筋が通らぬTBSの釈明(警察24時の映像)

TBSの「水トク!」の「最前線!密着警察24時」より

 TBSが「密着警察24時」で警察官による過剰な制圧行為の場面を撮影しながら、その映像を放送せず、しかもオリジナルの映像を警察に押収されていたのにその事実すら公表していなかった問題。

 TBSが毎日新聞に対して回答した内容が報道されているが、本当に意味不明だ。 

同社は12日、毎日新聞の取材に応じ「番組のために許可された同行ロケで撮影された上、番組の趣旨にそぐわず使用に適さないと判断した」と説明した。

出典:毎日新聞デジタル

「番組趣旨にそぐわず」

 一般の視聴者ならずとも「はあ~?」と首をかしげざるをえない。

 

 「番組の趣旨にそぐわない」とか「趣旨に合っていない」という表現は、たとえば真面目な戦争体験を伝える報道番組で、レポーター役がふざけて不謹慎な発言をしてしまった場合などに使うものである。

 それと同じだと言いたいのだろうか。

 コトは警察という法律に基づいて公権力を行使している実力組織が、人を死なせてしまった、という重大な行為なのだ。そういう場面をたまたま撮影してしまった場合でも、たとえば、これはもともとバラエティ志向の番組なのでそういう報道的な目的の趣旨の番組ではないから、放送しない、事実も隠しておいていい、とでもいうのだろうか。

 けっきょく番組の種類が違うから、正当化されるのだ、という理屈・・・。

 

 思えば、こうした姿勢が、何度もこの老舗の放送局の根幹を揺るがすような不祥事につながってきた。

2013年にTBSは「マツコの日本ボカシ話」というバラエティ番組を放送した。

 モザイクをかけた生保レディーたちが赤裸々なトークを繰り広げるという番組だったが、赤裸々トークがあまりにも個々人や会社の名誉毀損にあたるというのでたった1回の放送で打ち切りになった。当然、人にモザイクをかける時の基準(他の手段では話し手のプライバシーが侵害されかねないケースで他の手段では伝えにくい場合などに限られる)が報道番組にはあって、むやみやたらにかけていいというものではない。

 この番組打ち切りの際にTBSは「バラエティ番組であっても報道番組と同じ基準で対応する」などと内外に表明したのである。

 その時の対応はその後にやめてしまったのだろうか。

 

 さらにいえば、1989年にTBSのワイドショーの制作スタッフがオウム真理教の幹部に対して、オウム真理教の問題を追及していた坂本堤弁護士のインタビュー映像を見せたことが坂本弁護士一家殺害事件につながったとされている。

 その後、TBSは「ワイドショー」という番組スタイルを辞めることでけじめをつけた形になっていたが、ワイドショーと報道番組との分極化やその取材や放送などの倫理基準が異なることを克服していくことは、TBSという会社にとって心の底から大事にしていくべき課題だったはずだ。

 ところが、今回、またしても出てきた「番組の趣旨」などという言葉。

 「ワイドショー」と「報道番組」は基準が違ってもいいんです、と言っているようなものだ。

 オウムの反省は、残念ながら、このTBSにとってはるかに昔の出来事のようだ。

 こういう言葉を使った広報の担当者は、TBSのこれまでの歴史をまったく理解しないままに発言したといえる。 

 他にも毎日新聞の記事を読む限り、TBSの反応は、恐ろしいほどに鈍い。

TBSは「警察の違法行為が解明されないなら報道機関として看過できないが、捜査が行われ、警察官2人が有罪判決を受けた」ことも理由に挙げた。

出典:毎日新聞デジタル

 有罪は有罪でも結果的には「軽い方の罪」の判決になったのだ。

 適用されたのは「業務上過失致死罪」。

 一般の運転手が人をはねて死なせてしまった際の罪(最高刑 懲役また禁固5年)だ。

 しかし、起訴の段階では、警察官などの法律によって特別の権力行為が許されている者の行為が対象になる「特別公務員暴行陵辱罪」(最高刑 懲役または禁固7年)が適用されるかどうかで注目された事件だった。

 TBSが映像を検証した上で、きちんと検証番組を放送していれば、後者にならないのはおかしいのでは?、という世論が高まった可能性がある。「軽い方の罪」で済んだのには、TBSが映像をもっていることや警察が押収していることを公表もしなかったことが影響していないのだろうか。

 TBSは警察に気を遣ったのか、あえてだんまりを決め込んだのだ。

 

 日頃、権力機関を監視するのが、テレビの使命だとことあるごとに表明している放送局なのに、だ。

 おかしくないか。

 映像は県警が14年1月下旬に差し押さえ令状で撮影した制作会社から押収した。TBSは「制作会社は警察に抗議したが、(TBSには)著作権がなく抗議しなかった」と説明。1990年にTBSの番組で暴力団関係者が市民を脅す場面を放送し、映像を押収された際には警察に抗議して経緯を自ら公表しており、異なる対応となった。

出典:毎日新聞デジタル

 しかも、いざという時に「あれは制作会社が撮ったものでウチは関係ない」とでもいうような姿勢。

 制作会社にすべてを押しつける姿勢には呆れてしまう。

 都合が悪くなれば、力の弱いもののせいにする。

 そんな局なのか?

 日頃は弱者の味方だとばかりに言っているのに・・・・。

 TBSの報道姿勢を支持してる視聴者だって、疑問に思うはずだ。

 これでは制作会社で取材している人たちは報われない。

 内心ではTBSが発注する仕事など、見限っていることだろうと思う。

 今回のことは、視聴者への説明も十分に尽くされていない。

 こうした問題で、テレビへの信頼が失われていくのは、テレビを愛する人間としてすごく残念なことだ。

 オウムのビデオテープ問題で、多くのTBS関係者が涙を流して「再生」を誓ったのをよく覚えている。

 20年あまり前の「反省」。

 あれは嘘だったのか。

 今回のTBSの対応は視聴者を置き去りにしたままの官僚的な答弁でしかない。

 それでは、政治家のために忖度して、本心にはない答弁を繰り返す官僚を批判できないではないか。

 新しい社長は、この問題をどう考えているのか、何かの機会にぜひ話してほしい。

 TBSという組織の奥に巣くう、実に深刻な病なのだと思うのだが、今のTBS関係者にはその自覚がないのだろうか。