平成最後の「報ステ」が伝えた”陛下の3つの服装スタイル”

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから

 筆者はテレビのニュース番組やドキュメンタリー番組など「テレビ報道」の研究者である。

 平成から令和へと元号が変わったこの時期にテレビが何を伝えたのかをウォッチしている。この2,3日、テレビ民放各社は平成時代の天皇・皇后両陛下の映像を振り返ったり、あちこちの改元フィーバーを生中継などで伝えるばかりで、表面的で「底の浅い」報道に終始していた印象が強い。

 逆に、「より深い」報道というのは、皇室に対しても、皇室をとりまく環境、政治、官僚、メディアなど様々な立場の人たちがどんな行動や主張をしてどんな影響を与えてきたのかを掘り起こし、それを伝えていく作業のはずである。見ている人間に、新しい知見や何か「ひっかかり」を残すような印象的な報道が求められる。

 今回の改元というタイミングでは、「象徴天皇」について視聴者に考えさせてくれる報道こそが視聴者が求めるものであろう。その意味では「手放し」で「ありがとう」という人々のうわべの反応ばかりを伝える報道が多い現状では、テレビの今後は心もとない。

 そうしたなかで多少は「ひっかかり」を残すようなテレビ報道についてお伝えしたい。

独自の取材で番組の問題意識を感じさせたのがテレビ朝日「報道ステーション拡大スペシャル」だ。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから

 30日夜の民放各社のニュース番組が「お祝いムード」を伝えるのに終始したのに対し、この番組では、宮内庁の元侍従長らの証言を交えて、陛下の被災地訪問の「服装の変化」に注目して報道した。

 1986年、当時、皇太子だった前天皇陛下は伊豆大島の三原山の噴火では被災者を見舞った際に皇太子妃だった美智子さまにならって膝をついて被災者と向き合って話をする形式を採用された。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1986年の画像
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1986年の画像

 服装にも変化があって、前天皇陛下は即位された後の1991年の雲仙・普賢岳の噴火では仮設住宅の人々の訪問時に、公務では初めてワイシャツ姿で登場された。内閣総理大臣による被災地訪問も、すでにスーツ姿はかえってそぐわないというのが次第に国民の常識になってきているなかで、被災した人々とどのような服装で会うのが望ましいのかを陛下も考えられたのだろう。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1991年の画像
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1991年の画像

 

 この被災地訪問のスタイルが定着するのかと多くの人たちが思っていた。

 ところが1993年の北海道南西沖地震の被災地である奥尻島ではまた違うスタイルを見せられた。

 被災者のダブルのスーツ姿だったのだ。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1993年の画像
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1993年の画像

当時の宮内庁の内部からも「威厳を損なう」という反発や批判的な声があったことを元職員が証言した。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから元宮内庁職員の証言
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから元宮内庁職員の証言

 この年は、前皇后陛下へのバッシングを含めて「新しい皇室」に批判的な週刊誌の記事が相次いで、宮内庁職員とも確執が生まれていたという。前皇后陛下はストレスで倒れてしまい、一時声が出なくなるという苦境にも陥っていた。この時期に前皇后陛下が出されたメディアに対するコメントにも言及している。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから

 しかし、1995年の阪神淡路大震災へのご訪問では陛下はジャンパーにセーター姿で登場され、前皇后陛下も足早に避難所で次々にお声をかける様子が映像に残っている。「平成スタイル」の「象徴」の姿をお二人が確認をもって務めていらっっしゃる様子が映像からも理解することができた。

 これはテレビ報道の強みを発揮したケースと評価していい。これ以降、陛下がネクタイ姿で被災地を訪問することはなかった、と「報ステ」は伝えた。

4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1995年の画像
4月30日 テレビ朝日「報道ステーション」拡大スペシャルから 1995年の画像

 こうした変遷を映像と証言で見せた。 皇室についてはどうしても映像などが代表撮影などになりがちだが、局にある映像をうまく分析しながら、前天皇・皇后陛下の「心情」を察しようという姿勢がうかがえた。

 その他の民放のニュース番組を見ると、フジテレビが前天皇陛下・前皇后陛下の結婚にまつわる物語をドラマで再現するなど工夫はあっても、すでにかなり知られた話ばかりで内容的に新味に欠けたものが多かった。日テレ、TBSのニュース番組の特別版も独自の報道といえるものはほとんど見当たらないことは残念だ。そうした中での「報道ステーション」の報道は「象徴」であることの意味を問い続けた前天皇・皇后陛下の心情を「映像をもとにさぐる」という、テレビメディアの強みを発揮した報道をみせたと言ってもいい。他のメディアではなかなかできないテレビならではの画期的な報道だったといえる。