「ナベツネ盟友のあの人なら…」日テレ「イッテQ!」問題で聞こえる「もしも」の声 *社長会見後に追記

ついに出た!「イッテQ!」疑惑の第2弾

 しかも文春砲の記事では関係者が「捏造」という表現を使っている言葉が記事になっている。

 テレビ局にとって「捏造」という表現での記事が広く世に出されてしまうことは致命的だ。

 それだけ「捏造」という言葉はテレビ業界では強い響きを持っているため、記事にする出版社側も訴訟を起こされることも覚悟の上で報道しているはずだ。

「最大の問題は、番組が他国の祭り、文化を捏造したことです。もし海外メディアが韓国の祭りを東京で開催したら、日本人はどんな反応をするのか。そう考えたらいかに失礼かわかるはずです。それに番組によるでっち上げのケースは、『ラオス橋祭り』だけではなく、他国でも存在します。その一つが昨年2月に放送されたタイの『カリフラワー祭り』です」(番組関係者)

出典:文春オンライン

 日本テレビ側は「イッテQ!」の疑惑に関連して、今日発売の週刊文春に対して初めて「謝罪」といえる内容を示した。

「『カリフラワー祭り』や先にご指摘をいただいた『橋祭り』を含め、『祭り』企画において、番組の意向でコーディネート会社が主催者に提案したり、実質的な主催者となってイベントとして開催したケースがありました。

 また番組がコーディネート会社に支払っている撮影経費の中から、開催費用や賞金、参加費、協力費などが支払われていることもありました。コーディネート会社との長年にわたる協力関係に甘え、企画についての確認が不十分なまま放送に至ったことについて、当社に責任があると考えております。『祭り』企画に関しましては、現在、詳細を確認中です。今回のような事態を招きましたことを、お詫び申し上げます」

出典:文春オンライン

 こうなっては、事態はもう「詰んだ」と言える。たまたま「ラオスの橋祭り」だけ、いろいろな事情が重なって、「でっち上げ」というしかない事態になったのだと想像していた。日本テレビで、いかにバラエティー番組とはいえ真剣勝負を売りものにしている人気の番組で構造的な「捏造」「やらせ」などは起きるはずがない、と内心では信頼していた面がある。

 かつて筆者も働いていた日本テレビ。基本的にはすごく真面目な人が多い会社である。「イッテQ!」の「ラオスの橋祭り」について疑惑が発覚した際にも週刊文春をはじめ、報道メディアで「文春の取材が事実であるとすれば・・・」という条件つきで「捏造といえるのでは? 事実を検証すべきだ」などとコメントしたものの、まさか他にも出てくるとは想定していなかった。

 しかし、ラオスの橋祭りに続いて、タイのカリフラワー祭りまで、疑惑が広がったとなると視聴者への裏切りだという声は広がる一方だろう。

今日にも記者会見するか、番組内で責任者が謝罪すべき!

 そうでなければ、日本テレビは大久保好男社長の定例の記者会見は、この問題で質問攻撃にさらされてしまう。民放キー局の社長は毎月1回、新聞・テレビなどの各社の記者を集めて記者会見を行う。そこで「経営責任」を問われることになってしまう。早めに収拾しないと株主なども声を上げることになるだろう。先週、8日に日本テレビは決算会見で担当者が「イッテQ!」問題の質問を集中され、苦悶の表情を浮かべて「(日本テレビとして疑惑を否定した)発表文書がすべてです」と答える様子がテレビ朝日やフジテレビなどで放送された。

 今日、週刊文春の「イッテQ!」疑惑追及の第2弾が世に出る。報道各社は日本テレビに対して取材攻勢をかけることは必至だ。然るべき立場の人間が記者会見で現状を報告して釈明するか、あるいは、自局の番組内で相当の時間をとって謝罪しない限り、次に大久保社長が公開の場に登場する時には集中砲火を浴びることになってしまう。

 ましてや大久保社長は民放連(日本民間放送連盟)という民放業界のトップに就任したばかりで、こちらも月に一度の定例会見がある。現在、安倍政権の下で「放送制度改革」をどう進めるかで、NHK、民放、政府、経済界などでデリケートな議論が進められている真っ只中にある。そんな大事なときに民放連の会長が自社で起きた人気番組の不祥事で矢面に立たされるという事態になりかねない。そうなってしまえば、「イッテQ!」の問題は、民放業界全体にとってマイナス要素になってしまう。民放他社からも「日本テレビは何をやっているんだ?」という批判が強まることは避けられない。

疑わしいのは「祭り」企画だけなのか?

 週刊文春の記事を読む限り、日本テレビは「イッテQ!」の疑惑について、『祭り』企画について「現在、詳細を確認中」だとしている。

 今回の「イッテQ!」問題では、最初に文春がスクープした「ラオスの橋祭り」についても日本テレビは全面否定していた。ところが今度は「タイのカリフラワー祭り」の疑惑が出されて、やっと謝罪して詳細を確認することになった。週刊文春の報道をテレビ朝日やフジテレビなどが後追いする、という先週と同じ構図が続くのであれば、今日からワイドショーなどで「カリフラワー祭り」についての検証報道が各社で行われるだろう。

「イッテQ!」の休止もやむ得ない

 ことここに至ると、一度、「イッテQ!」の放送を休止してはどうだろうか。このまま、何事もなかったかのように何食わぬ顔で放送を続けることはもはや限界に来ていると思われる。何よりも、番組に出演しているタレントたちに不安が広がっている現状を見ても、「今の段階で何が分かっているのか」を視聴者に示すことが必要だろう。

何よりも検証番組を放送すべきだ

 まずは緊急の検証番組を放送するべきだと思う。過去を見ても関西テレビの「あるある大事典2」もデータ捏造事件(2007年)、東海テレビの「ぴーかんテレビ」での「セシウムさんテロップ」事件(2011年)を見ても、早い段階で検証番組が放送されている、日本テレビでも「バンキシャ岐阜県裏金誤報」事件(2008年)では比較的早い時期に検証番組を放送している。

まずは社内の検証チームが、続いて社外の検証チームが検証すべき!

 流れとしては、社内の検証チームが実態を調査し、その結果を内外に公表した上で、弁護士や研究者などからなる社外の検証委員会を立ち上げて緊急調査結果をまとめるべきだ。

 現状ではBPO(放送倫理・番組向上機構)から報告を求められてから動いているように見受けられる。それでは後手後手に回ってしまう。

「”あの人”が生きていればこんな事態はなかったはず」

 そんな声をこの1週間あまり、放送局の関係者からたびたび聞くようになった。

 「あの人」とは、ナベツネこと渡辺恒雄氏(読売新聞社グループ本社主筆)の東大の学生時代からの盟友であった氏家齊一郎氏だ。読売新聞の経済部長などを経て日本テレビの社長や会長などを歴任。民放連の会長も1996年から2003年まで務めた実力者だった。

 BPOを現在の形にしたのも氏家氏の尽力の賜物と言われている。民放業界で今も残る形で辣腕、剛腕を振るったカリスマ経営者だった。

 2008年の「バンキシャ岐阜県裏金誤報事件」では、「真相報道バンキシャ!」内でスクープとして報道した「岐阜県の裏金づくりに関与した」という建設会社幹部の証言がその後に虚偽だとわかると、社内で検証チームを作らせて真相究明に当たらせて、検証番組を放送。関係者も処分した。当時の社長を辞任させている。

 問題部分の放送が08年11月。09年1月にこの幹部が別の事件で逮捕されて日本テレビでの証言が虚偽という話が明るみになったのが2月。この本人に謁見して虚偽部分を確認した上で2月末に岐阜県に謝罪。3月はじめの「バンキシャ」で視聴者への謝罪と訂正の放送を行った。

 日本テレビの報道に対して批判が集中して一時は番組存続が危ぶまれたが、自ら迅速に対応したことで、「バンキシャ」は存続して高視聴率番組として健在だ。

 この一連の動きを経営の最高実力者として指示していたのが、氏家齊一郎氏だった。

 氏家氏は中曽根康弘元首相をはじめとして大物政治家とも頻繁に会食を繰り返し、「清濁あわせ呑む」タイプの民放経営者といわれるが、いざという時の危機管理能力は抜群だった。

氏家氏は2011年3月に84歳で亡くなった

 盟友と呼ばれた渡辺恒雄氏が今も健在であることから、今回の「イッテQ!」疑惑が明るみに出て、日本テレビが後手後手の対応で醜態をさらす事態になって「もし氏家さんが存命であれば・・・」という声を聞くようになった。

 日本テレビ関係者のみならず放送業界の色々な人たち、氏家氏を取材していた新聞記者たちまでそう言うのだ。

 氏家氏が存命であれば今回のような後手後手の対応はけっして許さなかったに違いない。

 

 もうここまで事態が進んでしまっては、早いうちにオープンな対応をするしかないだろう。

 早めの情報開示が結果的には番組を存続させることになるのだ。

 もしも氏家氏が今も生きていればどういう指示を出すだろうか。

 今の経営者はそのことを念頭に、会社や業界の舵取りを間違えないように対応してほしい。

(11月16日追記)

 この記事をアップした11月15日午後、日本テレビの大久保好男社長が民放連会長としての定例記者会見での場で経営トップとして公式な形で謝罪して事実の検証と責任者の処分、さらに検証結果を後日公表すると約束したことは、遅きに失したとはいえ、トップ自らが範を示すことができたと評価できる。氏家氏時代の姿にようやく戻りつつある片鱗が見えた。

 大久保氏は「祭り企画」だけを調査するとしたが、今の事態になってしまえば「他の企画にも疑わしい点はあるのではないか?」と考えるのが視聴者の当然の疑問であろう。また文春砲を始めとする他のメディアもこの点を狙ってくるに違いない。ぜひ、脇をしっかり締めて、たとえ「都合の悪い真実」が見つかったとしても早めに、他社や他の機関(BPOなど)から指摘される前に先手を打って公表していく姿勢が企業の危機管理、あるいは業界全体の危機管理として求められることになる。

 放送制度が大きく揺れ動きつつある今の状況では、かつて以上に経営トップの姿勢が問われていると言って過言ではない。

振り返ってみた時に「氏家流」ならぬ「大久保流」と呼ばれるような誠実で丁寧な対応をぜひ見せてほしい