”吉本問題”を見て自分を振り返る 夏目三久が語ったテレビ報道のこと

7月24日 TBS『あさチャン』(筆者が自宅のテレビ画面を撮影)

 吉本興業をめぐる、芸人と会社についての一連の報道を見ながら、「自分」と「会社」などの職場の問題を重ねあわせて、いろいろと考えている人は少なくはないだろう。筆者もその一人だ。

「自分は会社にどれだけ大事にされているのだろう?」

「自分の仕事って、社会でどれだけ役に立っているのだろう?」

 筆者だけなのかと思っていたら、今朝の情報番組で、番組に出演するフリーアナウンサーの夏目三久もそうだったのかとわかる一幕があった。

 夏目がメインキャスターを務めている今朝のTBS『あさチャン』。

 かなり長く、吉本興業の昨日の岡本社長の記者会見について伝えていた。

 そのコーナーの終わりだった。突然、夏目が言いよどみながらぽつりぽつりと語り始めた。

私たち、きょう、長い時間をつかって、芸人さんと吉本興業の労働環境のことをお伝えしてきましたが、・・・これについては様々なご意見があると思いますし、ま批判もあると思います。ふー、あのー・・・・。

 夏目三久は生放送でどんな時も沈着冷静な人だ。バランス感覚も飛び抜けていて自分を客観視しながらキャスターとしての仕事をこなしている。その彼女が珍しく、あれ、言いにくそうだなあ、と思いながら、その場面を見ていた。

 そうしたら、彼女は突然、吉本興業の話から別の話題に振ったのだ。

この吉本の問題をめぐっては・・・先週からお伝えしてきましたが、同時に参議院選挙が行われていて、参議院選挙の投票率が過去2番目に低かったということもありました。きょう新たにわかったのが、18歳、19歳の投票率が・・・31%あまり。これ、前回の参院選より14ポイントも低いということで、これ、由由しき事態だと思うんですよね。日本の未来を背負う子どもたちが政治に、関心を、失っているというの、これ、・・・、おおいに私たちの報道の仕方に、問題があると思っていますし、私も、このあと、スタッフとしっかり話していきたいと思っています。・・・

吉本の話と、参議院選挙の話は直接はまったく関係がない。

 それなのに、一連の「お笑い芸人」と「会社組織」の会見などのVTRを見た後で、夏目は「自分の番組を含めて、テレビ報道が今回の参議院議員選挙での若者の低い投票率の責任があるのではないか」と考えたようなのだ。

 筆者には、そうした夏目の気持ちが理解できる。一連の吉本興業の問題は、「お笑いのプロ」であるはずの「芸人」はどこで「プロらしさ」を発揮しているのか、という議論になっているからだ。労働環境や報酬などもそれに付随してくるものだ。夏目はふと、芸人をめぐる「プロ論議」を見ていて、「テレビで伝える報道のプロ」としての自覚を刺激されたのではないか。

 だからこそ、「日本の未来を背負う子どもたちが政治に、関心を失っている」ということでの責任を感じている。

「おおいに私たちの報道の仕方に、問題があると思って」

いるとし、

「スタッフとしっかり話していきたい」

とまで語っている。

 吉本興業の騒動をめぐっては、テレビの生放送で、キャスターを務める加藤浩次が「こんな会社にはいられない」と語るなど、いろいろな人たちが「プロとしての自分の仕事」を見つめ直す動きにつながっている。

 もちろん、くり返すが、夏目三久は吉本興業の問題とは直接は関係がない。それでも彼女の「プロ意識」に火をつけ、もし明日から『あさチャン』の伝え方が今のままではマズいと考えて、改善されていくのであれば、それにこしたことはない。

 この数日、宮迫、松本、加藤らがテレビなどで「生で伝える」ことの迫力はテレビ報道に携わる人間ならば、刺激を受けないはずはない。夏目もおそらくそうしたことを感じたのではないか。

言うまでもなく、今回の参院選のテレビ報道はかつてないほど淡白なものだった。筆者も研究者の端くれとして分析中だが、そもそもテレビ番組には政治を伝える熱が従来にも増して乏しかったことは誰の目にも明らかなことだ。

 吉本をめぐる問題は、思わぬ方向で、芸人が出演していない他のテレビ番組にも影響を生み出していきそうな予感がする。