“エッセンシャル・ワーカー”の新型コロナでの死を他人事にしないために

『ニュースウォッチ9』米国のバス運転手の投稿動画(4月14日・筆者が画面撮影)

 新型コロナから私たちを守るために働いている人たちがいる。

 医師や看護師などの医療従事者や保健所、厚生労働省や各自治体で病床の確保に努める人たち

 加えて、私たちが続ける三密を避ける生活を支える人たち。

 「テレワーク」で職場から離れて働くことを余儀なくされ、頼りがちな宅配便やデリバリー・サービス

 それを配達をする人

 公共バスを運転する人

 駅のエスカレーターの手すりを拭いてくれる人

 公共トイレを掃除してくれる人

 スーパーやコンビニでレジを打つ人

 それらの人たちがいまこう呼ばれている。

エッセンシャル・ワーカー(Essenntial workers)

 考えてみれば私たちの回りにはエッセンシャル・ワーカーが数多く存在する。

 4月14日(火)NHKのニュース番組『ニュースウォッチ9』が特集した。

「患者の治療にあたる医師や看護師、スーパーのレジ係、公共交通機関の職員、どれも私たちの社会を支える必要不可欠な仕事でこうした仕事を担う人たちを海外では『エッセンシャル・ワーカー』と呼びます」

「必死な思いで社会を支える、そのエッセンシャル・ワーカーの間でいま感染したり、死亡したりする人が相次いでいます」

 特集ではフランスのマクロン大統領がこうした人たちの職業を挙げて感謝の言葉を述べている映像を放送した。

(仏マクロン大統領)

農家、教職員、トラック運転手、配送業者、電気工、レジ係、ごみ収集員、警備員、清掃員、公務員。

みな社会生活が続くことを可能にしてくれた」

 4月13日夜、マクロン大統領は国民向けのテレビ演説の冒頭で、社会を支えるエッセンシャル・ワーカーの名前を列挙して感謝の言葉を述べた。

(仏マクロン大統領)

「私たちは努力を続けなくてはならない

規則を尊重すれば、より多くの命が救われる

 こう呼びかけて外出制限を来月11日まで延長すると発表した。

 WHOも13日、外出制限の措置について解除は慎重に判断すべきだと警鐘を鳴らした。

(WHO・テドロス事務局長)

「新型コロナの感染はとても早いスピードで拡大するが縮小するペースはもっとかなり遅い」

「感染拡大防止の措置の解除は

ゆっくり実施しなければならない」

 外出制限が長引く一方、宅配業などで働き、社会や市民生活を支えているエッセンシャル・ワーカーは日々現場に出て「感染のリスク」にさらされている

 アメリカのミシガン州でバスの運転手として働いていたジェイソン・ハーグローブさん。

 NHKではアメリカABCニュースの独占映像を使ってハーグローブさんについて紹介した。

 SNSで感染への恐怖を訴えていた。冒頭の画像はそのときのものだ。

(ジェイソン・ハーグローブさんがFacebookに投稿した動画)

「(乗客の中には)バスの車内で口を覆わずに何度もせきをする人もいる。

(新型コロナが)世界で流行していると知りながら

それを気にしない人もいると分かった」

 動画を探してみると筆者も8分半ぐらいの長さの彼の語りを見ることができた。

ハーグローブさんがFacebookに投稿した動画

 ハーグローブさんは頭に手を置いて「いかにも困った」という表情で話している。

 善良そうな人柄が動画からでも伝わってくる。

 ショッキングだったのはこの後だ。

動画を投稿した11日後に彼は死亡した

 彼がバスの車内でマスク姿で写っている画像とともに、「新型コロナウイルスが原因だったとされています」と番組はその事実を伝えた。

 カメラに向かって困惑した表情で話している彼がたった11日でこの世を去ってしまうとはこのウイルスはなんと恐ろしいのか。

 ハーグローブさんの妻は、エッセンシャル・ワーカーの感染を防ぐには多くの人の協力が必要だと訴えた。

(ハーグローブさんの妻)

「私は夫がいなくなって寂しい。

子どもたちは永遠に父親を失った。

良人は市民のために働いていた。

みなさんにお願いしたい。

夫の死を無駄にしないで」

 妻や子どもたちらと一緒に写っている写真で、ハーグローブさんは静かに微笑む表情だ。

 アメリカでは彼のようなエッセンシャル・ワーカーの感染や死亡が相次いでいる。

 小売り大手(スーパーマーケット)のウォルマートではイリノイ州の店舗で働いていた2人の従業員が感染して死亡。

 ニューヨーク州では、地下鉄やバスの運行させる都市交通局の職員のうち約1500人が感染、40人以上が死亡。

 エッセンシャル・ワーカーは全米で4900万人~6200万人労働者全体の3割~4割を占めると推計されているという。

医療崩壊の進み具合を見ても、アメリカの姿は明日の日本の姿だと分かる

 筆者はこの日のNHK『ニュースウォッチ9』は特集のコーナー以外でもそうした”エッセンシャル・ワーカー”を意識的に強調して放送している印象を受けた。

 スタジオの冒頭から医療従事者、宅配業者、スーパーの従業員、介護の仕事にかかわる人、バスの運転手など公共交通機関で働く人などを強調して「私たちの社会が感染のリスクを背負う人たちに支えられている」と伝えていた。

 ハーグローブさんの特集のVTRの後で2人のキャスターがしみじみと語っていたコメントが印象的だった。

(和久田麻由子キャスター)

私たちの社会を支えるためにリスクを背負いながら働くみなさん

その役割の大きさに改めて気づかされますね」

(有馬嘉男キャスター)

「聞いているとみなさん、本当に強い責任感と誇りをもって仕事をされているんだなと来ますよね。

ただ、その分、感染のリスクが高まってしまうことは本当に厳しい現実だなと思いました。

アメリカではこうしたエッセンシャル・ワーカーを守ろうとスーパーなどを利用する客の方がマスクをしないといけない、マスクを義務づけるという動きが出ているそうです」

 日本はエッセンシャル・ワーカーの人たちを大切にする社会にしていきたい

 そうした人たちを感染させないようにマスクをしたり、せきをするときはマスクで覆う。一定の距離を置くことなどに努めたい。

 少なくとも宅配で物を運んできた業者の人にいきなりスプレーをふりかけるなどの行動を謹んで、働く人たちへの尊敬と感謝を伝えながら、お互いに感染防止を意識していきたいと思う。