「イッテQ」やらせ疑惑を暴いた文春砲のインパクトは?

日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」番組ホームページの一部

テレビ業界のお化け番組「イッテQ!」を標的にした文春砲の衝撃

 しかも相手は日本テレビの超人気番組「世界の果てまでイッテQ!」。イモトアヤコや出川哲朗らを人気者にした立役者で日曜夜に視聴率も常時20%前後を記録するお化け番組。NHKの制作者たちが嘆く対象でもある。

「『イッテQ!』があるせいで大河ドラマの視聴率が上がらない・・・」

 子どもたちも多く見ている、そんな番組に文春砲が火を噴いたのだ。その衝撃はけっして小さいものではない。

日テレ「イッテQ!」にラオス「橋祭り」やらせ疑惑

 そんなタイトルの記事が週刊文春に載るという。

 文春オンラインを読む限り、内容は以下の通りだ。

 2007年に放送を開始した日本テレビの看板番組「世界の果てまでイッテQ!」。番組きっての人気企画である「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」にやらせの疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。

 同企画は、芸人の宮川大輔(46)が青いハッピにハチマキ姿で世界の過激な祭りに突撃し、これまで参加した祭りは100を超える。問題となっているのは5月20日放送分の「橋祭りinラオス」。実際の放送では、自転車で“橋”に見立てた全長25メートルの板を渡り、スピードなどを競う“祭り”だと紹介。4月8日にラオスの首都ビエンチャンで行なわれ、宮川が“祭り”に参加した一部始終が放映された。

 だが、ビエンチャンに赴任する日本人の駐在員は異議を唱える。

「ラオスで『橋祭り』なんて聞いたことはないし、周囲のラオス人に聞いても誰も知らない。そもそもこの地域で自転車といえば、外国人観光客がレンタサイクルに乗るぐらい。この『橋祭り』は不自然な点が多すぎる」

ラオス国内の観光イベントを管轄する、情報文化観光省観光部のブンラップ副部長は、「週刊文春」の取材に次のように語った。

「こうした自転車競技はラオスには存在しない。今回(の「橋祭り」)は日本のテレビが自分達で作ったのではないですか」

 また同番組の取材申請を許可した情報文化観光省マスメディア局の担当者も「日本側の働きかけで実現した」と断言する。

「2人の役人が撮影に立ち会いましたが、(「橋祭り」は)ラオスで初めて行われたものです」

出典:文春オンライン

 

ただし、この報道に対して日本テレビ側は否定している

 日本テレビ広報部は「週刊文春」の取材に次のように回答した。

「橋祭りはメコン川流域などでかねてから行われている催しで、地元のテレビ局などでも取り上げられております。今回は現地からの提案を受けて参加したもので、番組サイドで企画したり、セットなどを設置した事実はありません」

出典:文春オンライン

 明日発売される週刊誌が楽しみだが、実は私も映像を見せられてコメントを寄せている。

 あくまで文春側の取材が正しいとして、という条件付きで、もしラオスで伝統的に行われていない祭りを伝統的な祭りだ、などと表現したのであれば大きな問題ではないのか。ラオスでやっていないというのであれば外交問題にも発展しかねない。ただちに検証すべき問題だと思う、などとコメントしたように記憶している。

文春の記者から見せられた番組の映像で気になったのは、ナレーションでこの祭りが「メコン川流域で」という点を強調しているような箇所があった点だ

 上記の週刊文春への日テレ側の回答も「メコン川流域など」としている。

 ひょっとすると、制作者側は問題の祭りがラオスの祭りではなく、ラオスを含むもっと広い地域全体での祭り、ということにしておきたい、という意識がどこかにあるのだろうかという感想をもった。 

 それにしても、もしメコン川流域の「他の国」で行われていた祭りを「ラオスで行われている祭り」として放送したのだとするならば、やはり小さな国を一括りにしてしまう、大雑把な報道としかいいようがない。たとえばメコン川流域のタイで行われている祭りを「ラオスの祭り」だと紹介するようなことがあれば、ラオスの人たちも怒るであろう。豊かとはいえない東南アジアの発展途上国への軽視が透けて見えそうだ。

 立場を変えてみれば、日本では行われていない韓国の祭りを、どこかの外国の放送局が「これは日本の伝統的な祭りだ」などと紹介したならば、誇り高い人たちならば怒りで震えるに違いない。他の国に対して、こういう番組放送は許されるのだろうか。

文春砲が事実だとした場合、この問題は放送局のお目付役であるBPO(放送倫理・番組向上機構)に持ち込まれて審査や審理の対象になるのだろうか

いわゆる「やらせ」疑惑でBPOが審議する事態になったケースでは、2014年に放送されたNHK「クローズアップ現代」の“出家詐欺”報道について翌年にBPOの放送倫理検証委員会が「著しく正確性に欠ける情報があった」として「重大な放送倫理違反があった」と断じたケースがあった。

 多重債務者の男性が出家することで融資をだまし取る“出家詐欺”をするための一環として、ブローカーの男性に自分の債務について相談する場面が登場するのだが、この場面は“多重債務者”役の人物と“ブローカー”役の人物が演じていて、カメラの見えないところで記者がタイミングなどについて指示を出して撮影していたことが発覚した。この「やらせ」報道に火をつけたのも週刊文春だった。

  中立な立場で事実を伝えているとされる「クローズアップ現代」のような報道番組では、放送する内容に虚偽や捏造が含まれていることは「あってはならない」のは誰しも当然に思うだろう。では報道番組でなくバラエティー番組であれば虚偽や捏造が許されるのだろうか。

 

答えは、もちろんバラエティー番組でもウソはいけない

 放送法4条の第3号には「報道は真実を曲げないですること」という規定があるからだ。

 これは番組の編集準則とされ、「報道」というのは報道番組に限らずバラエティーも含む番組全般が対象となる。

 バラエティー番組に関しては、2007年、関西テレビの制作でフジテレビ系で全国放送されていた「発掘!あるある大事典2」で納豆ダイエット特集で様々なデータなどの捏造が発覚し、番組は打ち切られて結果的に関西テレビは当時の社長が辞任。会社としても日本民間放送連盟(民放連)から除名される処分を受けている(のちに復帰)。

 記憶に新しいところでは2013年に放送されたフジテレビの「ほこ×たて 2時間スペシャル」の“ラジコンカー対決”で、なかった対決が編集であったことにされるなど、内容に偽造が行われたことが発覚した件で、2014年にBPOの放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反」があったと断じた例がある。この捏造で人気があった「ほこ×たて」という番組はレギュラー枠でも打ち切りになった。

それだけに今回の「イッテQ!」もBPOの審査対象になるのかが注目される

 だが、その前に日本テレビの社内で検証が行われるはずだ。BPOが審査する場合には、その前提としてまずその放送局自身が問題ありと断定しなければならない。BPOはNHKと民放連が作った自律的な放送倫理遵守機関なので、行政のように強い権限があるわけではない。あくまでそれぞれの局の自主性が重視されるのだ。

 日本テレビはどちらかと言えば脇が硬い会社だといえる。2008年の「真相報道バンキシャ!」で岐阜県で裏金作りが継続しているという報道をめぐって、記者らを欺いて虚偽の証言をした人物のインタビューをそのまま報道してしまい、当時の社長が辞任する事態にまで至っている。そうした過去の辛い経験で懲りているからこそ、他の民放キー局に比べると、「やらせ」「捏造」などの事件は比較的少ない。

 

ましてや「イッテQ!」は日テレの看板番組である

 番組の打ち切りなどの事態になってしまったら、毎週、楽しみにしてきた日本中の視聴者が悲しむ事態に発展するだろう。

  今のところ情報が少ないので何とも言えない状況だが、しっかりした検証を進めてほしいと思う。

 その上で、もし文春が指摘するように「間違い」があったのであれば素直に認めることだ。

 

 筆者は、日本テレビの大久保好男社長が、民放業界全体を束ねる立場である民放連会長も兼務していることから、比較的早めにこの問題に決着をつけるのではないかと見ている。新聞記者たちの話だと日本テレビは明日(11月8日)中に、この問題について各社に対してきちんと回答すると返答しているという。ただの一枚きりのそっけない回答文で終わらせる感じではなく、それなりに中身のある回答をするというニュアンスを示しているという。

 たまたまのめぐり合わせではあるが、YouTubeやアベマTVに代表されるようにインターネットで映像コンテンツが消費されるようになる一方で、広告収入も(次第に、ではあるが)ネットに奪われつつある。一方で「電波」という公共材をいつまでも放送局にばかり与えておけないという声が政府や経済界などにも広がりつつある。今や「放送」という制度が大きく変わりつつある微妙な時期であり、民放連会長にとって業界全体の舵取りでとても重要な課題を抱えている。社内にゴタゴタを抱えている余裕はないはずだ。

 そんな中でテレビ全盛期の頃と変わらず多くの人たちに愛され、毎週楽しみにされている数少ないテレビ番組が「イッテQ!」だった。

 このお化け視聴率番組を直撃した”やらせ疑惑”。

いまや国民的な財産ともいえる番組を今後も残していくためにもどうすればいいのか

 この人気番組を守るためにも、迅速に正確な検証結果を示してほしいと願っている。