足利の山火事「ひるおび!」で神レポート

TBS「ひるおび!」で山火事の“神レポート”を見せた鎌田香奈レポーター

生中継の神レポートだ!

 情報番組あるいはワイドショーというジャンルのテレビ番組はあなどれない。さまざまな担当分野の記者たちが日頃から専門性を発揮して担当分野について取材しているはずのニュース番組と比べても、時にすぐれた放送をすることがある。

 この日のTBS「ひるおび!」がそれだった。ワイドショーの“神回”といえるような圧倒的な生放送での中継レポート。それをたまたま見ていて筆者は「うまい!」と思わず膝を打ってしまった。

 栃木県足利市で今なお燃え続けている山火事。地上だけでなく空中からヘリコプターまで使って懸命に消火活動をしているのにまだ火は消えない。消えないばかりで延焼が広がっている。21日に発生してもう6日目だ。

 山火事が鎮火しないで燃え続けている。夜も赤い炎が消えず、昼間も煙が上がり続けている。いったいどうしたことなのか。今の消防の技術をもってしても火事を抑えることができないのか。

 そんなことを考えながら、テレビを見ていて「ひるおび!」を見て得心した。

 女性の「鎌田さん」というレポーターが生中継で伝えていたのだ、それが実に堂々として、計算し尽くされたレポートだった。スタジオの恵俊彰キャスターに名前を呼ばれたそのレポーターは落ち着いた声で伝え始めた。

はい。栃木県足利市月谷町です。午前中に取材していた場所から車で20分ほど北に移動して来ました。私の後ろがいま火災が起こっています両崖山の方面です。こちらからも煙が確認できますように延焼範囲の広さがお分かりいただけるかと思います。

 無駄のない簡潔な文を続けるレポート。

 彼女の言葉に合わせてカメラは煙が立ち上っている山あいにズームインする。筆者は長くテレビ報道の世界にいたので、記者やレポーターの上手下手は現在でも気になる。余計な接続詞などを使わず、短い文を淡々と重ねていくのは腕のある証拠だ。

 「うまいな、この人…」

 そう思いながら聞き入ってしまう。

私の周りにある木に少し注目していただきたいのですけれども、このすぐ隣りにある木にですね、葉っぱがほとんどついていないんです。ほとんど葉っぱが落ちてしまって枝だけの状態になっています。

 カメラはここで葉っぱがついていない褐色の木々だけを映し出す。

 「確かに緑がないし、乾いている枝ばかりで火がついたら燃えてしまいそうだな」と感じながら見ていく。

 その後だ。

 彼女は道路を反対側に歩いて木々が生えている方に近づいていった。

 山道で中継していたようだとここで気がついた。

少し、こちら道を渡りまして、この足下にも注目していただきたいんですが、おそらく、火災が起こっている両崖山と同じ状況なんじゃないかなと思います。

 彼女はしゃがんで膝をつき、路上に溜まった枯れ葉の中に手を入れていった。

枯れ葉の「音」で状況を表現するレポート

このようにたくさん、落ち葉が積もっているんです。そして、音でお分かりいただけますか?(ガサガサ…)非常に乾いた音が(ガサガサ…)」

 その時、スタジオにいた恵キャスターが「わかる!」「カッサカッサしているわー」と合いの手を入れた。それに合わせて彼女はレポートした。

…なんですね。はい。そしてもう非常に軽く、水分がほとんどありません。そして、少し、こう掘ってみますと(手で枯れ菜があるところを掘ってみる)土が見えるまでにだいたい10センチから15センチほど、(ガサガサと掘りながら)掻き分けないと、地面が見えないです。

これくらいの量の乾いた落ち葉、枯れ枝などが積もっているという状況なんです。

 この後ですくっと立ち上がって、再びカメラ目線で伝えた。

自衛隊のヘリなどが放水活動をして、消火活動をしているんですが、やはりこれだけ乾いた落ち葉がたくさん積もっていますと、表面を湿らせることはできたとしても、なかなか下の方まで水を染みこませることは難しいのではないかなというふうに推測されます。

(恵俊彰キャスター)

ねー、いや鎌田さん、本当に枯れ葉だらけだね、なんか。

(鎌田)

そうですね。おそらくこのような状況が火災が起こっている山でも広がっているんじゃないかなと思うんですが、本当に乾燥した足下がずっと続いています。

 そういう言葉で彼女はレポートを締めくくった。

 「ひるおび!」では、この日の朝に放送された「あさチャン!」で放送されたVTRで同じように枯れ葉の山に手を突っ込んでレポートしたディレクターがやっていたので、それを真似ていたのかもしれない。そうだとしても生放送でこれを短い時間でこの女性レポーターが伝えきったことは特筆に価する。正味2分ほどの時間だったが、この足利市の山火事に関する限り、筆者が見た記者レポートやレポーターによるレポートなどと比べても断トツだった。

 非常に優れた生中継レポートだったと言える。

この「鎌田さん」はいったい何者なのか?

 「鎌田さん!」

 「ひるおび!」ではそう恵俊彰キャスターが何度も呼びかけたので、ながら視聴をしていた筆者はてっきり元NHKの解説委員の鎌田靖さんが現場にいるのかなと当初は思っていた。ところが画面に登場した「鎌田さん」は筆者の知る鎌田氏ではなく、彼と比べれば相当に若い感じの女性の「鎌田さん」だった。鎌田香奈さん。現在はフリーアナウンサーだという。

 「何者だ?これほどのレポート力は…」そう思って調べてみたら富山県の地方テレビ局チューリップテレビの元アナウンサーだということがわかった。しかも昨年、辞めてフリーになったばかりらしい。富山のチューリップテレビといえば、映画にもなったドキュメンタリー「はりぼて」を制作して、富山市議会の議員たちの政務調査費の不正流用を暴き出し、地方発の調査報道の力を見せつけたことが有名だが、番組を制作した時にニュースキャスターをやっていた五百旗頭幸男さんも昨年、退職した。映画版の「はりぼて」にはその場面が出てくるが、偶然、同局は昨年、とても優秀な出演者を同時に失っていたことになる。

「事件です」の「スッキリ」阿部祐二レポーターと比較すると…

 同じ情報番組・ワイドショーの中では、深刻そうな表情で語る「事件です!」のセリフがもはやキャッチフレーズになった日本テレビ「スッキリ」の阿部祐二レポーターも現地入りしてレポートしていた。ただ阿部氏の場合は、この日の放送ではVTRレポートで、消防隊の消火活動に密着して木々が夜間も燃え続けている映像と合わせて、生中継は火の手が迫っている住宅街から伝えていた。延焼範囲が拡大して次第に火が住宅地に迫っている緊迫した様子は日本テレビの方が分かりやすく伝えていたと思う。

 その意味では、日本テレビもTBSも甲乙つけるのは難しい。だが、こうしたむしろニュース番組では伝えきれていなかった山火事の状況をワイドショーの方が切迫感をもって伝えていたことは確かだ。

 生放送こそがテレビというメディアの最大の強みであることを考えると、VTRを使うことなく、山火事をなかなか鎮火させることができない現状を生映像だけできちんと伝えた鎌田香奈さんの中継レポートはやはり神回といえるほどすばらしいものだった。レポーターとしての力量では鎌田香奈さんはワイドショーの世界の第一人者である阿部祐二さんに匹敵するものをもっていることを示したため、生中継のレポートでは鎌田さんに軍配を挙げておこう。

レポーターから「スター」の道も? 

 ワイドショーのレポーターはキャスターとは違ってなかなか注目されることはない。

 そうした中で、鎌田香奈さんというレポーターはすでに一種のタレントあるいはスターと化している阿部祐二さんと同じように将来的に「化ける」かもしれない可能性を感じさせる。

 今回、筆者が好感をもったのは、鎌田さんの伝え方が力まず、目立とうというような自意識も見えず、非常に謙虚なものだった点だ。たぶんそうした人柄なのだろう。ワイドショーのレポーターというと、かつては厚顔無恥で痛みをもった人々に平気でマイクをつきつけるような人たちというイメージがあったが、視聴者の視線が厳しい現在はそれでは通用しないはずだ。むしろ鎌田さんのような謙虚な姿勢は大災害や殺人事件などの悲劇を伝えるような場面では生きてくるはずだ。

 神回と言える今回の中継レポート、山火事だけに限らず、いろいろなジャンルの事件や事故、災害などでその力を発揮できる人だと思う。

 ワイドショーのレポーターの伝え方に注目する視聴者もいることを意識してこれからもがんばってほしい。