『バリバラ』桜を見る会(2)首相の失言を当事者が痛烈に批判!日本では例がない強烈な政治パロディーだ!

『バリバラ』桜を見る会第二部・車イス利用の東佳美さん4月30日・筆者が画面撮影

これは歴史に残る政治パロディー番組だったのではないか?

 パロディー番組が伝統的に存在してきたヨーロッパやアメリカのテレビテレビ番組とは違って、日本ではこれまで「政治」を笑うというパロディー番組はほとんど存在しなかった。ほとんど、というのは、少しずつテレビマンたちが試みたことはこれまでもあった。

 だが、そのたびに与党政治家などから批判の声が上がったりして、なかなか日本においては政治家を揶揄したり、風刺したりすることは視聴者さえも「不謹慎」だと受けとめる文化があって、今なお「政治」をテーマにしたパロディー番組というのは成功した試しがない。

NHKのEテレ『バリバラ』の「桜を見る会」が「政治」を痛烈に皮肉ったパロディー番組を放送した

 筆者が見たところ、成功したのではないか?

 『バリバラ』「バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~」第二部が4月30日の本放送だけでなく5月2日夜(日付上は5月3日0時)からの再放送も予定通りに放送されたことで安堵したことを報告しておきたい。

 その1週間前に再放送が予定されていた第一部は別の番組に差し替えられてしまっていたからだ。

 与党政治家がツイッターで批判したことで、NHKの上層部が忖度したのでは?など、様々な臆測が流れたが真相は分からない。

 とにもかくにも第二部は本放送も再放送も無事に放送された。

 受信料を払っている人なら「NHKプラス」というサービスで1週間はネット常で視聴も可能だ。

 冒頭の画像は「2019年度バリアフリーを停滞させた出来事」として車イス利用者の東佳美さんが大阪サミット期間中に安倍首相が「大坂城にエレベーターを設置せずによかった」と他国首脳らに語ったとされることに対して「いまだに腹が立つ」と発言していた場面だ。

 その前には、その発言をめぐる国会答弁の寸劇もあり、パロディーの笑い中で、様々な障害を持った人たちや性暴力の被害者、ヘイトスチーチと闘う女性、旧優生保護法によって不妊手術を受けさせられて子どもを作ることができなくなった夫婦などの「痛み」を伝えていく番組になっていた。

 第一部については以下のURLにまとめてみた。

ヤフーニュース個人「『バリバラ』桜を見る会(1)再放送中止ばかり話題だが、ヘイトに向き合う伊藤詩織氏がデビューした回だ」

 「バリバラ桜を見る会」第二部は、一部と比べても政治パロディーという色合いが濃いものだった。

 それは第一部でも映像が少し流された大阪城をめぐっての首相の発言である。

 タイトルの後で番組は国会中継の寸劇から始まる。

【バリバラ国 滑稽中継(その1)総理大臣への質問】

(ナレーション)

「この1年に起きたバリアフリーに関する出来事について集中審議の模様をお伝えします」

(バラ党書記長 石倉ちょっき議員)

昨年のサミットの挨拶です。

(スタジオに来ている)小林ご夫妻も初デートをなさった(60年前に花見デート)という、あのお城、あの城にエレベーターをつけたのはミスだったとあなたはおっしゃった。あれ、どういうことですか?」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「内閣総理大臣のアブ ナイゾウでございます。

ホスト国のリーダーとして、まあ、軽いリップサービスをしたわけでございます。

これ、簡単に申しますとね、いわば、受けを狙って…

(石倉ちょっき議員)

「はずしましたね」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

そのご指摘は当たりません。全然当たってない。ものすごく受けました」

(石倉議員)

「ウソ言いなさい!」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「大爆笑です。大爆笑ですよ。私が一番近しいロシアのプーチン大統領なんか、私、ファーストネームで、ウラジミール!ウラジミール!」

(と背広の上着の裏地を見せる=かつての「桜を見る会」で安倍首相が招待客だったお笑いコンビのトレンディ・エンジェルの斎藤司と一緒に上着を広げたポーズを真似て、左右1回ずつ行う)

(石倉議員)

「裏地を見せているんじゃないよ!」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「彼なんかほとんど笑わないのが、どういうわけか『ウフフ、ウフフ、ウフフ』とほぼ無表情に笑ってくれました」

(石倉議員)

「苦笑いって言うんですよ、それは。

問題はそこじゃない。

(大阪城に)エレベーターを作ったのは問題だったと言った。

ということはだ、車イスで動いてらっしゃる方は…

(スタジオで車イスに座っている障害ある女性をカメラが撮影)

「お城には上るなと、そういうことを言ったんだよ、あなた」

(チーンと質問時間切れの合図の音)

(石倉議員)

「質問を変えます。障害者雇用の現状を伺いたい」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「お答えを申し上げます。これはですね。悪夢のようなバラ党政権

(石倉議員)

「悪夢って何だ?ふざけたこと言うな」(とヤジ)

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「あんた、一人しかいないんだから、一人でヤジを飛ばさないでください。静かにしてください」

悪夢のようなバラ党政権の時はですね、全然、進まなかった

これは私が総理になってからですね。5000件も増やすことができたわけでございます。

これはもう誇るべき私の業績と思っているところでございます」

(石倉議員)

「なんか、満足げなんだよな。

例の『桜を見る会』の、いわゆる名簿の件ですが、

廃棄した職員が障害者雇用だったから時間がかかっちゃったと

そういうふうに受けとめられかねない発言だったんじゃないですか?

そうでしょ?みなさん?」(と傍聴席のスタジオゲストたちを指さす)

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「お答えいたします。その場にいたわけではございませんから私は」

(石倉議員)

「わかっていますよ、そんなこと」

(内閣総理大臣 アブ ナイゾウ)

「ただですね。これは私は…」

 安倍首相お得意のフレーズ「悪夢の民主党政権」などをうまく散りばめて笑える寸劇に仕上がっていた。

 このパロディー寸劇は、実際にあったと報道された安倍首相の発言が元になって作られている。

 次のような記事である。

大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の28日の夕食会で、議長を務める安倍晋三首相が、大阪城にエレベーターを付けたのを「大きなミス」と発言したことに、波紋が広がっている。来年の東京五輪・パラリンピックを控える中で、バリアフリーの意識の欠如を憂慮する声が出ている。

出典:朝日新聞2019年6月29日「大阪城エレベーター『大きなミス』 安倍首相発言が波紋」

 同じように「桜を見る会」の招待者名簿を障害を持った職員がシュレッダーにかけたとされる答弁も事実をベースに作ったパロディーだが、首相は実際に以下のように答弁していた。

首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を、野党議員が資料要求した直後に内閣府が廃棄した問題で、安倍晋三首相は名簿を廃棄したのが「障害者雇用職員」だったと2日の参院本会議で明らかにした。4月の「桜を見る会」終了後、すぐに廃棄できなかった理由の一つとして、担当職員が「障害者雇用で短時間勤務だった」ことを挙げたが、インターネット上では「障害者と公表する必要はない」「なぜ個人情報を公開するのか」などの批判が相次いでいる。

出典:毎日新聞(2019年12月3日)「安倍首相、名簿のシュレッダー処理『担当は障害者雇用の職員』と答弁」 批判相次ぐ

【バリバラ国 滑稽中継(その2)副総理大臣への質問】

(バラ党党首 松崎菊也)

「委員長。副総理にうかがいます。

少子化が問題になる中で、副総理は昨年、こうおっしゃった。

『年寄りが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるんだが、子どもを産まなかった方が問題なんだから』とこのようにあなたはおっしゃった。これはあなた、問題のすり替えでしょうが」

(副総理大臣 無愛想 太郎)

「よく覚えていやがったね。

おめえ、どこのメディア?

NHKか? なに上から言えっていわれたのか? ははは」

(バラ党党首 松崎菊也)

「ここは国会だよ。ぶら下がりの質問じゃないんだよ。真面目に答えていただきたい。子どもを産みたくても産めない。そういう人の立場に立ったと言えますか? 少子化対策が聞いてあきれる」

(副総理大臣 無愛想 太郎)

「反省してねえ、とは言ってねえだろうが。あー?

ただ、今は反省しているモナカです」

(バラ党党首 松崎菊也・立ち上がって副総理大臣の答弁書を覗き込んで)

「あなた。反省している最中(サイチュウ)ですよ。あなた今、反省しているモナカって言ったろ」

(スタジオ笑)

(副総理大臣 無愛想 太郎)

「いつからモナカになったんだ。令和になってからか? ちゃんとフリしておけよ、お前」

(バラ党党首 松崎菊也)

「昔からだよ。質問を変えます。

内閣府の調査で15歳から39歳の引きこもりが今61万人いるということが分かった。引きこもりの方の事件も絶えず、起こっております。これを副総理としてどうお考えですか?」

(副総理大臣 無愛想 太郎)

「その引きこもり、引きこもりっていう言い方はね、なんかこうマイナーイメージで与野の中に行きわたっちゃって。えー? 引きこもりをこう集めて、ゲームの、いわゆるバグチェックをな、これをやることによって、一部上場になっている会社が実際にあるんだよ。俺、知っているんだ。これぞまさに適材適所でしょ?

いまはまさにコロナ・ヴァイルスでよ。みーんな世界中が引きこもっちゃっているのよ。おめえ、有意義にどうやって過ごしたらいいか、親子でみんな討論しているさ。誰に聞けばいいの? 引きこもりに聞けよ。あー? すげえ、才能持っているぞ、あいつら。以上、無愛想太郎でした」

 副総理大臣・無愛想太郎も実物の麻生太郎副総理の特徴をよく表していた。帽子をかぶってダンディーな服装。口をへの字になげてべらんめえ口調の話し方など、スタジオの出演者からも笑いが漏れた。

 『バリバラ』が番組として優れているところはその後で引きこもりなどの当事者に感想を言わせていることだ。

 単純に政治家の発言を恣意的に選んで「笑い」にしていくならば、まだまだ「政治」を笑うという習慣がない日本では難しいだろう。

 しかし障害を持った人たちが不便に思うようなことを政治家たちが発言していて、怒っている。バリアフリーを後退させているという視点であれば、政権も政治家たちも文句は言いにくい。なぜなら、ネタにされたくなかったら、そんな発言しなければよかったのだから。

 笑いも追求する一方で真面目に差別や偏見の問題も取り上げる。様々な困難も持った人たちのための「バリアフリー・バラエティー番組」という特長をうまく生かした回だった。

 副総理大臣・無愛想太郎の寸劇にスタジオの出席者に感想を求めたところ、精神障害で長い引きこもりを経験した堀合悠一郎さんが次のようにコメントとした。

(堀合悠一郎さん・長い引きこもりを経験)

「引きこもりの話題がありましたね。今、実際にコロナウイルスでほとんどの人が引きこもりを奨励されているような状況で、引きこもりってマイナスイメージで取られることが多いんですけど、プラスの方向に考えていくと、けっこう、いろいろ、引きこもっている人とそうでない人が(ネットなどを使って)一緒にできることが増えていったらいいとすごい思いました」

 大阪城のエレベーター設置を失敗とする首相の発言に対しては車イス生活者の女性・東佳美さんが感想を述べた。

(東佳美・自立生活センター職員)

「私はやっぱり安倍さんの『大坂城にエレベーターを作ったのはミスだった』という、あの発言はいまだに、ちょっと前ですけど、いまだに腹が立つし、安倍総理の発言によって、世界から『日本は恥ずかしいな』って思われちゃうということも、もっとしっかり考えて発言してもらわないと困るなと思いました」

(高倉陵さん・芸人グループ「三拍子」)

「本当にユーモアで言ったつもりだったんですかね?」

(久保孝真さん・芸人グループ「三拍子」)

「だと思いますよ」

(高倉陵さん)

「一回、お笑いの要請所に入ってから、ユーモアを言っていただければ…」(笑)

 「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄作業をしたのは障害者雇用の職員だとした首相発言については交通事故による高次脳機能障害で体に麻痺が残るTaskeさんが声を上げた。

(Taskeさん・交通事故により高次脳機能障害)

「『桜を見る会』で名簿廃棄が遅れた理由を、担当が障害者雇用の職員で時間調整を検討していたみたいなことを言っていたのが非常にショックだった」

(司会者・万次郎 トランスジェンダーの芸人)

「Taskeくんは障害者雇用で働いたことはあるの?」

(Taskeさん・交通事故により高次脳機能障害)

「どうしても仕事が遅かったり、いろいろ理由があってさ、悪いレッテルを貼られて、

退職に追い込まれるようなこととかあったね。まあ、実に悔しいっていうか。なんであんな言い訳をするんだ?」

(司会者・万次郎 トランスジェンダーの芸人)

「その気持ちをシュレッダーにかけなくていいの?」

(Taskeさんが手動のシュレッダーにバリバラ桜を見る会の招待者名簿をかけていく。

「よっしゃー!」と声を上げて名簿を裁断する)

 「政治」を笑うパロディー番組。

 ここまで実名の政治家、それも政権のトップの政治家が対象になって寸劇の対象になり、その後で障害などを持った当事者が「怒り」をテレビで表明するというパロディー番組はほとんど例がなかったのではないか。

 アメリカでは最近、俳優のブラッドピッドがパロディー番組に出演して政権幹部に扮してトランプ大統領を強烈に当てこすり、話題になった。

トランプ大統領の「ワクチンはかなり早くできる」という発言に対し、偽ファウチ博士は「“すぐに“はおもしろいフレーズです。地球の歴史に比べれば、ワクチンは間違いなくすぐにやってきます。でも友達に、『俺はもうすぐ死ぬんだ』と言って1年半後にまだ生きていたら、友達はかなり動揺するでしょう」。大統領の「ウイルスはまるで奇跡のように消滅する」という断言には、「“奇跡“は素晴らしいけれど、我々のプランAにしてはいけません。サリーでさえ最初は空港に着陸しようと考えました」と、2009年1月にニューヨークのハドソン川にエアバスA320型機を着陸させたパイロットのチェズリー・サレンバーガー(通称「サリー」)に言及した。 

出典:ヤフーニュース(4月27日)「ブラッド・ピットがSNLで、トランプ大統領へ強烈な皮肉。」

 こうした欧米と比べると、日本は「政治」を笑うという文化はまだ浸透していない。

 民放で長く働いていた筆者の記憶では、日本テレビ系で放送していた『11PM』という娯楽番組で、たまに政治を風刺する硬派なパロディー番組を放送したことがあった。だが、それもたとえば政権幹部を江戸幕府の将軍や水戸黄門などに例えるやり方で、政治家の実名は出していなかった。

 そういう意味では、今回の『バリバラ』桜を見る会は日本のテレビの歴史において画期的な出来事かもしれない。

 まだ見ていない人は「NHKプラス」などを使って、ぜひ見てほしい。

 この『桜を見る会』第二部は他にも画期的なことがあった。

 それはまた別の機会に紹介したい。