高輪ゲートウェイ駅開業でメディア人が注目する「ある問題」

JR高輪ゲートウェイ駅の開業で消える!?この景色(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

実に49年ぶりに新駅が開業

 東京の主要交通機関のシンボルといえるJR山手線の新駅・高輪ゲートウェイ駅。

 いよいよ3月14日(土)にオープンする。

 先日、報道陣に一足早く公開されて、その写真や映像がニュースになった。

 この新駅のセールスポイントは「未来の駅」だという。最新の技術が数多く使われ、QRコードで通過できる最新型の改札やAI(人工知能)で周囲の施設や乗り換えなどを案内するシステムも試験導入されるという。

 日本経済新聞デジタル版は動画付で伝えている。

無人コンビニはこれまで赤羽駅(東京・北)などで実証実験をしたが、常設の店舗は初めてになる。カメラが商品を自動で認識し、利用者は「Suica(スイカ)」など交通系ICカードを使って簡単に決済できる。

出典:日本経済新聞(3月9日)

注目される無人コンビニ

 

 この「無人コンビニ」の存在が新駅の最大の特徴といってもいいようだ。

 ITmediaビジネスオンラインは以下のように詳しく、無人コンビニの仕組みについて記述している。

「高輪ゲートウェイ駅」では、人工知能(AI)を活用して無人決済ができるコンビニエンスストアがJRとして初めて実用化される。さらに、自律走行で警備に当たるロボットやQRコードをかざして通過する形式の改札の実証実験を行うなど、新たな試みが続々と実践される。JR東日本は同駅をグループが開発する最新技術をアピールする「ショーケース」としたい考えだ。

 AIによる無人決済ができる店舗名は「TOUCH TO GO」(タッチ・トゥー・ゴー)。新駅開業後の23日に開店し、午前6時から午前0時まで営業する。

 「入る。とる。でる。」のキャッチフレーズ通り、利用客は店内に入ると、ほしいものを取って、店内に設置された画面に商品が一覧表示されるのを確認した後、Suica(スイカ)など交通系ICカードを別の専用機器にかざして決済して、店舗を出る。  

 AIが搭載された約50個のカメラセンサーが、店内に入る人の動きや商品の位置を捉えることで、買い物客が手に取った商品を自動的に認識する仕組みだ。

 システムを開発したJR東の系列会社の阿久津智紀社長は「JR東の駅はもちろん、店員を置けない地方の小売店などに提供したい」と語った。カメラは店内の人の動きを正確に追跡するため、万引など不審な動きも警戒しているという。

出典:ITmediaビジネスオンライン

 最先端の技術の粋を駆使した新しい買い物体験ができる駅ナカの販売店。

 

無人コンビニの登場によって姿を消すことになりそうな商品がある

 その商品はバーコードもQRコードもついていないため無人決済には使えない。

かつてサラリーマンが通勤途中に駅で購入して電車の中で読んでいた商品

 高度成長期を中心に首都圏の朝の光景になくてはならない物。

それは「新聞」である

 新聞が「デジタル」でスマートフォンやタブレットで読まれるようになり、駅売りの「紙」の新聞を読む人はどんどん減っている。

 そうした中で高輪ゲートウェイ駅の無人コンビニの登場は、「駅売りの新聞」の退場を決定づけることになりそうなのだ。

山手線で49年ぶりに新駅として開業する高輪ゲートウェイ駅は「新聞が売られていない駅」になるのか?

 

これが新聞社やテレビ、インターネットなどの報道現場で働くメディア人が注目しているポイントだ

 もともと新聞だけでなく雑誌も駅売りの販売不振が続き、キオスクへの雑誌取り次ぎをしてきた会社が撤退して駅売りの雑誌がなくなる可能性がこの2、3年、報道されてきた。新聞も雑誌も、「紙媒体」はもはや駅ナカで売れない時代に突入していることは確かだ。

 技術革新の進歩でレジの簡略化が駅ナカにも広がっているが、キオスクのセルフレジについて書かれた「巨大化するJRのKIOSKセルフレジでは新聞をどう買うのか」というWebメディア「GASKET」の記事には以下の記述があった。

 タッチパネルをよく見ると画面右下に「新聞を購入」というボタンがあり、そこをタッチすると新聞メニューから希望の新聞を選べるようになっている。商品を全てスキャンしたら、レシートのあるなしを選択し、スイカなどの電子マネーで決済するだけだ。

出典:GASKET 「巨大化するJRのKIOSKセルフレジでは新聞をどう買うのか」(2019年5月27日)

 JRは比較的最近オープンさせた駅ナカのセルフレジでも新聞を買えるようにしている。

 高輪ゲートウェイ駅の無人コンビニ「タッチ・トゥー・ゴー」で実際に新聞や雑誌などの紙媒体が本当に買えない状態なのかどうかは3月23日(月)の無人コンビニの開業を待ってみないとわからない。

 かつて高度成長期、日本のサラリーマンのおじさんたちにとって、駅の売店で新聞を購入して電車の中やホームで読むことは日常的な習慣だった。

 それは毎朝の見慣れた駅の景色でもあった。

 ところがメディア環境の激変で新聞を広げて読む人は滅多に見なくなり、かつての光景は次第に失われつつある。

 今や電車の中で紙媒体を広げて読む人はごく少数で、大半の人たちはスマートフォンを眺めている。

 高輪ゲートウェイ駅の登場は紙媒体の衰退を決定づけかねない。

 

新聞社の幹部たちも「新聞が販売されない駅」の登場に注目する一方、少なからずショックを受けている

「それにしても首都圏の駅から新聞販売が消える日が来るなんて思わなかった。首都圏の駅売りは新聞社にとってドル箱だった」

「新聞社の記事もスマホやPCなどネットで読む時代で紙の新聞は退場しつつある。『新聞が売られていない駅』の出現は象徴的だ」

 ため息とともにそうしたボヤキの言葉が聞こえてくる。

 

 かつて「ニュース」というのは「新聞」とほぼ同義だった。

 調査報道の積み重ねで権力を追いつめ、時の政権退陣のきっかけを作ったことも数多い。

 日本のサラリーマンにとって、通勤途中で駅の売店で買った新聞紙を広げ、政治や社会、経済、国際情勢、スポーツなどの情報を確認することは「働くおじさん」の基本動作だった。

 その光景が消えてしまう。

 筆者は3月7日に苦況にあえぐ「新聞メディア」の現状について以下の記事を「ヤフーニュース個人」に寄稿した。

このまま新聞は死んでいくのか? 新聞メディアの生き残りにテレビも「重大関心」(追記あり)

出典:ヤフーニュース個人(3月7日水島宏明)

 発行部数の減少が止まらない新聞業界にとって、「売店で新聞を買えない」という高輪ゲートウェイ駅の出現はさらなる逆風といえるのかもしれない。

 消えゆく紙の新聞。

 “昭和の光景”の消失はおじさんたちにとっては少し切なくほろ苦い。

 だが、ノスタルジックな感傷は心の中にしまっておいて、紙の時代から電子の時代に向けてリニューアルしてほしい。

 “昭和の新聞”の光景から“令和の新聞”の光景へ。

 働く日本人の朝の景色に「新聞」がこれからどうかかわっていくのか。

 高輪ゲートウェイ駅のオープンとともにメディアの人間たちも注目している。