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(株式会社ウェザーマップ提供画像) 

天気予報に「冬将軍」がたびたび登場する時期になった。「冬将軍」は、ご存知のとおり、1812年にナポレオンの大軍を殲滅に追い込んだヨーロッパロシアの厳しい冬の寒さのことだ。約60万の大軍でロシアに侵攻したナポレオン軍は、退却を繰り返すロシア軍に誘い込まれるようにモスクワに進軍した。しかし、ロシア側は町を自ら焼き払う焦土作戦によってナポレオン軍の補給を絶ち、やがて訪れた厳しい寒さによって退却を余儀なくされたナポレオン軍は、疲労と飢え、病気とロシア軍の追撃によって、大多数が死亡し、ロシア領から帰還できたのは、当初の軍勢の1%を下回る、わずか5千名だったという。

 その後、イギリスの新聞記者が、ナポレオンが負けたのは、ロシア軍ではなくヨーロッパロシアの寒さであると、おそらく揶揄を込めて記事にしたのが「冬将軍」の由来だ。「冬将軍」の犠牲者はナポレオン軍にとどまらない。18世紀の大北方戦争におけるスウェーデン・バルト帝国軍、第二次世界大戦のドイツ軍もしかり。また、ロシア側の犠牲も甚大な上、戦争と焦土作戦によって犠牲になった非戦闘員の国民の数は、兵士の数を上回っていることだろう。そんな背景を考えると、「爆弾低気圧」や「ゲリラ雷雨」が使用を控えるべきと言われている一方で、「冬将軍」が普通に使われていることに違和感を感じてしまう。

 そんな「冬将軍」も無敵ではない。13世紀のモンゴル帝国のヨーロッパ侵攻は冬に行われたが、「冬将軍」はモンゴル帝国を撃退できなかった。それもそのはず、モンゴルの寒さはヨーロッパロシアどころではない。モスクワの1月の平均気温は-6.5℃だが、シベリアの寒気に覆われるウランバートルの1月の平均気温は-21.7℃。そして、冬に日本列島に向かって吹き出してくる寒気は、そのシベリアの寒気だから、語源になった「冬将軍」以上の強いものだ。

気象庁「エルニーニョ監視速報」より
気象庁「エルニーニョ監視速報」より

 おまけに、この冬はラニーニャ傾向、目先はブロッキング高気圧の影響で例年よりも寒気が南下しやすく(負の北極振動)、大寒波に見舞われた2013年や2016年と同じように、北極海の海氷面積も少ない。この冬は、やはり寒い冬になると思って覚悟しておいた方がよさそうだ。

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 寒気が強く、冬型の気圧配置が続けば、太平洋側の地方は晴れる日が多くなるはずだが、その寒気が一時的に弱まったタイミングで南岸低気圧が接近すれば、太平洋側でも大雪になることがある。今起きている黒潮の大蛇行が関東地方の雪に関係しているという説もある。単純に「冬将軍」で片付けられるような冬では終わりそうにない予感がする。