八重山で台風18号に遭遇した

2019年9月30日正午、八重山地方に接近する台風18号(出典:ウェザーマップ)

遅い夏休みに訪れた沖縄県の八重山地方で、台風18号の直撃を受けた体験談。

9月29日出発だったので、当日は大丈夫だったが、翌30日には八重山地方に台風18号の接近が予想されていたので、当初予定していた西表島は諦め、自宅を発つ前に宿泊先とレンタカー、船便の予約をキャンセルした。最接近時の中心気圧が965hPa、最大瞬間風速は55m/sの予想だったが、比較的速度が速かったので、船が欠航したとしても、西表島にいる間に運航する可能性もあった。しかし結果的にはキャンセルして正解。船便の問題ではなく、後日、宿泊予定だった民宿では「自分の命を守るのに精一杯」だったほどの状態だったそうだ。

予定を変更して、しばらく石垣島に留まることになった。到着した日はまだ台風の影響もほとんどなく、たまににわか雨がある程度だったが、一夜明けた30日は午後から暴風域に入る予想。テレビでは、翌日以降の本土の大雨の危険や、沖縄本島への影響などの情報量が多く、今まさに台風が襲来しようとしている八重山の情報は意外と少ない。自分で気象庁のホームページや、気象関連サイトで情報収集したほか、頼りになったのは、石垣島地方気象台と連携した地元のコミュニティFM放送だ。

台風の位置情報や、風速や雨量、潮位の予想はもちろん、台風が最接近する30日になると、域内各地の雨や風の実況値、石垣市役所や竹富町役場の開庁閉庁の状況、離島間の船舶の運航状況や島内のバスの運行予定、ショッピングセンターの営業状況、避難所の開設情報など、さまざまな最新情報が伝えられ、いよいよ台風が近づいてきている緊迫感が伝わってくる。以下、写真は全て筆者撮影のもの。

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(市内を走る路線バスも時刻を定めて運休。こうした生活情報が、地元のコミュニティFM放送から刻々伝えられる。)

午前中はまだ風雨も弱く、島を訪れている観光客相手に開けている店も多かったが、聞けば正午には閉店するとのこと。途中出会ったバスガイドさんによると、川平湾で珍しいことになっていると言う。高解像度降水ナウキャストを見ながら、川平湾に向かった。川平湾は八重山屈指の観光地だ。いつもは大勢の観光客と、グラスボートで賑わっているが、この日は台風の接近に備えて、グラスボートはすでに安全な場所に撤収済み。風が弱く、波も穏やかな午前中は営業も可能かと思ったが、対応が早い。

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(左はいつもの川平湾。右は今回の川平湾。グラスボートが1隻もない川平湾は初めて見た。)

グラスボートだけでなく、近くの商店も売店も朝から休業。

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(川平湾近くの商店。住民は前日に買い物を済ませたと思われる。)

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(閉店した商店の多くには、防風と、飛散物から建物を守るためのネットがかけられている。ちなみに、学校のグラウンド周りのネットは、鉄柱倒壊を防ぐために下げられていた。)

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(波照間島で見かけた防風シャッター。シャッターというよりも壁に近い。)

昼近くなって、徐々に風雨が強まってきたので市街地に戻ると、多くの商店が閉まり、一部のファストフード店が営業している程度(当然行列)。夕食は調達済みだったのでホテルに戻って籠ることに。しばらくすると、ホテルからカップ麺の配給があった。あとは情報収集以外することなし。深夜にはいよいよ風雨が強まり、首都圏を襲った台風15号を想起させるほどだったが、ホテルの窓は二重窓、二重鍵、金網入りガラスで心配なし。

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心配になったのは、午後9時を過ぎる頃からインターネットがつながらなくなったこと。台風15号で停電は経験しているが、今回は停電はしていないのに、通信ができない。何のトラブルなのかわからないが、とにかくネット経由の情報収集はできない。地元のFMラジオ放送も、受信機ではなくネット放送で聴いていたので、それもダウン。テレビは映るが、あいにく翌日に迫った消費増税のニュースが多く、台風情報はあまり詳しくない。不安もあったが、全く台風情報がないわけでもないし、安全な場所にもいるので、翌朝まで寝た。

暴風雨から一夜明けて、朝のニュースで大規模な通信障害が起きていることを知った。台風は東シナ海を北上中で、すでに暴風域からは抜けているが、外はまだ吹き返しの風が強い。台風15号の際の停電を思い出し、これは復旧までかなり時間がかかると覚悟したが、午前9時には復旧、風も収まってきたので、様子を見に出かけてみた。

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市街地でも折れた枝が電線に引っかかり、植木鉢は倒れていたが、少し郊外に行くと、根こそぎ倒れている樹木やサトウキビ、幹線道路に畑から流出した土砂が、風雨の強さを物語っている。翌日足を伸ばした波照間島では標識も折れ曲がっていた。

商店はほぼ定刻に開店していた所が多かったが、通信障害のせいでキャッシュレス決済ができない店が多く、消費増税初日と重なって、レジが混乱していた店舗もあった。幸い、翌日までには次第に波も収まって、欠航していた離島便も全て運航、波照間島まで渡ることもできた。

地元の人に聞いた話。

「今年は石垣島の東を北上する台風が多く、油断した。」

「台風が石垣島の東を通るか西を通るかで大違い。中心気圧よりもコースの影響が大きい。」

「久しぶりに本格的な台風が来た。」

「前日が運動会だったので、台風の準備が遅くなって大変だった。」

「今回は速度が速くて助かった。ひどいときには1週間かかったこともあった。ソーメンチャンプルーばかり食べていた。」

「以前、台風が襲来した時に、寝室のドアを開けたら窓ガラスが割れたことがある。ドアの開け閉めで室内に圧力差が生じたのかしら。」

「本土の人に台風の怖さを伝えても、なかなか伝わらない。」

波照間島の漁師さん

「台風を待っていた。台風は海を洗う。水温が下がればサンゴも復活して魚も増える。」

「あまり強くても困るが、台風が来ないのも困る。」

「通過した後に尻尾ができる台風、そういうのが来ると、潮を被った植物を雨で流してくれる。」

猫と一緒にいた高齢の方に聞いてみた。

「台風はいかがでしたか?」

「最近はネズミは取らないね。」