今年も攻めたNHK『バリバラ』。「24時間テレビ」ならぬ「2.4時間テレビ」が追求した”自由”

NHK-Eテレ『バリバラ』「2.4時間テレビ 愛の不自由、」HP(筆者スクショ)

#バリバラ

 『バリバラ』の番組スタッフがツイッターで呼びかけた感想コメントが生放送で次々に画面の下に表示される。

 その文章は最初からタブーに挑戦しているような、なかなか他の番組では見られないようなものだった。

「挿入して達する事だけがSEXではない」

 テレビ番組で流れるものとしては過激とも言える言葉だが、これは最初のVTRの後でのスタジオでの会話のやりとりを受けたものだった。

 

 最初のVTRでは、中途障害で下半身や両手がまひした女性がそれまで恋人として結婚する予定だった男性とのセックスで「感じない」状態になってしまったという体験を、本人も登場する再現ドラマで説明していた。女性はその後、恋人だった男性とは別れてしまったが、「触られても感じない」状態になったことは言えないままだったと告白した。

 それを受けて、スタジオではタレントのYOU、エリイ(アーティスト集団「Chim↑Pom」メンバー)、山村茜(現役風俗嬢アイドルで多くの障害者を接客した経験をもつ)ら女性たちが中心になって会話が進んだ。

 口火を切ったのはエリイだ。

(エリイ)

「セックスって、こう挿入してイクだけじゃなくて、目で見たりとか、そういうのもあるから、全部、イク、というのが正しいことじゃないとは私は思っていて、これでもったいないなと思った」

 この後で、女性たちの経験談に花が咲く。

(エリイ) 

「本当に健常者でやっていても、本当に・・・」

(YOU)

「あるものね」

(エリイ)

「全然・・・」

「あと言いにくい」

(YOU)

「あるよねー?」(と山村に)

(山村)

「下手な人とかいるし」

(YOU)

「なんか、合わないとかあるよね」

(エリイ)

「普通に言いにくい話ですよ」

 聞いていると、思わずドキッとするような表現を女性たちがすることに思わず、ひるんでしまいながら聞いてしまう。

 しかし、タブーに挑戦しながら2時間24分間、大真面目に「愛」と「性」の話を中心に放送が続いた。

『24時間テレビ』のパロディーを『バリバラ』で放送するのは4回目

  NHKがEテレで放送している『バリバラ』は「障害者情報バラエティー番組」と銘打ったレギュラー番組だ。

  毎週、木曜日の午後8時から30分間、Eテレで放送される。再放送が日曜日の深夜0時(土曜日の深夜24時)。

  日本テレビの『24時間テレビ』の放送にタイミングを合わせて、そのパロディー番組を生放送したのが2016年8月。

  出演者が日テレの”24時間Tシャツ”をもじった黄色いTシャツを着て登場し、『24時間テレビ』にも登場した重度障害者が『バリバラ』のスタジオにも出演して、感動物語に仕立て上げられた内幕を明かすなど、障害者を感動物語の材料にする「感動ポルノ」を批判的に伝えて話題を呼んだ。

  この出来事の後で、一部の人たちにだけ知られた存在だった『バリバラ』の名前は一気に知られることになった。

  

  翌年以降も『24時間テレビ』の放送にタイミングを合わせて、「生放送」してきた『バリバラ』。

  2019年はまた一歩パワーアップして、”攻め”の姿勢を見せた。 

  実はタイトルにその姿勢が表れている。

バリバラ 【生放送】2.4時間テレビ 愛の不自由、

 筆者は最初、番組名を何と読むのかまでわからなかったが、番組を視聴して理解できた。

「ばりばら なまほうそう にじゅうよじかんてれび あいのふじゆうてん」

 「、」は「てん」と読む。となると「不自由、」は「不自由てん」

=「不自由展」

 となれば、勘の良い人ならすぐにわかるだろう。愛知県で物議を醸して中止になった「あいちトリエンナーレ」の”表現の不自由展・その後”問題を意識して、番組の名にしているのだ。

 つまりこの番組は、日本テレビの『24時間テレビ』や同様なマスメディアの障害者などに対するステレオタイプな見方に対して挑発しているだけではない。もちろん、そうした障害者の表象の仕方について問題提起する要素もあるにしても、狙いはもっと深いものだ。

 ”表現の不自由展・その後”を中止に追い込んだ考え方や中止に追い込まれてしまった側の考え方、それらを相手にしようという制作意図なのではないのか?

 もちろん、そういう意図がどこまであるのかはタイトルだけではわからない。仮にそういう意図があったとしても番組制作者がそうだとは言わないに違いない。

 ただ、ここでは、そうしたとても大きなテーマについても、視聴者に考えさせようとしたのではないか、という視点も交えて、この「2.4時間テレビ」について、内容を見ていくべきだという指摘だけしておきたい。

 番組冒頭では、ゲストの山村茜を紹介するとき、司会者の山村シュウは「セクシービームだして!」と依頼して、山村はシャツの胸元を開けてシールをつけた豊満な乳房をチラ見させる。それに男性の障害者が性的な視線を送っているのを映し出していたが、自分の性について、格好をつけずに本音で話し合おうという番組の姿勢がうかがえた。

 脳性まひの大久保健一(アイドルと旅が趣味)がカメラに向かって絶叫したのは『24時間テレビ』をたぶんに意識した言葉だった。

「哀れむような愛ならいりません!地球を救う愛と言われてもピンと来ません!私を救う愛がほしい!!」

 こうしてスタートした「2.4時間テレビ」。

 

 これまでにない、ちょっとエッチな話題や笑いを織り交ぜながら、番組は進行していった。

「自由な番組」

 細かいぞれぞれのコーナーの紹介はまた別の機会に伝えることにしたいが、番組が進行するにつれてツイッターではこんなつぶやきが相次いだ。

「自由な番組だなあ」

 性について、つまり一般的には下ネタと言われる話題で、障害があろうとなかろうと人間同士は同じ面があるよね、という「あるある話」が頻繁に登場した。

 地上波のテレビという表現の場での「自由」は、性や愛について障害があってもなくても語る自由と、重なる面があるのかもしれない。

 『バリバラ』の番組ホームページで現在、公開されている内容は以下の通りである。

これまでバリバラが伝えてきた中で多かったテーマが恋愛やセックス。感染症リスクで“チューするのも命がけ”、事故で足が開かなくなり“23年セックスレス”、自分が“性の対象として見られていない”寂しさ・・・。その愛の形はいま多くの人が直面している課題にもヒントを投げかけてきた。そこで、多様性の時代2020年を前にした夏の終わりの深夜、アーカイブ映像を軸に生放送で本音トークを展開!愛はワタシを救う?

出典:NHK『バリバラ』ホームページ「【生放送】2.4時間テレビ 愛の不自由、」

 

 「2.4時間」は、見ていて「あっという間」という印象のうちに終了してしまった。

 ホームページに「再放送はありません」と書いてあるのがなんとも恨めしく思える。後日アップするとのことだが、内容については一部だけ紹介されている。

 

地球ではなく、私を救う愛がほしい・・・障害者“愛の不自由“を考える

すべての生きづらさを抱える人にとっての“バリア”をなくすことをめざすバリアフリーバラエティー『バリバラ』。放送開始以来、障害者の本音を伝えてきた中でも多かったテーマが不自由な恋愛やセックス。「下半身がまひしてセックスレス」「発達障害で“好き”の意味がわからない」「夫が結婚したあとに女性になった」。さまざまなカップルがたどりついた“セックスにこだわらないスキンシップ”や“結婚にとらわれない家族の形”は不妊や未婚などの課題にもヒントを投げかけてきた。そこでバリバラはなぜか障害者が注目される8月最後の週末、豊富なアーカイブ映像で生トークを展開!多様性の時代を前に恋愛とセックスを考える。

出典:NHK『バリバラ』ホームページ「【生放送】2.4時間テレビ 愛の不自由、」

 筆者は『バリバラ』がときおり放送する「性の悩み」などの特集には、かなり早い時期から注目して評価してきた人間だ。

 性の悩みは、当事者が真剣であればあるほど、切実だし、他方で人間的なおかしみ、ユーモアを伝えてつながっていく材料にもなる。

 性の悩みと愛の悩みは切り離すことはできず、国籍や性別や年齢、障害の有無を超えて、人類共通の普遍性を持つともいえるかもしれない。

愛されないのは、障害のせい?あなたは障害者と付き合えますか?

スタジオには「地球を救う愛と言われてもピンとこない、哀れむ愛ならいらない、ふつうに恋愛がしたい」という脳性まひの男性や、発達障害で女性との距離感に悩む男性など愛に不自由を感じる障害当事者が登場。多くの恋愛を見てきたYOU、ジミー大西、現代アーティスト集団「Chim↑Pom」のエリイ、元AV監督でムコ多糖症のにしくん、現役風俗嬢アイドルで多くの障害者を接客してきた山村茜などと愛の本音トークを展開する。また「車いすという個性を生かして恋愛したい」「体が動かずセックスのやり方に悩む」という人たちとの生電話相談や、体を動かしながら「LGBTQ」など性の多様性を学べるジェンダー体操など多彩なコーナーを展開する。

出典:NHK『バリバラ』ホームページ「【生放送】2.4時間テレビ 愛の不自由、」

 『24時間テレビ』のキャッチフレーズ「愛は地球を救う」が、『バリバラ』では「性愛」や「下ネタ」が「地球を救う」という、笑いを含んだ変容を遂げたと言える。

 テレビ番組を研究してきた筆者から見ても、『バリバラ』の「2.4時間テレビ」は相当に奥が深い。

 また折りをを見て、この番組を取り上げたいと思う。