新型コロナ“出口戦略”で独自基準を示した吉村知事VS小池知事VS西村担当相 情報番組での軍配は?

日本テレビ『スッキリ』(5月6日放送)が注目した“大阪モデル”(筆者が画面撮影)

 大型連休最後となった5月6日。

 テレビのワイドショーは新型コロナの緊急事態宣言が7日以降も全国的に延長される中で、吉村洋文知事が前日に示した大阪府独自の「出口戦略」をクローズアップして報道した。

 おおむね、どの番組も吉村知事の姿勢を評価するトーンで肯定的に伝えた。 

 大阪府が出したような具体的な数字をなぜ東京都は出せないのか?国は出せないのか?などスタジオでの解説トークが盛り上がった。

 どんなやりとりがあったのか。自治体トップ、そして国の担当大臣を対比して伝えた番組も相次ぐなど、姿勢の差が興味深いものになった。

 吉村知事の会見をどのように評価したのか。他方で東京都の小池知事や政府の西村大臣をどう対比させたのか。

 そこには番組が抱えるコメンテーターの専門的な見識やキャスターらの問題意識で差が出ていた。

 以下、抜粋してまとめてみる。

◆“大阪府吉村知事の独自姿勢に国の大臣が示した不快感”に注目した日本テレビ『スッキリ』

 番組は前日の吉村知事の記者会見の映像を用いて、“大阪モデル”を説明した。

(ナレーション)

「政府は国民に今月いっぱいまでの自粛を求めていますが、解除に向けた具体的な基準が示されていないという声もあります。

そんな中、独自の“出口戦略”を示したのが…」

(大阪府吉村知事・きのう午後5時ごろ)

「本日、大阪府において出口戦略を策定いたしました」

(ナレーション)

「大阪府の吉村知事。緊急事態宣言以降、感染者数に緩やかな減少傾向が見られている大阪府」

(吉村知事)

「5月31日で原則として緊急事態宣言の延長された中身を引き続き、お願いしたいと思います」

(ナレーション)

「吉村知事は府民へ、今月末までに外出自粛や休業要請の継続を訴えたその一方で」

(吉村知事)

「明確な数値をもって出口戦略を策定しましたので

5月15日の段階においていったん大阪モデルをもとに判断。

数値を満たしているようであれば

それ(休業など)を段階的に解除をしていきたい」

(ナレーション)

「独自の基準、“大阪モデル”を設定。

今月15日段階の数値で自粛要請の解除を検討すると明かしたのです。

解除に向けては3つの基準を定めています。

それは、1つはその日にわかった感染経路不明の新規感染者が10人未満となること。

さらにPCR検査の結果、陽性率が7%未満になること。

そして重症患者の病床使用率が60%未満となること。

この3つすべてが7日間連続で達成された場合、自粛要請を段階的に解除するというのです」

(吉村知事)

「まず数値で出口戦略を示す

客観的な指標をもって判断するということを

“大阪モデル”でまずはトライしたい

(ナレーション)

「独自の数値基準を設定した吉村知事は

“政府は出口戦略を示していない”と批判

 これに対して、番組は新型コロナ対策の国の責任者である西村経済再生担当相の反応を映像で伝えた。

(ナレーション)

「一方、吉村知事の会見を前に“大阪モデル”の方針を聞いた西村経済再生担当大臣は」

(西村経済再生担当相)

「知事が判断する材料をご自身で定められてやることですから、

これは自由にやっていただいて、知事の権限の範囲内で対外的に説明が必要だということで

示されるのは私はいいことだと思っています

 ここまで吉村知事を評価する言葉を並べた西村康稔経済再生担当相。

 しかしこの後で一転、大阪府の姿勢に不快感を表明した。

(西村担当相)

「しかし、“出口戦略”という言い方は違う。

緊急事態宣言からの出口ということであれば、

これは国が専門家の意見を聞いて定める話。考える話でありますし、これについての具体的な基準について今後、解除というのはありえますので、早く専門家の皆さんと相談、意見を聞いて考えていきたいと思っています」

(ナレーション)

「数値の指標は必要とした一方で、緊急事態宣言の“出口戦略”は国が定めるものだと述べました。

政府から明確な解除の基準が示される日は来るのか。

一方、大阪府の今後の対応について吉村知事は」

(吉村知事)

「(大阪モデルを)修正すべき点があれば臨機応変に修正していきたい。

いずれにしても、こういった出口戦略を示すことが重要だと思うので国には出口戦略を示してもらいたい。

それ(国の出口戦略)がよりすばらしい数値基準で出てくれば

大阪府としてもそれに乗っていきたい。

最終的には府民のみなさまにとってどれが一番いいのかという判断で進めたい」

 このVTRの後でリモート出演した専門医の佐藤昭裕氏は自治体ごとにこの基準は変えるべきだという見解を示した。  

(佐藤昭裕・日本感染症学会専門医)

「この基準は各自治体によって変えていいと思う。今各自治体で叩き台を作っていると思うがこれに揃える必要はないと思う」

 番組は、西村大臣の「しかし」という言葉を強調して吉村知事と西村大臣の「出口戦略」で対立が生じていることを指摘した。だがそれがなぜなのか、どうしてこの対立が生まれたのかまでは深掘りしなかった。

 その点ではかなり物足りない内容になった。

◆各自治体の規制解除方針の違いに注目したフジテレビ『とくダネ!』

 フジテレビ『とくダネ!』は大阪府の発表に特に大きく注目せずにパネルで各自治体の規制解除の方針の違いを紹介する形で報道した。

 テロップでは「混乱 緊急事態延長も…各都道府県で規制解除分かれる」と示していた。

 一律でパネルにしただけだったため、報道の焦点がピンと定まらない伝え方になった。

◆吉村知事に対して西村大臣の感情的な反応を強調したTBS『ひるおび!』

 『ひるおび!』はメインキャスターの恵俊彰氏と八代英輝弁護士の問題意識が色濃く反映される伝え方になった。 

(恵俊彰キャスター)

「この数字をクリアしたら(休業要請を)解除しますよという条件を吉村さんはお出しになった」

 恵キャスターはそう言って「大阪府が独自に示した要請解除の基準」をフリップで解説した。

 「陽性率」についてはこの朝の毎日新聞の記事を元に「政府は陽性率を把握できず」という現状を伝え、厚労省が各都道府県に報告を求めるものの「12都県」は応じず、と示し、東京都が応じていない現状を明かした。

 コメンテーターたちも東京都と比較しながら、大阪府の姿勢を評価するコメントを続けた。

(八代英輝弁護士)

「東京から見ると、うらやましい要素だと思いますね。感染経路不明者数も把握できていますし、陽性率がほぼ毎日出てくるというのは、東京からすると考えられない。そういった数値的な裏付けをきちんと持っているというのが大阪の強みの一つだと思う」

(恵俊彰キャスター)

「(大阪府が基準にした数値のうち)新規の感染経路不明者数というのは東京もがんばれば今のところ出せそうです。毎日一応出ていますから。一つはできそうだけど、今、八代さんが指摘した陽性率はどうやら難しそう…計算しなければなりません」

 スタジオでは大阪府では陽性率を毎日出していることやグラフで見ると次第に下がっていて、目標を下回る水準まで来ていることも伝えた。

(恵俊彰キャスター)

「東京都でも毎日、(新規の)感染者の数というのは発表されていますが、東京都では『PCR検査実施人数』という形でホームページに載っています。ただ、その日の数字が必ず出るとは限らない。お休みのときは(全部は)出ないんですよ。でも大阪は毎日PCR検査実施数というのが出ているんですよ。毎日。毎日、分母と分子が大阪はわかる

 ここで「素朴な疑問」を投げかける役割を果たしていたのがデーモン小暮閣下だ。

 専門的な知識を出すのではなく、番組で説明した内容に対して素人なりの疑問を投げかける役割だ。

(デーモン小暮閣下)

「大阪ができるのに、なんで東京はできないんだ?」

 この「素朴な疑問」を受けてレギュラー出演者の二人が連日報道する中で培った知識と問題意識から大阪府と東京都の違いについて深掘りするコメントを投げかけた。

(恵俊彰キャスター)

「東京都のPCR検査実施人数というのを毎朝われわれホームページで見ているんですよね」

(八代英輝弁護士)

「で、毎朝、残念な思いをするのは、その日、陽性が確認された人の人数は出るんですが、その日に何人検査したのかというのは都は出せないんですよね」

(恵俊彰キャスター)

「『医療機関が保険適用で行った検査は含まれていない』と書いてある。だからいろんなところで調べている総合の数を計算できないんですよ。東京は」

 ここでまたしてもデーモン閣下が素朴な疑問を短く投げかける。

(デーモン閣下)

「でも、大阪はできるんでしょう?なんで?」

 デーモン閣下が発した素朴な疑問をきっかけに大阪府の体制について、番組が調べた情報が伝えられる。

 スタジオでは大阪府が吉村知事の指示で保健所をバックアップするための「支援チーム」の人員強化していることを説明した。各部局の職員や保健師らやく40人を集め「保健所支援チーム」を発足させたのだという。

(デーモン閣下)

「大阪はすいぶん早い段階からそういう取り組みをスタートしたということだよね?他の都道県も見習えばいいのにと思っちゃうけど」

 『ひるおび!』の特徴は、こうした「素人の疑問」を大事にする一方、感染症の専門家など医師のコメンテーターに偏りがちな他の情報番組とは違って政治ジャーナリストの田崎史郎氏を出演させて、政治的な観点から見た裏話を加えて解説している点だ。これが専門家だけの分析とは違う「解説の幅」をこの番組に加えている。

(政治ジャーナリスト・田崎史郎さん)

「東京で何が行われてきたかというと、どうも東京都と各区役所の保健所がどうもうまくいってないみたいだということで、先週土曜日(5月2日)に小池知事が東京都からも各区役所に人を応援するようになりました、と。それが百十何人になったと言ってる。大阪府ではそれを4月20日にやっているという話で明らかに東京都の対応は遅いんです。それ(日々の検査実施人数)を国に報告していないと国も集計できなくなっている。これは東京都の事務能力が大きな問題だと思いますよ」

 日テレ『スッキリ』が指摘した「出口戦略」をめぐって大阪府の吉村洋文知事と政府の西村康稔経済再生担当大臣との「対立」についても整理して伝えていた。吉村知事が言う「出口戦略」は「休業要請の解除」についてであり、西村大臣が言う「出口戦略」は「緊急事態宣言の解除」についてだという解説だったが、西村大臣が大人げないという指摘が各出演者からは上がっていた。

(政治ジャーナリスト・田崎史郎さん)

「何の『出口戦略』を言っているのかという違いです。吉村知事は休業要請についての『出口戦略』。西村大臣は緊急事態宣言解除の『出口戦略』。言っていることが違って、『出口戦略』という言葉だけが一致しているということ。

だから、西村さんの方が、論理的に違っているわけじゃないけれども、

言い方がちょっとカチンと来すぎているかなという感じ」

(恵俊彰キャスター)

「西村さん、ちょっとイラッとしたのかなという感じしたんですよ。『しかし』という言い方…」

(八代英輝弁護士)

「言葉のニュアンスからも明らかにイラッと来ているのは明らかだというのは伝わってきましたけれど。私やっぱりちょっと違うのかな?と思いました。

というのは『出口戦略』というのは軍事用語なんでしょうけど、被害やダメージをできるだけ少なくして、事態を撤収して終息させるという戦略なんですよね。ですから止めている経済を動かし始めることを考える基準をつくる、ということは当然、出口戦略の一つなんですよ。西村さんが言いたいのは、いかにも官僚出身の大臣ぽくって。出口戦略というのは休業要請の解除がすべてではないですよ。

本来、全般の主導権は国がもっているんですよ、という主導権争いに見えてしまう。

そこは何か国が示せなかったことを大阪が示せたから、国のプライドを見せたいとかそういうところじゃないと思う。この言葉の訂正のやりとりは要らないと私は思いました」

(恵俊彰キャスター)

「すごく客観的に言ったら、吉村さんの勝ちにしか見えない。勝ち負けじゃないけど」

 『ひるおび!』は政治ジャーナリストの田崎氏の解説も交えて吉村知事の取り組みの姿勢を東京都以上に評価しつつ、感情的な苛立ちを見せた政府の西村大臣の大人げなさを指摘する報道になった。田崎氏の存在があればこそ、「大阪府と国の主導権争い」「吉村さんの勝ち」というような評価ができたのだと考える。

◆吉村知事のリーダーシップを絶賛したテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』

 スタジオコーナーの冒頭、大阪府に続いて東京都などが休業要請の解除の基準を模索しているが、その目安になる「陽性率」について国が把握できていないという毎日新聞の記事「新型コロナ 政府、PCR検査陽性率把握できず 全国集計基準なし」を紹介した。

新型コロナウイルスの感染の有無を確認するPCR検査(遺伝子検査)について、政府が新規の検査人数に対する陽性者の割合(陽性率)を正確に把握できずにいる。検体を採取する機関が多数ある上に、その検査結果が判明する日にちもバラバラになりがちで、陽性率の算出に不可欠な「分母」(新規検査人数)と「分子」(陽性者)を全国的に把握する仕組みが存在しない。厚生労働省が求める報告に、12に及ぶ都県が応じていない実情もある。

出典:毎日新聞(5月6日東京朝刊)「新型コロナ 政府、PCR検査陽性率把握できず 全国集計基準なし」

 番組は東京都が「陽性率」を出せない理由として次のように伝えた。

(東京都担当者・きのう)

「陽性率のデータを出せる状況にない。

今後はそういったデータ取集分析の体制を整えて公表したい」

 これに対して岡田晴恵・白鴎大学教授(感染学)がコメントした。

 『モーニングショー』は、岡田教授の感染症の専門家としての問題意識が番組全体を全面的に引っ張っている。

(岡田晴恵・白鴎大学教授)

「陽性率のデータを出してくれということは(この番組でも)さんざん言ってきた。東京都の場合は、陽性率がものすごく高いんだと思う。ですから7%どころではないと。確定患者の陽性率。これがないと評価ができない。その陽性率のデータがないと本当に実行再生産数のデータって、合っているんですか?という議論になります。ですから、これをちゃんとやっていただくと。

で、退院の基準となる2回のPCR検査(で陰性)。これがかなりの部分を、患者さんが多いですから、圧迫しているんだろうと。

厚生労働省の方も療養とか自宅療養とか14日間が過ぎれば(退院を認める)、というような弾力的なものも出してきていますが、そこを是正しながら、PCR検査をちゃんと(すでに入院した患者ではなく)確定症例のためのPCR検査をやっていかないと、(感染者の)数が減っても『分母はいくつですか?』と聞いて『わかりません』ということだと評価できないかなと思います」

(羽鳥慎一キャスター)

「確定症例の検査というのは新規の患者さんを見つける検査ということになります」

(岡田晴恵・白鴎大学教授)

「そういうことです」

 東京都の小池知事は休業要請に応じた中小業者などに独自の支援策として、最大100万円の「感染拡大防止協力金」支給するとしていたが、緊急事態宣言の延長で7日以降も引き続き休業などに応じた中小業者に最大100万円の追加支給を決めた。その上で休業要請の解除のための「出口戦略」についてコメントしている。

(東京都小池知事)

「休業要請解除の出口をどう見出していくのか

専門家の知見を得ながら(都の)ロードマップを早急に策定していく」

 ここでも岡田教授が都に注文をつける。

(岡田晴恵・白鴎大学教授)

「やはり基礎データは出してください、というのはさきほど申した通り。後はどういうところを目指すか、どういう数値になったら、解除しますと。

大阪府は出し始めましたけれど、大阪と東京だとその数値が違う可能性もある。規模との環境で違うのだろうとは思うが、どこを目指すのか。何を指標の判断にしますか。そのためには現段階はどこにいますか。それをちゃんとデータとして見せてほしい。出口がないと人はがんばりませんので、そこを明示するべきかなと思います」

 岡田教授は大阪府の吉村知事の会見の様子を見ていて気がついたとして、次のようにコメントした。

(岡田晴恵・白鴎大学教授)

「きのう大阪府の会見の様子を見ていて思ったことは、吉村さんの話し方を見て思ったことがあったんです。

『この人、自分で理解している。ちゃんと自分の言葉で話しているな。ちゃんと勉強されているな』と。

(知事が)そういう場合は部下は怖いんですね。

ですから、鋭く指摘されますけれど、わかっていて指摘されますから、職員もものすごく働くのだと思うんですね。ちゃんと理解してもらえるから、評価もしてもらえるし、モチベーションも上がる。だからこそ、(大阪府は)こんなリアルタイムで数値が出てくるのかなと思います」

 『モーニングショー』も吉村知事の姿勢を高く評価した。

 だが、その論拠になっていたのは岡田教授の評価だった。

 『ひるおび!』がどちらかといえば政治ジャーナリストの田崎氏による都と府の対策の早い遅いという評価がベースになって、メインキャスターらが吉村知事を高く評価する流れになっていたが、『モーニングショー』はあくまで感染症の専門家という立場の岡田教授から見て、自治体トップがこの感染症についてどの程度勉強しているのかどうか評価するという流れになっていた。岡田教授が都と府との組織論を語っていた。これは感染症の専門家を連日固定でスタジオ出演させているこの番組だけの圧倒的な強みと言えるものだったが、他方で多くを岡田教授に依存する構図とも言えた。

 どの情報番組も、大阪府の吉村知事、東京都の小池知事、政府の西村担当大臣、という三者の中で吉村知事をとりわけ高く評価する報道が全体的に目立つ結果になった。

「何か勘違いなさっているんじゃないですか?」

 この日の午後、西村大臣が吉村知事に対して感情的な発言をしたという報道が一斉に流れた。

 新型コロナ対策について国全体の舵取りを担う政府の責任者が見せたこの「苛立ち」の姿勢は、多くの国民に今後の不安を抱かせるものになった。

 翌日の情報番組がこの西村発言に注目して、2人の「対立構図」(この場合は西村大臣が感情的にいきり立っている印象が強いが)に焦点を当てた報道になっていくことは間違いないだろう。 

 自治体のトップはどう振るまうべきか。

 政府の責任者はどう振るまうべきなのか。

 新型コロナ感染拡大が止まらない現在、感染症予防の専門的な見地と地方自治体と政府という組織を動かして発信する立場を政治的に見る立場の両方から、いっそう多角的な分析と解説を情報番組には期待したい。