女性で質問したのは? フリーは?? 新型コロナの首相会見 どの社の誰が質問できたのか? 

3月14日(土)の首相の記者会見を配信した内閣広報室のサイト(著者が画面を撮影)

 3月14日(土)の土曜日の夕方。

 筆者はTBS『報道特集』を見ていた。

 同番組では安倍政権には手厳しいことで知られる金平茂紀キャスターが国会記者会館から生中継した。

(金平キャスター)

「安倍首相がまもなく記者会見を行います。緊急事態宣言を可能にする改正特措法が昨日成立しました。安倍首相が何をやろうとしているのか。私もこれから会見場に向かうことにします。」

 番組では新型コロナ対策特措法をめぐる経過や「非常事態宣言」で民放テレビの番組内容を変更するような指示を出しうるのかなどの国会答弁をVTRで振り返った後で、記者会見の映像が生中継された。

 

 新型コロナをめぐっては前回の首相の記者会見では、記者たちの質問に十分に応えることなく打ち切っていて批判を浴びていたので、この金平キャスターや舌鋒鋭い東京新聞の望月衣塑子記者も質問できるのだろうか注目しながら、中継映像を見ていた。

 

結果的には実質52分あまりの会見だった。

(幹事社の東京新聞・中日新聞のゴトウ記者=男性)*以下、漢字だと間違っている可能性があるので耳で聞こえた名字をカタカナで表記する。

「新型コロナウィルスのさらなる感染拡大を防ぐ法改正について、うかがいたい。

新型コロナウィルスでも緊急事態宣言を出せるようになったが、国民の間には権利が制限されることへの懸念が根強くある。

また専門家からは発令要件があいまいで抽象的だという批判もある。

総理はさきほど現段階では発令する状況にないという立場を述べたが今後どんな状況になれば発令されるのか。

客観的な基準などを国民にわかりやすく説明してほしい。(筆者注・ゴトウ記者の質問その1)

また今回の法改正について1月に初めての感染者が国内で確認されてから約2ヶ月後となった。対応が遅れた印象がある。

クルーズ船の対応も後手に回ったという批判もある中、これまでの危機管理で教訓、反省点を聞かせてください。(筆者注・ゴトウ記者の質問その2)」

 これに対して安倍総理大臣は自分でメモをとることなく、プロンプター(原稿を読みながらも読んでいるように見せない機械。テレビのニュース番組では普通に使われるもの)らしきものを読み上げて回答していた。

 官僚がどこかで模範答弁を作成して安倍総理が読めるような仕組みにしているのだろうか。

 安倍総理大臣が答えた内容については、各メディアのホームページなどで動画でもテキストでも見ることができるので、ここでは記者会見での記者たちの質問に絞ってくわしく書き起こすことにする。

 そうすることで以下のことが「可視化」できるはずだ。

どの会社の記者が質問ができたのか。

それぞれの社のどの記者が質問したのか。

それぞれの記者の質問力はどうか。

 記者たちの質問を聞いてみると、文章が「長い」のと、1つの質問の中に2つ3つと別の質問を重ねた質問がけっこう多いことがわかる。

(共同通信のヨシウラ記者=男性)

「東京五輪・パラリンピックを予定通りに開催できるのかどうか国内外から注目を集めている。

IOCのバッハ会長はWHOの助言に従うと述べ、そのWHOは新型コロナウィルスをパンデミックと表現した。世界的な早期の終息はまだ見通せない状況だ。さきほど総理は『ピークを遅らせることが重要だ』と述べたが、約4ヶ月後に迫った東京五輪・パラリンピックを計画通りに開催できると考えているのか。(筆者注・ヨシウラ記者の質問その1)

 

また米国のトランプ大統領が言及した延期開催、あるいは規模の縮小、中止となる可能性はあるのか。IOCがそうした判断をする場合もタイミングは何月のいつ頃なのかも、認識を聞きたい。(筆者注・ヨシウラ記者の質問その2)」

 

 この後、進行役の内閣広報官が幹事者以外のメディアの記者に挙手させて質問させている。

(毎日新聞のノグチ記者=男性)

「水際対策について質問する。中国・湖北省滞在の外国人の入国拒否の措置を2月1日から行いましたが、その後で中国全土からの入国制限を3月5日にしている。すでにその時には国内で感染が広がっていた状況なんですが、1月初め頃に中国政府が感染についての情報を統制していた可能性も指摘されている。今、振り返ると入国制限した時期が遅かったのではないかという反省はあるか。(筆者注・ノグチ記者の質問その1)

この判断の際に、中国の習近平国家主席の訪日があるので配慮したことも判断の基準になったのか。(筆者注・ノグチ記者の質問その2)」

(ウォールストリート・ジャーナルのランダース記者=男性)

「さきほど景気対策の話をしている時に思いついたが、景気対策の一環として、たとえば消費税を一時的に5%に下げるというような主張も聞くが、消費税の引き下げについてはどのように考えているのか。」

 以上の質問者4名は男性だった。ここで司会者が初めて女性を指した。

(フリーランスのアヅミ記者=女性)

「さきほどの経済対策では、だいたいどのぐらいの規模の対策を予想しているのか。コロナだけでなく、消費税増税、株安という三重苦の状況なのでかなり大規模なもの(対策)じゃないと効果的ではないと考えるがどうか。」

ここまでで質問できた記者5人中で女性は1人だ。

(北海道新聞のサトウ記者=男性)

「場合によっては外出もという話があったが、感染者の多い北海道では知事が法的な根拠のない緊急事態宣言を出して毎週末、外出自粛を要請している。市民生活が制限されて経済も被害を受けている。こういう現状をどう見ているか。(筆者注・サトウ記者の質問その1)

対策をどうするか。北海道も含めて国民が聞きたいのはコロナの終息の見通しはどうなのか。(筆者注・サトウ記者の質問その2)

4月から子どもたちが学校に行けるのか、総理の口から見通しを話してほしい。(筆者注・サトウ記者の質問その3)」

 この後で2人目となる女性記者が指名される。女性記者が身近な生活や経済についての質問をしたのは偶然だろうか。

(日本テレビのスガハラ記者=女性)

「さきほどの総理の話の中で、近い時期の経済対策について『生活に不安を感じている方々にも対策を講じる』と言ったが、具体的には資金の援助やどういったものでいつ頃に利用が可能になるものか、考えを聞きたい。」

質問した記者7人のうち、ここまで女性は2人だけだ。

(フジテレビのカシマ記者=男性)

「学生の就職について、聞きます。新型肺炎の影響で内定の取り消しだったり、入社延期の不安など、まさに来月社会に出る多くの学生が不安を抱えている。政府は企業側に対して特段の配慮をするよう要請していると思うが、業績が悪化している企業は苦しい判断を迫られる。そうした懸念に対して具体策があれば教えてほしい。」

 この質問に安倍総理大臣が答えた後で、司会進行していた長谷川栄一内閣広報官がこう言った。

(進行役の長谷川広報官)

「以上をもちまして会見を終わります。」

 会見が始まって40分数分が過ぎていた。これまで質問者は8人のみ。

 この後で会見場は騒然になった。

「待ってください!」

「・・・の質問には答えられないんですか? おかしいでしょう」

「無茶すぎるよ!」

「総理! これ、記者会見と呼べますか?」

 (進行役の長谷川栄一内閣広報官)

「では最後に1問だけ」

(名乗っていないので所属不明の男性記者)

「雇用対策で雇用労働者に対してとフリーランスに対する補償がフリーランスについては(雇用労働者の)半分で疑問の声が上がっていますが、これに対してはどのように考えるか。」

 これに対して、安倍総理が答えた後で進行役の長谷川広報官が再び告げた。

(進行役の長谷川広報官)

「はい。どうもありがとうございました。」

「まだあります!」

 記者団から声が上がる。

 進行役が「じゃあ、ヒガシオカさん」と最前列の男性記者を指さす。

 朝日新聞の記者が10人目だった。

よく考えればここまで朝日新聞の記者は質問させてもらっていなかった。

(朝日新聞のヒガシオカ記者=男性)

「緊急事態宣言は私権の制限につながる以上、総理や政権に対する信頼が非情に重要になってくる。

しかし、黒川検事長の定年延長問題では国民の知らないうちに解釈が変更されていた。

しかもそれは『口頭決裁』という(異例の)手続き。国会の答弁も不備だった。

今、政権への信頼が失われている状態だと思う。信頼回復のために黒川検事長をめぐる閣議決定の取り消しやあるいは、口頭決裁で解釈を変更したことを取り消すということを考えていないか。」

 この質問に安倍総理が答えた後で、進行役の長谷川内閣広報官がこう伝えた。

「すみません。全員指したいんですが、アレですから、後2問にさせてもらいますから。」

けっきょくTBSも質問はできず、現場で手を挙げていた金平キャスターも質問することはできなかった。

 そう言った後でこう続けた。

「同じ会社の人が手を挙げられた方は、すみません・・・。じゃあ、ナナオさん」

 会場には東京新聞の望月衣塑子記者もいたはずだ。

 だが、東京新聞はすでに政治部の記者が幹事社として質問していた。

同じ社がダメという一方的な条件で望月記者も質問させてもらえなかったことになる。

(ニコニコ動画のナナオ記者=男性)

「経済問題は国民が非常に気にしている。財政出動、たとえば米国の非常事態宣言では5兆円あまりの財政出動が可能になる。今後、第3弾の緊急経済対策を策定するという理解でいいか。実施時期のメドはどう考えているか。」

 この質問に対して総理が答えた後で進行役が「ではこれで最後の質問とさせていただきます」と言って「素顔の・・・お名前と所属があるのかどうか知りませんが明らかにして・・・」と男性記者を指さした。この男性記者はその他大勢の記者たちがマスクをしているのに対して「素顔」だったのでそういう表現で指さしをしたらしい。12人目はフリーランスの立場で主にネットで発信してきた男性だった。

(IWJ=Independent Web Journal のイワカミ記者=男性)

「インターネット報道メディアIWJ代表ジャーナリストの岩上安身だ。

今回の特措法に盛りこまれた非常事態宣言で私権が制限されるということだが、報道、それから原論の自由、ここは担保されるのか? 

また総理は改憲に大変熱心だが、自民党の改憲草案の中には9条の改憲と並んで『緊急事態条項』も盛りこまれている。

今回の特措法の『非常事態宣言』が一つの布石になって国民をならし、その後にこの『緊急事態条項』を導入するのではないかという懸念がある。

これは大変強力な内容、安倍独裁を可能するような内容を含んでいる。この点をぜひ答えてほしい。」

 この質問に対して、安倍総理大臣はそつなく答えたが筆者にとって衝撃だったのは、報道機関にとって大切な「報道の自由」に関する質問を新聞やテレビなど大手メディアの記者たちはまったくしなかったことだ。

 インターネットメディアの岩上氏がかろうじて「最後の質問」に滑り込ませた。

 新型コロナウィルス特措法の成立で、「緊急事態」が宣言された場合にNHKや民放に対して、政府が指示をすることが可能になることが実は「報道の自由」を制限するのではないかと議論になっていた。

 ところが特措法の成立を受けて、初めての総理大臣の記者会見でこの質問をした記者がIWJの岩上氏だけだったとは・・・。

 岩上氏は原発問題など既存メディアが発信してこなかった問題を深掘りする独立系ジャーナリストで仕事の仕方はフリーランスに近い。

 このテーマは他の記者たちは意識していなかったのだろうか。

「報道の自由」に対する記者たちの感度の鈍さが気になる

 中継では所属を確認できなかった人もいたが、中継映像の音声からわかった範囲でまとめると以下のようになる。

新聞・通信やテレビ以外の記者は3人。うちネット大手のニコニコ動画が1人。事実上フリーといえる(IWJ)やフリーの記者が2人。

 映像を見る限り、会場には女性記者の姿も目についた。それなのに実際の質問者の男女比で男性が多いのは気になった。

結果として質問できた12人の記者のうち女性は2人。

 このことはメディアの世界でのジェンダーバランスとして、いかがなものだろう。

 冒頭のTBS『報道特集』は番組の終了間際に、金平キャスターが再び国会記者会館から生中継した。

(金平キャスター)

「まだ会見は続いているんですね。前回の一斉休校の時の会見というのが、36分で終わったというので、それを気にしてかどうかわかりませんが、さきほど打ち切ろうとした時に、記者たちが一斉に抗議してそれでまだ続いているという状況なんですが、私、38分までいたんですが、手を挙げてもいっこうに当ててもらえないので放送のために出てきたんですが、内容について言うと、正直言うと新味はありません。

この中身ですね。

首相の記者会見というのは、率直な感想ですが、何か『やっている感』の演出のために使われている道具のような機能を果たしているのではないかという思いを強くしました。

まだ会見は続いているようですが、記者たちの真摯な質問に答えることがきちんと国民にも向き合うことだと思います。」

 ところで筆者が気になっていた東京新聞の望月衣塑子記者だが、時々、「記者会見」の打ち切りを通告しようとして、記者たちが抗議の声を上げて騒然とする中に彼女らしい声が聞こえてはいた。

 記者会見の修了後に会場を去る安倍総理大臣が映される映像の音声に女性の声で「今後とも時間をかけてください」などと話しかけているのも聞こえていた。

 後で彼女のツイートを確認すると、やはりあの場にいたことがわかった。

望月衣塑子記者のツイッター(3月15日)
望月衣塑子記者のツイッター(3月15日)

どの社の記者が質問させてもらえたのか。

 かなり実態は内閣広報官のさじ加減らしい。

 

質問したのは男性記者か女性記者か。

 ここにはそれぞれの会社の政治的などの女性参加の実態が反映される。

どの社の誰がどんな質問をしたのか。

 さらにこれは、個々の記者の問題意識や質問力、いわば記者としてのチカラが如実に反映される。

 望月記者のツイッター投稿によると、最後に質問したIWJの岩上氏は7年以上、ずっと記者会見で手を挙げ続けてきて初めて指されたのだという。でも他にもフリーの神保哲生氏など記者会見に出席を続けて一度も指されていない人たちがいるという。

 新型コロナで首相の記者会見は今後もまだ続くはずだ。

 

 日本という国の権力を監視するのをこの人たちにまかせて本当にいいのか。

こんなところにも注視していきたい。