数字に疎い人は破産する! 人を惑わす数の感覚

数学的センス(写真:アフロ)

ニューヨーク(CNNMoney) 数学が苦手な人が住宅ローンの返済に行き詰まって物件を差し押さえられる確率は、数学が得意な人の5倍に上る――。米国などの研究チームが実施した調査でそんな実態が浮き彫りになった。この調査結果は米コロンビア大学ビジネススクールとアトランタ連邦準備銀行、スイス・チューリヒ大学の経済学者が24日に発表した。調査は金融危機直前の2006~07年にローンを組んだ数百人を対象に実施。「300ドルのソファを半額セールで買うといくらになるか」「200ドルを金利10%で預けると2年後の金額は」といった設問5問に答えてもらって計算能力を判定し、ローン返済状況との関係を調べた。

出典:数学が苦手な人はローン破綻の確率5倍に 米調査【CNN】

数学というよりは大きな「数」の感覚がやや麻痺している人は少なからずいるようです。日本の場合、上記の例のような「100円の半額はいくら?」とか「100円の1割引きではいくら?」というような計算で答えられない人は極めてまれでしょう。これが答えられない人は一人で買い物は控えたほうが良いかもしれません。しかし身近な計算でも「3,000万円を年利3%の固定金利で借りた場合、35年後にいくらになるか」という比較的大きな数の計算には不慣れで、その概算ですらイメージできない人も少なくないようです。3,000万円の3%だから90万円,90万円が35年続くので、3,150万円、よって約2倍の6,000万円ほどになると思うのでしょう。実は利子に利子がついて、35年間で8,400万円に膨れ上がるのです。驚くべきことは、たった3%の年利であるにもかかわらず35年ともなると、元金の3倍を支払わなければならないということです。複利計算という、この利息は金融機関にとって「お得意様」になるわけです。昔の「闇金」(不法金融)の代名詞であった「十一(といち)」とは、10日で1割の金利を取ることであり、10万円を借りると、10日後には11万円になりますが、1年後には324万円、3年間忘れていたとすると36億円支払わなければならないのです。十一がどれだけあくどいか理解できるでしょう。

日常生活での不便だけでなく、国家レベルで見ても数学力の低下は大きな問題です。国民の計算スキルと失業率・生産性・健康の間には相関関係があるという研究があり、国民の数学の能力の低下は国際的な競争力の低下を意味するという見解もあります。

出典:「数学ができなくなる」ことは何が問題なのか?【GIGAZINE】

広い意味で数学的センスが低下した場合、確かに国民全体が大きな不利益を被ることになるでしょう。国民が簡単に騙されることになるからです。たとえば、数字に基づいて説明するときが良くあります。しかし数字ほどウソをつき、人々を惑わすものはありません。数字を上げられると妙に納得する傾向もあるからです。正確に言えば、数字は正しくとも、その数字の意味が十分説明されず、結果としてウソになってしまうことがあるのです。例えば、ある調査でSE(システムエンジニア)の平均年収が590万円と出ています。この平均という言葉が曲者なのです。一般的には平均590万円と言えば、ほとんどの人が590万円前後の給与であるとイメージしてしまいます。しかし、実はほとんどの人が200万円前後で、一部の人が2000万円以上ならば、平均をとれば、590万円になることだってあり得るのです。平均がすべての特徴を表しているわけではないのです。この「平均神話」が幅を聞かせている一つの理由が、「ほとんど同じ」という発想です。年収に関しても、格差がなくほとんど同じという仮定の上で、平均というイメージがあるのです。平均だけでは何もわからず、逆に平均によって間違った理解をすることがあるのです。また、平均という言葉にも裏があります。通常は相加平均を単に平均と呼んでいるのですが、計算式が異なる相乗平均や調和平均もあり、一般化平均や加重平均もあります。いろいろな平均を求める方法があり、場合によっては平均という言葉だけで、都合のよい値を選んで公表することもできるのです。

決して詐欺ではありませんが、この数学的センスの欠落はギャンブル等、射幸心を煽ることにも使われます。たとえば「ガチャ」です。ガチャとは自動販売機で購入する小さなおもちゃだったりフィギュアだったりします。スマホ等のネットゲームで、特定のカードやアイテム等を集める場合もあります。大概の場合、複数の種類のフィギュアやカードがあり、それらをすべて集めることを試みるのですが、自由に選択して購入することはできません。では、最小のコストでそのすべての種類のフィギュアやカード等を集めるためにはどのようにすればよいでしょうか。たとえば20種類があるとして、すべての種類が均等に出現するとします。結局いくつ購入すれば、すべての種類が揃うでしょうか。楽観的に考えると、50個も買えば揃うような気もしますが、悲観的には100個以上買わなければ揃わないような気もします。では確実に揃えようとすると何個購入しなければならないでしょうか。これはほぼ確実に揃えるためには150個以上買わなければならないのです。これは確率論の問題として解くことが可能です。50個ぐらい買えば揃うだろうという楽観的な数学的センスのなさに付け込んでいると言っても過言ではありません。

【お詫び】  公開当初、「3,000万円を年利3%の固定金利で云々」の内容において、住宅ローンを例に取り「総額8,800万円支払うことになる」と説明、記述させて頂きましたが、読者の岩佐様から「毎月返済額を考慮すれば、8,800万円にはならないだろう」とのご指摘を、「数学センスのない、このような間違いは恥ずかしく、大学教授の質を問う」との叱責とともに頂きました。確かに毎月相当額の返済を考慮すれば8,800万円(これも誤記で8,400万円)にはなりません。複利計算(強いて言えば計算爆発)の例えを紹介する部分でしたが、間違えた内容となっておりました。岩佐様にはご指摘を感謝するとともに、読者の皆様には深くお詫び申し上げます。