夏休みの終わりを前に・・・つらいなら学校から逃げてもいいよと励ますテレビ番組が今夜放送されます

NHKの「#8月31日の夜に。」の番組ホームページを筆者がスクリーンショット

『#8月31日の夜に。』

 これがその番組の名前だ。

 NHKのEテレで、8月31日(土)の午後10時から午前1時ころまで生放送する。

 また、放送と同時にインターネットでも配信される。

 NHKが番組の放送を同時にインターネットでも配信してもいいと、先日、国会で決まったばかりだけれど、それが実現するのはまだ少し先のことだ。ではなぜ、今回は放送とネットを同時にやるのかというと、番組に「公共性」があるからだろう。筆者がNHKの人間ではないので、正式な表現まではわからないが、大災害のときなどに緊急特番を放送するのと同時に同じ番組をネットでも見られるようにするのと同じような理由に違いない。 

 

 今回、私はこの番組のことは多くの人に知ってもらった方がいいと考えて、自分が時々書いている「ヤフーニュース個人」に紹介原稿を書いてみようと思った。別にNHKの人に頼まれたわけでもないし、何か制作者と特別なつながりがあってのことではない。

 私は、元々は民放のテレビ局でドキュメンタリー番組をつくっていた経験が長くて、現在は大学で教師をしている人間だ。

 専門が「テレビ番組」とか「ジャーナリズム」で、テレビ番組を批評することもなんとなく仕事のひとつのようになってしまっている。

 そのため、テレビ番組はドラマもバラエティーも歌番組もニュースもと、いろいろなジャンルに目を通すし、ちょうどテレビがもつ「公共性」とは何か、その中でNHKが担うべき「公共性」って何だろうか?をちょうど最近、考えていた。

 そこで、はたと気がついた。

「今日は8月31日だっ!」

「あの番組が放送される日だっ!!」

 それがこの『#8月31日の夜に。』という番組だ。

 

 番組ホームページを見てみよう。

 このサイトは、10代のみなさんが「学校に行きたくない」「生きるのがつらい」といった気持ちを吐き出し、共有できる場を目指しています。

きっかけは、夏休み最後の夜の、不安で憂うつな気分を分かち合おうと立ち上げたハッシュタグ「#8月31日の夜に」。 ハートネットTVでは、1年を通して、このサイトやハッシュタグで、10代のみなさんの気持ちに寄り添っていきます。このサイトは、10代のみなさんが「学校に行きたくない」「生きるのがつらい」といった気持ちを吐き出し、共有できる場を目指しています。

きっかけは、夏休み最後の夜の、不安で憂うつな気分を分かち合おうと立ち上げたハッシュタグ「#8月31日の夜に」。 ハートネットTVでは、1年を通して、このサイトやハッシュタグで、10代のみなさんの気持ちに寄り添っていきます。

出典:NHK ハートネットTV『#8月31日の夜に。』番組ホームページ

 簡単にいえば、たとえば、学校でひどい「いじめ」に遭っている子どもがいるとして、その子が夏休み中は学校に行かずに済んでいたのに、その夏休みが後1日、2日で終わってしまうことで、今すごーく思い悩んでいるのなら、「いいよ、学校に行くのを無理しないで」「楽に生きてごらん」と、少しラクにさせてくれる。

 一人で悩んでいる人の気持ちになって考えてくれて、きっと少し気持ちをホッとさせてくれる。

 人生、死んでしまうほど悩んでしまうのなら、そこから逃げたっていいんだよ、と少しだけ年上のお兄さんやお姉さんたちが、自分自身の体験を話してくれたり、君たち自身の悩みを聞いてくれる番組だ。

 番組ホームページは、タレントの中川翔子さんの写真が載っているから、きっと彼女も登場するのだろう。

 この番組は、ひょっとすると自分の命を終わらせようなどと考えている「誰か」のために、いろいろな人たちが耳を傾けてくれて、解決方法を見つけようとしてくれる番組に違いない。

 そうやって、この日本では10代前半の死因で一番多い「自殺」「自死」を一人でも少なくしようという試みだ。

 私が今、テレビの「公共性」について考えていると言ったよね?

 大きな地震や津波、豪雨災害などが来そうなときに、「このままだと危険ですよ~」「こういう方法だと命を守れるので参考にしてください」と呼びかけるのも「公共性」の大事な役割だと思う。

 同じように、今、学校でいじめられたりして、親にも学校の先生にも友だちにも相談できずに、死のうとしている君の話を聞いてあげて、君が死なないですむ方法を見つけてあげられるなら、それも立派な「公共性」の役割じゃないかと思う。

 この番組そのものは2017年から始まったもので、2018年にはすごく大きな賞ももらっている。

 実はすごく地味な番組だけど、この番組は放送関係者には割と知られている。

 テレビの世界で最も権威があるとされているコンクール「イタリア賞」を受賞したのだ。

 専門家によると、「イタリア賞」の中でも、以下の賞だという。

ノンフィクション番組に関 連したオンラインコンテンツを対象とする「ウェブ・ノンフィクション部門賞」を受賞した。番組 は , 2 0 1 7 年 8 月 3 1 日 に 放 送 さ れ た『 ハ ー ト ネ ッ ト T V + 生 き る た め の テレビ「 # 8 月 3 1 日 の 夜 に 。」』。 テ レ ビ と ウ ェ ブ サ イ ト , S N S を 連 動 さ せて,新学期を前につらい気持ちを抱える10 代の若者たちの声に耳を傾け,彼らの“居場所” を作ろうとした試みだった。同番組は,229 の 全出品作品の中で最も優れた作品に贈られる「 イタ リ ア 共 和 国 大 統 領 特 別 賞 」も 受 賞 し た 。

出典:谷卓生著「2年目を迎えた#8月31日の夜に。」「放送研究と調査」2018年12月号

 やっぱり、立派に「公共性」の役割を果たしているんだね。 

 社会の中で立場の弱い人のことを考えて、励ましてくれる番組は何も『24時間テレビ』ばかりじゃないんだよ。

  ちなみに昨年(2018年)の番組を見てみると、当日夜の放送だけじゃなくて、再放送でホームページに届いた子どもたちからの「声」が「日記」などとして次々に紹介されている。

「夏休み ぼくの日記帳」(9月11日放送)

中川翔子、栗原類、大森靖子、ヒャダインが夜の下町をバスで走りながらトークしていく。

ゲストの過去の自分自身をさらけ出して向き合った。

「誰にも見られない空間であるトイレは特等席だった」(ヒャダイン)

「昼休みや掃除の時間まで

机に座らせ続けられるあの屈辱」(大森靖子)

番組には1000ページもの日記が寄られたという。

「今日は学校。

夏休みが始まったろきから。ずっと行きたくなかった。

気持ち悪くて、手が震えて、お腹が痛くて、

親に休みたいって言った。

ズル休みではないはずなのに、

ズル休みをした気分だ。」

「snsにも投稿できない。

電話もできない。

死にたい気持ちを

知ってもらうことも。

慰めてもらうこともできない。」

 番組ではこのメールをくれた本人に会って話を聞いてみた。

Q理由もなく死にたくなるって、どんな感じなんですか?

「ココロが塗りつぶされていく感じ」

「勝手に涙が出てくる感じ。よくわからないけど悩んでいることがいっぱいあるから。それが全部、一気にくる感じ」

別の日記帳・・・

「いじめられた時、担任の先生に相談した。

先生は『あの子に嫌がらせされているのね・・・

あの子だから仕方ないね。』と言った。

先生にとって、他人にとって、

ぼくの感情や苦しみは、仕方ない、で一蹴されるほどのものだった。」

 番組ではこれを書いた当人に話を聞いてみる。

「なんで許されるのかわかららないし、

確かにその子は

ちょっと暴力的な面はあるから・・・

『仕方ない』のかな。

他人に何かされて嫌で死にたいっていうよりは

自分ができなかったことの方が強く残っている」

 この子に対して、大森靖子が「言葉がきれいすぎて、やさしすぎて、相手の事情とか考えすぎて、私だったら、『先生。クソがっ!』と言うところが、『事情があるんだろうな?』と考える子なんだろうなと思う。やさしい」

と感想を述べる。

 栗原類は、ある日記帳を書いた子にこう伝える。

「死にたいっていう気持ちを書いてくれたというのは、僕は純粋にすごいことだと思います。

やっぱ、いろいろな人たちは『死にたいって言っちゃダメだよ』というふうになるかもしれないけど、本当に1日に一回、何でも良いから、『あー、死にたい』と書いたり、言うルールを作っていくと、気持ちはどんどん楽になっていくと思いますね」

 番組を見ていると、

「学校に行きたくない『あるある』」

が数多く出てくる。

 ある日の、ある子の日記。

「4時間目が終わる15分前になるとお腹が痛い。

お昼休みが始まって

ご飯を一緒に食べないといけないから。

一緒に食べる

決まった友だちがいないから。

1人はさびしい。

嫌だ。

友だちとが良い。

今年は3人グループで一緒にいて、

私は話しかけるのが苦手。

気付いたら

他の2人で行動してて、私は1人。

就学旅行の移動のバスも、学園祭のイベントも

その2人で出てて、私は1人。

それがすごく辛い。

(中略)

でも、何で私、友だちのはずなのに、

こんなに話しかけるのに気後れしちゃうんだろう。

こんなにエネルギーを使うんだろう。

(中略)

私が絶対いなきゃいけない

居場所があったら良いのに。

 この投書に対して、出演者からは自分の体験に裏打ちされた共感の言葉が続いた。

「居場所なかったなあー、俺も」

「先生から、『はいっ2人組になって!』と言われたときの(顔が青ざめてサーッと)・・・」

「「地獄ですよ。授業の移動時間でも3人グループでも、ずーっと下手をこかないように空気を読み続けるって、すごいエネルギーを使うのもわかる・・・」

 当人の気持ちになって「寄り添う」という言葉は、言うは易し、だが、本当に修羅場を経験した人間だからこそ言える言葉がある。

 それを出演者たちが丁寧に口に出していた。

 番組のホームページに行くと、「相談窓口」とか「よりそいチャット」とかに行けるようになっているので、ちょっと誰がに何かを伝えたいなーという人がいたら気軽にやってみたらどうだろう?

 どんな小さなことに思えても、誰かに聞いてもらえたら、ココロがすーっと軽くなるから。

 じゃあ、今夜、10時にNHKのEテレを視聴するか、番組ホームページで見てみよう。

 8月31日の夜に、一人じゃなくって、誰かが君がいま悩んでいるのと同じようなテーマで話をしてくれるなんて、どんな話が聞けるのかちょっと楽しみじゃない?

 さあ、今夜の生放送を静かに注目しよう。

生駒里奈が伝えた「つらさ」

 2019年8月31日の夜。

 小学生最後の夏休みを過ごす「つらさ」を書いた子の「日記帳」を読み上げたのが生駒里奈だった。

 周囲から、本当の自分とは違う「優等生」というレッテルを貼られているという告白の文章を読み上げた後、涙を浮かべてかつての自分の境遇と重ねていた。

「周囲から『生駒ちゃんは大丈夫だね?』と言われる。大丈夫じゃないんですよ。だけど、大丈夫じゃないということを相談できる周りでもなかった。私なりに考えた方法は、自分だけに話しかける・・・。それは乃木坂になって、アイドルになってからの私だったんですが、『いつか時が来たら、寝て起きて、寝て起きて、半年経っているから・・・、半年後まで、がんばろう』・・・」

 そうやって、「つらさ」から抜け出せた時期の自分について語っていた。

 今を生きる子どもたち。かつての子どもたち。すべては今につながってる。今を生き抜くための、いろいろな人たちの経験が長い夜に披露されている。