「令和」の”国力”をアップさせるためサンデーモーニングが投げかけたこと

5月5日 TBS『サンデーモーニング』から「風をよむ~”令和”の『国力』』

 5月5日、「令和」の時代になって初めての日曜日。

 日曜の午前中にテレビで放送される報道番組・情報番組は、この一週間の出来事をゆっくり振り返りながら、世の中のことを考えるのに適している。

「”令和”というのはどんな時代になるのだろう?」

「”令和”の課題は何なのだろう?」

 そういう思いで各局をザッピングしていたら、あまり、そうした期待に応えてくれる番組が見当たらない。

 テレビの報道番組・情報番組を研究している筆者のような人間としてはこれはゆゆしき事態ではないか。報道機関であるテレビの劣化を意味するからだ。

 そう思って、以下、それぞれの番組を振り返ってみることにした。

●日本テレビ『シューイチ』

 これは新しい天皇陛下の即位と令和フィーバーを映像でまとめただけで、これまでのニュースなどで同局で放送された以上の域を出ていない。

 だが、情報番組というのは見ていてトクをするとか、タメになるとか、「プラスα」が大事なはずなのに、残念ながら筆者には見つけることはできなかった。2時間半ほど放送していて、これでは内容に乏しい。

●テレビ朝日『サンデーLIVE!』

 4日に皇居で行われた一般参賀について、過去の映像や画像を駆使して、歴史を振り返っていた。

 現在は子どもも入ることができる一般参賀だが、かつては子どもは入ることができなかった時期があり、皇居前の広場を一般の人たちが足を滑らせたりしないようにと、昭和天皇の指示で「滑りにくい庭」にしたというエピソードなどが紹介されていた。

(1969年にドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、進軍』の主人公の奥崎謙三がパチンコ玉で昭和天皇を狙った狙撃未遂事件があったが、)このパチンコ玉事件の後で防弾ガラスが入ったという。

 一般参賀の歴史を振り返っただけのコーナーだったが、見ていて「へえー」というものがあって、「プラスα」があった。

 とはいえ、「令和はどんな時代に?」「令和の課題は?」という点に応えてくれるものではなかった。

 その点では、以下の番組が見応えがあった。

●フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』

 皇室の問題にくわしい識者をスタジオに招いて、皇位継承問題について突っ込んだ議論をしていた。

 スタジオに招かれていたのは以下の3人である(以下、年齢、肩書きなどは番組内での字幕をそのまま掲載する)。 

・櫻井よしこ(73)国家基本問題研究所理事長

・片山善博(67)早稲田大学公共経済大学院教授

・本郷和人(58)東京大学資料編纂室教授

5月5日 フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』
5月5日 フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』

 注目したのは、強硬な憲法改正論者で知られる櫻井よしこ氏が、皇位継承問題で以下の発言をしていたことだ。

(櫻井)

「悠仁さまが天皇になられるときの日本の皇室を考えてみると、皇室の方が誰もいなくなってしまう可能性が大きいですね。

 だって女性の方は結婚なさって、皇室から離れるわけですから。天皇陛下おひとりが巨木のように立っている、誰も天皇陛下をお守りする方がいないということで、皇族の方々の数の減少はそういう意味において、ものすごく深刻なんですよ。

5月5日フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』櫻井よしこ氏
5月5日フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』櫻井よしこ氏

 だって2700年になんなんとする歴史を本当におひとり、悠仁さまがたった一人で背負われていく形になってしまう。

 ただ、なんとかしなきゃいけない、というのは大前提なんですが、その時にどういうふうに、なんとかするのか。

 女性宮家、女性天皇を認めるのか、女系天皇を認めるのか、と意見が分かれる。」

 保守の論客である櫻井よしこ氏がきちんと整理していたので、議論は非常にわかりやすいものになっていた。

 これに対して歴史学者の立場から示した本郷和人氏のコメントも興味深いものだった。

●フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』(づづき)

(本郷)

「天皇の歴史は非常に長いです。

(歴史から見ると選択肢の)どれでもOKなんです。

5月5日フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』本郷和人氏
5月5日フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』本郷和人氏

 女系天皇というのはいらっしゃらなかったけれども、曲学阿世と言われてしまうかもしれないが、(どの立場も)支援はできる。

 中には臣籍降下(皇室がその身分を離れて民間人になること)されていった人、臣籍になっても天皇になられた人もいる。いろんな事例をもってくればどれも可能だと僕は思います。一番、大切なのは国民がみんなで考えること。それで納得すること。」

 歴史的にみてもいろいろなケースがあったので、「どれもOK」という本郷氏の説明は、大変わかりやすいものだった。

 もちろん「女性天皇」「女系天皇」などをめぐっては、いろいろな意見があるし、立場によって見解も異なるが、この番組がそうしたいくつかの意見をタブー視せずにテレビの視聴者に示したという点では意義深いものだった。1時間20分の番組が短く感じられた。

 さらに”皇室”のあり方だけでなく、”社会全体”を見据えて、「令和という時代にどうなっていくのか」に視野を広げていたのが、TBSの『サンデーモーニング』だった。

●TBS『サンデーモーニング』

 この番組は毎回、スタジオに識者が登場していろいろな立場でコメントする。皇位継承問題についても触れていたが、筆者が特に注目したのは、一番最後のコーナー「風をよむ」である。

 この「風をよむ」のコーナーは視聴者に「いま現在」がどういう時代状況にあるのかを大きな歴史的な視点で理解させようとしている。現在のテレビの報道番組や情報番組が忘れがちな「大所高所」の視点があるので筆者も感心させられることが少なくない。

 この日のテーマになったのは、”令和”の「国力」だった。以下、その途中から紹介したい。

「(ナレーション)その今後を考えるとき、思わず不安を覚えるデータがあります。平成元年、世界の企業の株式の時価総額トップ50では、32社が日本企業=字幕[トップ5を日本が独占]」(「週刊ダイヤモンド」2018.8.25)、

『サンデーモーニング』の”風をよむ”より
『サンデーモーニング』の”風をよむ”より

平成30年は、トヨタ自動車1社のみ=字幕[35位]・・・

『サンデーモーニング』の”風をよむ”より
『サンデーモーニング』の”風をよむ”より

 こうした現状を寺島実郎さんは・・・

(寺島実郎・日本総合研究所会長)

 『平成がスタートした頃、(日本が)世界に冠たる工業生産力をリードする製造業に企業群を育てたのは確かだった。

 ところがインターネットの登場をテコにして新しい企業群が生まれてきた。

 世界の流れが変わっていく中で、日本は“工業生産力の優等生”としての枠組みから、なかなか出られなかった。』

(ナレーション)

 さらに今後を不安視させるのは急激な人口減少。日本の人口は令和35年(2053年)に1億人を割り込むと予想される(国立社会保障・人口問題研究所 2017年推計)など、国力の低下が懸念されています。

 ”そこから脱する鍵はアジア”と寺島さんは言います。

(寺島実郎・日本総合研究所会長)

『多数のアジアの人を引き込んで、物流・人流・お金の流れ、日本の活力をもっと生かさなくてはならない。

『サンデーモーニング』での寺島実郎さん
『サンデーモーニング』での寺島実郎さん

 アジアのダイナミズムをどれだけ賢く吸収して、日本という国を発展させていくのかは令和に変わった日本の大きな課題になってきているのは間違いない。』」

 昨年、”外国人材”をこれまで以上に活用するための法律が成立したものの、実際に外国人労働者が日本社会で働いていくためには法律などの整備が必要だと指摘されている。日本の国力をアップさせていくためには”令和”にはそうした課題が残っていることを改めて示した。

 さらに・・・

●TBS『サンデーモーニング』(つづき)

(ナレーション)

 そして平成の時代に進んだIT革命。さらにAI、人口知能の進化によって、今後、私たちの仕事の多くが奪われるのではないかt9おいう不安もあります。

 こうした令和の時代について、AI研究の第一人者、国立情報学研究所教授の新井紀子さんは・・・

『サンデーモーニング』での新井紀子教授
『サンデーモーニング』での新井紀子教授

(新井紀子教授)

 『昭和、平成の時代に築き上げてきた”働き方”が根底から覆っていくのだろうなと。

 『AIに出来ないことができる人』は引く手数多になるのだけれども、

 『AIに出来ることしかできない人』はなかなか良い職に就けない。

 その格差が広がる社会になるんじゃないか。

 令和の時代の一番大きな課題だと思います。』

(ナレーション)

 テクノロジーが生み出す新たな格差を前に新井さんは・・・

(新井紀子教授)

 『日本は人口が減っている中でも国力を上げていく可能性というのは”人材の質”。量ではなく質にかかっている。

人材育成ができないと、デジタルの時代を日本がどうやって迎えればいいのか。本当に誰も見通しが立たない。』

『サンデーモーニング』での新井紀子教授
『サンデーモーニング』での新井紀子教授

(ナレーション)

 令和の時代の新たな課題にどう向き合っていけばいいのか。

 日本人の知恵が試されます。」

 『サンデーモーニング』は筆者が数多く見たテレビ番組の中で、”令和”の時代がどうなっていくのか、あるいは、どういう課題があるのかを明確に示した、数少ない番組だったと言っていい。

 元号が変わって世間に広がっている「浮かれ気分」をそのままお茶の間に垂れ流しているようなテレビ局や番組ばかり目につくが、こうした「時代」の課題をきちんと忘れないで視聴者に提供する番組はとても大切だ。

 ふだんはそんなこと考える機会はあまりないが、元号が改まった機に改めて考えてみたい。日本の「国力」は今どうなりつつあるのだろうか。

5月5日 TBS『サンデーモーニング』風をよむ
5月5日 TBS『サンデーモーニング』風をよむ