は罰金を科すなどとした法案を共同で衆議院に提出しました。

出典:NHKNESWEB

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140516/k10014501451000.html

確かにごみ屋敷の課題は、周辺に住む人々にとっても困りごとです。しかし、この法案は、本人にとっても周囲の人々にとっても課題の解決にならないばかりか、問題をより複雑化する可能性があるとしたらどうでしょうか。この記事では、その理由の説明と、解決方法の提案をしたいと思います。

【法案が問題を悪化させる理由】-解決したいことが目先のことになっている―

ものごとの解決をするためには、正しい課題設定が必要です。正しい課題設定ができれば、解決がどんなに難しいことであったとしても、正しい解決法が見つかる可能性があります。では、課題定義そのものが間違っていたとしたらどうでしょうか。どんなに頑張って課題解決をしても、本当の課題は解決しません。

ごみ屋敷の本当の問題点とは何でしょうか。それは、たまっている現在のごみだけではありません。「ごみをためてしまうこと」です。

たまっている現在のごみを一生懸命に周囲の人が片付けたのに、数か月かしたらあっという間にごみ屋敷に逆戻りになったというケースは後をたちません。どれだけ正しく素早く効果的にごみを片付けてもです。まして、命令したり罰則を設けたりしても、課題設定が間違っているので再び同じことが繰り返されます。

重要なことは、なぜごみをためてしまうのかを、明らかにしていくことです。

1、 なぜごみ屋敷になるのか

ごみ屋敷にしてしまう人は、ほとんどが一人暮らしの人たちです。ごみがたまっていく理由は様々ですが、簡単に言ってしまえば、

「ごみを捨てる速さよりもごみをためる速さが上回ったから」

です。このバランスがくずれる理由が様々ということです。こう考えると、一人暮らしである点で、ご高齢者などの捨てる力が落ちてきた人は必然的にごみがたまる傾向があることがわかります。また、ごみを捨てる速さが遅い場合と、ごみを集める速さが速い場合とで解決方法が違うこともわかります。

2、 どういった人がごみ屋敷を生み出しているのかと、その解決方法

1) 力が落ちた人

ご高齢者や、仕事の過労、気持ちの落ち込み、がんばることができなくなった人などが考えられます。また、知的障がいや統合失調症などの障がいを持っていて両親がご高齢になったか亡くなったなどで、片付けを手伝ってくれた人がいなくなった場合が考えられます。

≪解決≫このような場合は、ごみ捨てを手伝うことと散らかさない工夫を手伝うことが重要です。

2) 大事なものへのこだわりが強い人

強迫性障がいや自閉症等を持つ人の場合で、そうではない人にはすぐには理解できない、本人にとってとても重要な物であることがあります。人によっては大事な数字が書いてあったり、他人にとってはごみなのだけれども、本人にとっては芸術的な好みがあること、捨てることが不安でしかたがない場合などです。本人はどうしても捨てたくないのでどんどん物が増えていくことになります。知っておきたいことは、多くの場合、ごみと、本人にとって大事な物は、本人は区別がついているということです。ただ、あまりにも物が増えてしまったので、ごみと大事なものが混在し、どこから手をつけたらいいか分からなくなっている場合が多いです。

≪解決≫本人にとって何が大事なものなのかを、支援する人がよく理解できるまで本人に根気よく何度も話を聴きます。本人が、この支援者が完全に自分を理解してくれた(大事なものを捨てない人)と実感できると安心することができて、片づけを手伝わせてくれるようになります。

3) 大事なものとそうではない物の区別が難しくなった人

認知症のタイプによっては、同じものをひたすら集めてくるようになる人がいます。全部が自分にとって大事なものなので、他者に勝手に捨てられると混乱します。また認知機能の低下によって、大事なものとそうではないものの区別が難しくなることもあります。捨てるという動作や計画ができなくなったり、捨てることの意味が分からなくなる人もいます。

≪解決≫認知症診療ができる医師が診察して治療を開始したり、認知症のケアが上手な専門家が本人の世界を大事にしながら手伝ったりすると解決策が見つかります。

3、 なぜこの法案が問題を複雑化させるのか

なぜごみ屋敷になるのかはそれぞれ理由が異なることをお伝えできたと思います。課題解決とは、ごみがたまらなくなることです。そのためにはごみをためる理由を知らなければなりません。それにも関わらず、捨てることだけを強制すれば、集めるタイプの人にとっては捨てることに酷く抵抗するでしょうし、すぐに集めてしまいます。また、気持ちが落ち込んでごみがたまってしまっている人をさらに追い詰めることになれば、その人の生きる力を奪ってしまう可能性もあります。ごみを捨てる力が落ちている場合への必要な支援は、罰を与えるのではなく一緒にごみを捨てることです。

4、 だれもがなりうる

ここまでの文章でお伝えしたかったことは、誰もがこの状態になりうるということですし、自分だけでなく、家族や大切な友人が同じようなことになりえます。そんなときに、「ごみ屋敷は悪いことだ」と決めつけてしまうとどうなるでしょうか。生きていく心地がしなくなるかもしれません。この法案は、住みやすい地域を目指すために生み出したいものだとは思いますが、生み出される結果は、住みにくい地域社会をつくることになるかもしれません。

まとめ

ごみ屋敷とひとくくりにすると課題がわからなくなります。ここに記載した以外の理由もあります。なぜごみ屋敷になったのかの個人個人の背景を理解することに努めると、ごみ屋敷問題の解決がはじまります。罰則で効果がある人は一部の人のみで、悪い結果になる影響のほうが大きいと考えらえます。