太田光が自ら語った「ネットでなくてテレビだからこそ伝えられること」~落合陽一との『サンジャポ』対談~

6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)

 6月2日の『サンデージャポン』では、放送法が改正されてNHKが「放送」と同時にネットでも番組配信をすることができるようになったことと「若者のテレビ離れ」が進む中で、メディア・アーティストの落合陽一(31)と爆笑問題の太田光(54)との対談が放送された。

6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)
6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)

 このコーナーは、太田に対して落合が質問する形で、「今、爆笑問題がデビューするなら、テレビに出るか?」と質問した。

(落合)

「爆笑問題のフレーズとかって、TVで流せないことがいっぱいで言いたいことがあるのでは?」

(太田)

「そんなことない。まったくない」

(落合)

「もっとネタの振り幅を選びたいなら、テレビなのかなと今思った(ので、質問した)」

6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)
6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)

(太田)

「TVとかネットとか全部・・・。

(デビューした)当時もそうだけど、テレビもあったし、ライブもあったし、あらゆる・・・。

世に出たいちいう人はあらゆるものを使えばいいと思う。

ただね、俺らが若手の頃、やっぱりなかなかテレビで放送できないネタをやっていたのを今度、そういうのを喜ぶ客が来る。

俺らもテレビで売れていないものだから、今度は卑屈になって、あえて放送禁止ライブみたいなのをやるわけ。

それを客が求めてくる。それもつまらなくなってくるんだよね。だんだん・・・。

何でもありとなってくると、表現が単純になって最終的にはチンチン出すしかなくなってしまう」

(落合)

「今のYouTubeのネット炎上のたぐいですね?」

(太田)

「だから、バカッターだがらさ、もともとさ・・・。

俺にはたぶんそういう制約は必要だと思う。

じゃないと何でもやっちゃうから」

(落合)

「だから”制約芸”としてのテレビというところも?」

(太田)

「そこで工夫するのが実は面白くて・・・。

本当は同じこと言っているんだけど、ちょっと表現を変えるだけで、すぐ視聴者にスッとこう入っていっちゃう。

だけど、実はそれは言っちゃいけませんということは言わなくても表現を変えるだけで・・・。

それが実は芸として面白い」

 ここで太田は、テレビには制約があることで、表現の「工夫」をしなければならず、そこが”芸”として面白いと表現している。太田の「芸人」つまり「表現者」としての真骨頂を垣間見ることができる。

 この後、落合は太田に対して、地上波テレビというメディアについて可能性を尋ねている。

 

(落合)

「それはすごくわかりやすい。視聴率を気にしながらテレビというのはどう思いますか?」

(太田)

「いや、もうずっと気にしてますけどね・・・」

(落合)

「たとえば、そえがネット番組とかなら課金でユーザーなどからお金をもらうとかNHKなら可能だけど、広告モデルを(民放)テレエビがやっている」

(太田)

「テレビの魅力ってのは、『テレビがつまらなくなった』という意見はあるけれど・・・。

視聴率、ゴールデンで全国放送で1%というと100万人は見るわけですよ。

(視聴率)1%の番組なんて打ち切りですよ。

そう考えるとこれだけぜいたくな・・・。たとえばこの番組だって、たいした番組じゃないかもしれないけれど(スタジオ笑い)、

こんなぜいたくな・・・カメラ7台くらい使ってさ・・・。技術はみんな一流ですよ。

これだけの出演者がいて、なおかつカメラマンも音声さんも美術さんも超一流・・・」

(落合)

「コンテンツのクォリティはネット番組に比べて、圧倒的じゃないですか。地上波(テレビ)って」

6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)
6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)

(太田)

これを毎週できるってのはやっぱテレビの魅力であって、それが僕は、多くの人に僕らは、何か表現したいという人は多くの人に見せられるというのがあるから・・・。

そのへんの、衝撃度の自己満足のバカじゃないからね

(スタジオ笑)」

 この発言に太田の表現者としてのプライドと、地上波テレビへの愛着が窺える。この後、議論は地上波テレビとネットテレビとの対比に話題が移っていく。

(落合)

「そういう系譜でテレビに来られた太田さんだからこその発言ができると思う。それが今聞いてみたくて・・・。

今は『テレビ離れ』とか『ネットの方が・・・』という話もあるんですけど、テレビはテレビでめっちゃクォリテォに金がかかっている。

ネットテレビに比べて、圧倒的に良いところもいっぱいあるんですけど、そこを自分で言うチャンスって滅多にないじゃないですか。そういうところ聞いてみたいなと思って。僕も1%で100万人が見ているというのはめちゃくちゃ重要だと思っていて、社会全体で考えなきゃいけないこと・・・。テクノロジーで今からやってかなきゃいけないこと、どうしたらいいかというときに。

1千万人が動くにはやっぱりテレビに出ないとダメだなと思うし、ネットが1千万人動くようにやったらどうなるのかあとは思うんですけど」

6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)
6月2日TBS『サンデージャポン』落合陽一・太田光対談(筆者がテレビ画面を撮影)

(太田)

「そうだね。いずれそういう時代は来るかもしれないね。俺が現役でやっているうちはまだそこまではいかないと思うね」

(落合)

「そう思いますか? でもまだ30年くらい現役されるんじゃないですか?」

(太田)

「ネットフリックスなんか見ていると、映画より全然お金かけている」

(落合)

「ネットフリックスはお金、めっちゃかけていますね」

(太田)

「だから、もしかしたら近い時代には来るのかも・・・」

(落合)

「あれはあれで日本のテレビ産業全体と同じくらい金かかっていますから

(太田)

まあ、そういうことですね」

 最後の結論としては、現在の映像コンテンツに関する限りは地上波テレビほどクォリティが高いlコンテンツを送り出せるメディアは(日本の)ネットテレビにはない。だが、海外ではネットフリックスという莫大な資金流力をもって映像コンテンツを作っている会社もあって、長い目で見ると、そういう流れに向かっていく、というのが二人の対談の結論だった。

 筆者はテレビ局出身でもあり、テレビ局の今後については研究者としても注目している。筆者が編集長を務める放送批評誌『ぎゃらく』(発行・放送批評懇談会)でも「テレビの今後」は毎回のように大きなテーマになっている。

 今回、太田や落合が発言した内容は、『ぎゃらく』が「テレビ局の今後は何が必要か」を尋ねたドワンゴの夏野剛社長にインタビューした内容とも重なる点が多いことは興味深い。東洋経済オンラインに記事が掲載されているので共通点を見つけることができる。

一方で、日本のドラマは面白いし、クオリティも非常に高い。ネットより番組コストははるかに高いけれど、制作効率が悪いのではなくクオリティのいいものを作っているためです。4K・8Kが進むと必要になる高精細に堪えられる照明や美術はもちろん、音声や編集も日本の放送局は世界トップクラスです。演出力も含め、こうした制作力を放送のためだけに使っているのは本当にもったいない。

制作力があるのは放送局でなく制作会社だ、などと穿ったことを言う人もいますが、お金を出すというプロデュース機能を含めた全体の制作力では、日本のテレビ局は絶大な力を持っています。これを解き放つような放送法の改革や放送事業者自身の経営改革はいち早くやるべきです。

出典:東洋経済オンライン(『ぎゃらく』からの転載)「 日本のテレビ局に圧倒的に足りない経営改革 ドワンゴ夏野剛社長『すごくもったいない』」

 太田が強調する地上波テレビの影響力の大きさと、制約があるがゆえにかえって「芸」が面白くなるという考え方。

 地上波テレビを精一杯楽しんでいる太田光の認識が示された。

 当代一流の芸人といってもいい太田光はまだまだテレビの力を信頼していることがわかった。