「気象業務法及び国土交通省設置法の一部を改正する法律」が5月31日に公布され、この夏にも特別警報が実施されることになり、先日、気象庁で関係者向けの講習会が行われた。講習会では、特別警報という制度の創設に至った経緯や発表の基準などについて詳しい説明や活発な議論が行われ、非常に有意義な内容ではあったものの、何か腑に落ちない、肝心な所がもやもやした印象が残らざるを得なかった。

というのも、説明の内容もその後の議論も、特別警報を発表する立場と伝える立場でのものに終始し、最終的に特別警報を受け取る住民ひとりひとりが取るべき対応についての言及があまり明確ではなかったように思えたからだ。そこで、後刻気象庁にメールで質問を投げかけてみた。

本来、こうしたものは要約して載せるべきかもしれないが、私の主観で文章を改めるのも気が引けたので、原文のまま掲載させていただく。また、私の質問自体、公表は考えていなかったので、やや皮肉っぽく幼稚に感じられるかもしれないが、ご容赦いただきたい。 

(質問1)

・特別警報と警報は何が違うのでしょうか?

発表基準の違いはよくわかりました。ただ、情報の受け手はどうすればよいのでしょう?

例えば、テレビを見ていて、大雨特別警報のテロップが流れたら、その人は何をすればよいのですか?引き続きテレビを見続けるのか、警察や消防の指示がなくても、すぐに避難するのか…。警察や消防の指示に従って…でしたら警報と何ら変わらないと思います。あるいは、特別警報は気象庁からの避難指示だと思ってもらえばよいのでしょうか?

(回答)

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警報が発表されたときは、重大な災害が発生する可能性がありますので、視聴者(住民)は、避難の準備をする、危険な場所に近づかないなど、災害に備えた対応をまず取っていただきたいと思います。そして、周囲の状況や市町村から発表される避難勧告等の情報に留意し、外出することが危険な状態にならないうちに早めの自主避難や市町村の勧告・指示に従った避難を行っていただきたいと思います。 

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一方で、「特別警報」は、予想される現象の程度がその地域で数十年に一度程度しか発生しないくらい極端であり、「重大な災害」が起こるおそれが著しく大きいときに行うものです。このため実際に重大な災害がほぼ確実に起こると見込まれます。

特別警報が発表されたときは、視聴者(住民)は、周囲の状況や市町村から発表される避難勧告等の情報に留意し、ただちに避難所へ避難するか、すでに外出することが危険な状態のときは、無理をせず家の中で比較的安全な場所にとどまるなど、身を守るために最善を尽くして頂きたいと思います。

具体的な対応はそれぞれの人の置かれた状況によって異なります。例えば、川の近くや崖の近くでは直ちに避難などの安全を確保する行動が必要と考えられます。市町村長の避難勧告等に従うのはもちろんですが、自分の住んでいるところの状況などから自ら判断して行動することも大切です。このため、普段から自分の住んでいるところがどんなところか、特別警報が発表された場合にはどんな行動をとらなければならないかを理解しておくことが重要です。これらについては、通常の警報や土砂災害警戒情報でも同様にいえます。

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(質問2)

個人の判断で、というお話もありましたが、かつて経験のないような未曾有の事態に、個々人の判断で行動させてよいものでしょうか?

何が命を守る行為なのか、情報や知識がない人も非常に多いと思います。個人の判断で、というのは正反対のような気がしますが。

(回答)

質問1でも回答させていただきましたが、警報さらには特別警報が発表される際には、市町村から発表される避難勧告等の情報に留意していただき、行動することになります。そして、かつて経験のないような未曾有の事態でも、そうでなくても、災害から我が身を守るのは最終的には個々人の判断と行動に依るところが大きいと言えます。このため、国や自治体は気象警報等の気象情報の種類と意味、ハザードマップとその解釈、災害時の対応行動例など、住民向けに平時も含めて様々な情報提供と周知啓発に努めています。

特別警報の周知啓発にあたっては、いざというときに的確な判断と行動に結びつくよう、注意報、警報と段階を追って発表される気象情報の活用や、ハザードマップを使った身の回りの状況の把握など、住民自らの視点で問題意識を持っていただけるよう、当庁は自治体などと連携して取り組みます。

(質問3)

また、市町村、消防や警察にしても、すでに警報の時点で、パトロールや避難指示、応急処置など、できることは手を尽くしているはずです。特別警報になったからといって、それ以上できることがあるのでしょうか?

うがった見方ですが、特別警報になったら、消防も警察も、自分の身を守るのに精一杯になってしまいます。あとは自己責任で何とかしてください、という意味であれば、その方がまだわかります。

(回答)

特別警報発表までに、すでに最大限の体制がとられていることが理想です。その場合でも、避難勧告・指示の徹底等の中で特別警報が発表されている旨を住民等へ伝え、災害への危機感の共有を図っていただきたいと思います。

また、特別警報は、ある程度広域の現象に対して発表を考えております。広域の応援体制や救助活動のきっかけにもなり得ると考えています。

以上がメールでのやりとりだ。特に注目したいのが、「災害から我が身を守るのは最終的には個々人の判断と行動に依るところが大きい」という点と、「いざというときに的確な判断と行動に結びつくよう、注意報、警報と段階を追って発表される気象情報の活用や、ハザードマップを使った身の回りの状況の把握など、住民自らの視点で問題意識を持って」いる必要があるということ。

つまり特別警報は、防災に関する個々の住民の十分な知見、そして気象庁や自治体など関係機関の連携による知識や情報の普及啓蒙とセットになって、初めて効果が現れてくると言えるだろう。特別警報を発表して、危機感を伝えられるようにはなったものの、それを活かすためにこれからやらなければならない作業は膨大だ。しかし実施までの時間は限られている。

深刻な災害が発生した後、特別警報を発表していたのに、と言い訳に使われることだけは避けなければならない。