「生理の貧困」をリアルに伝えた「クロ現」

生理用のナプキン(提供:Kei/イメージマート)

最近、よく聞く「生理の貧困」という言葉

 男性である私には実感がわかず、ぴんと来ない言葉だった。経済的な困窮で生理用品が買えない女性が増えているのだという。特にバイト収入を当てにしている学生らは苦労しているらしい…。

 それが4月6日(火)夜に放送されたNHK総合「クローズアップ現在+」を見て、すとんと腑に落ちた。

「なるほど、こういうことだったのか…」

番組では生理用品を買うことができずに自ら苦闘する若い女性の姿が映し出されていた。映像メディアでしか伝えることが難しい「リアルさ」が随所にあったので紹介したい。

冒頭から若い女性がトイレットペーパーで何かを作成する様子が映し出される。

トイレットペーパーで生理用品の「代用品」を作る場面 

 代用品は2つあった。

・トイレットペーパーを折り畳んでラップを同じ幅に挟み込んで作った「ナプキン」

・トイレットペーパーを手でぐるぐると固く巻いて作った「タンポン」

 手製の「タンポン」などを作っている専門学校生は次のように語る。

タンポン代わりのものを作る時は(トイレットペーパーを)こうやってぐるぐる巻いて、これ(巻いてできたもの)を4・5個、突っ込む…。

 この女性は19歳の専門学校生。父親と二人暮らしだが、幼い頃から折り合いが悪く、家賃と光熱費を自分のバイト代から支出してきた。ところが新型コロナウイルスの感染拡大でバイト収入が激減。雇ってもらえない職場が増えてしまったという。

 節約のためにスマホの通信契約を解約。友人やバイト先とのやりとりは無料の公衆無線LANでしのいでいるという。学費のために借りている奨学金を取り崩し、ギリギリの生活を続けている。これ以上何を節約できるのかを考えた末に生理用品を断念することにしたのだと話す。

一番優先するものは学費。その次が食費。その下に必要最低限のものとして(生理用品が)ある。いまの自分にとって、もったいないことかなって…。

 父親に生理用品を買えないほど困っていることを話しても、とりあってもらえなかったという。

5人に1人が生理用品を買えない!

 新型コロナが長引くなかでこれまで社会に見過ごされてきた「生理の貧困」の実態が明らかになっている。

 先月、生理についてネットで発信している団体「#みんなの生理」が調べた学生へのインターネット調査でショッキング結果が出た。

「経済的な理由で生理用品を買うのに苦労した」と答えた人は20%

「節約のため生理用品の交換頻度を減らした」と答えた人は37%

 学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労しているという実態が明らかになった。

 この調査を行った「#みんなの生理」は共同代表の谷口歩実さん(23)が大学生だった2年前から生理についての啓発活動を続けている団体だ。今回の調査をきっかけに他のテレビ局のニュース番組などでも「生理の貧困」という言葉が注目されるようになり、海外の事例も紹介されるようになってきた。筆者が確認しただけでも「生理の貧困」についてのニュースは以下の番組で放送されている。

3月4日=NHK「おはよう日本」、日本テレビ「news zero」

3月8日=TBS「NEWS23」

3月15日=日本テレビ「news zero」

3月31日=NHK「おはよう日本」

4月5日=NHK「おはよう日本」 

 番組や局によってやや偏りはあるものの、どの番組も「生理の貧困」はいま多くの人々が知っておきべき言葉だとして紹介されている。 

 それぞれのニュース番組で、団体などによる実態調査の結果やコロナ禍で女性への食料配布の際の配布物の中に生理用品を入れるようになったケースなどを紹介。こうした取り組みを歓迎する若い女性たちの声も放送されて彼女たちにとって切実な問題だと報道されている。

海外では課税撤廃や無償配布への流れ

 加えて、多くの番組が「生理の貧困」について取り組む海外の事例も紹介している。

 今回のNHK「クローズアップ現在+」はフランスやニュージーランドで今年に入って学校での生理用品の無償配布が決定したと伝え、アメリカでは生理用品が生活必需品として非課税になっていない州が多かったが5年間に13州で生理用品への課税が撤廃されたと伝える。

 また日本テレビの「news zero」はイギリスのスコットランドで無償配布になっていると伝えた。

 このように「生理の貧困」はすでに各テレビ局のニュース番組が報道するテーマになってはいたが、筆者がなかでも4月6日のNHK「クロ現」を評価できると考えたのは、これまでにないほど「当事者の目線」で伝えている点だ。

 番組冒頭で登場した専門学校に通う女性は、生理中には勉強も日々の暮らしままならなくなるという。それを説明する場面もとてもリアルだった。彼女がトイレットペーパーを畳んで手製の「生理用品」を作っている映像にナレーションで解説が入る。

生々しく、痛々しい告白

(ナレーション)

「経血が漏れやすく、1時間に何度も交換しなくてはなりません」

彼女がスマホの生理周期管理アプリのメモに「日記」として書いた心の内はとても切実だった。

うわぁ、久しぶりに横モレ…

サプキン使ったら漏れないんだろうか。

3日目は量増えるし痛みもピークだし最悪。

寒さが辛さを助長している気もする。ストック作らなきゃ今回間に合わないだろうなぁ。

買えないとか周りに言ったら節約できてないヤツって思わそうで言えない。

誰か生理用品くれ、、、

吸わないよね、トイレットペーパーじゃ笑

生理用品欲しい。

 女性は交換する時にはみじめな気持ちになるという。

 その気持ちを話すときの女性の言葉は表現が男性として聞くと生々しく感じられるが、一方で状況はとても痛々しいことが伝わってくる。

替えるときにタンポンだったら、ひもがついている。

(ひもが)ついてないもの(トイレットペーパー)を中に入れるということは指を突っ込まなきゃいけない。

出したあと手がやっぱり汚れる。

血がついたまま人に見られるようなところ(公衆トイレ)で(手を)洗わなきゃいけない。

 作業療法士を目指しているこの女性。今年、病院での実習が行われる予定だが、そのタイミングで生理にならないように祈っている日々だという。

 生理用品を買えるか買えないかでここまで人をみじめな気持ちにさせてしまうのだとしたら、これは一種の人権問題ともいえるテーマだと番組を見て感じた。

海外では様々なSNS発信で社会が動いた!

 アメリカでは「タンポン税」と呼ばれた生理用品への課税撤廃の活動が次第に広がり、各地で撤廃法案が可決されていった経緯も伝えたNHK「クロ現」。

 この番組がさらに優れていると感じたのは現在、米国で女性団体が行っていたキャンペーンの動画を紹介した点だ。

 男性たちがトイレで便器に座っている。

 用を足したら、トイレットペーパーに手を伸ばす。

 公共施設や学校などで無料なのは当たり前だが…。

「もしトイレットペーパーが有料だったら?」

 この言葉を動画に載せて、公共施設や学校などに生理用品も無料で置いておきべきだとSNSでキャンペーンした結果、多く州や自治体で生理用品の無償提供を決めたという。

 考えてみれば、多くの公共施設や学校のトイレにトイレットペーパーは無償で備えられている。女性の生理も男性の排泄も同じように人間の「生理」として平等に考えるべきではないか、というこの問題提起は確かに説得力があるものだった。

 フランスやニュージーランドは国費を投入して学校で生理用品を無料提供することにした。イギリス・スコットランドの議会は自治体などに無料提供を義務づけた。

こうした世界の動きに影響を与えたのがローラ・コリトンさん(27)。大学生だった7年前に生理用品への課税廃止を求める署名活動をインターネット上で始め、今年、撤廃が実現したのだという。番組は彼女と中継をつないで「日本ではまだ根強い“生理の貧困”に対する批判」に対してどう対処すればいいのかを尋ねたとき、ローラさんの返答が秀逸だった。

イギリスでも反発はありました。ある男性は生理の出血は(トイレに行くまで)我慢できるはずだといってSNSにタンポン税廃止運動に反対する投稿をしていました。

でも彼らに悪意はなく、生理がどういうものか知識がないだけなのです。

学校の性教育も男女別々に行われているので、知らないのは仕方ありません。

 ローラさんはいまの時代だからこそ希望があると強調した。

SNSを動かしている女性たち

長年、女性の問題が個人的なもので社会にはもっと重要な問題がたくさんあるとされてきました。でもネット上で発信できるようになり、女性の声は無視できなくなりました。SNSを動かしているのは女性たちです。

 政治や法律を動かすことは特別な人だけだと思っていたがいまは誰でもできる時代…。 

 そう語るローラさんの言葉を聞いて、確かにSNSで誰もが発信できる時代に発信しているローラさん、そして今回、調査を実施した「#みんなの生理」の谷口歩実さんと大学生のうちから活動を始めている女性たちが社会を動かしている。

 そう言えば筆者の周囲にもSNS で「生理」の問題で動画を作成するなどして積極的に発信している若者たちがいることを思い出した。その一人は今回の「クロ現」は「海外の視点もあって深い内容だった」と感想を伝えてくれた。

 こうした若い人たちがこれまでの男性優位の社会のなかで可視化されてこなかった「生理の貧困」を可視化させ、世の中を少しずつ前に動かしていくのかもしれない。

 「生理の貧困」は日本でもこれから女性の社会参加が増えるなかで解消されるべき課題ではないか。

 そんな世の中の大きな流れを感じさせる「クロ現」の放送だった。