視覚障害者の転落事故 地方はより深刻

NHK北九州局で昨年12月に放送されたニュース

先週末、JR蕨駅で盲導犬を連れた男性がホームに転落して電車に轢かれて亡くなった。

昨年の東京メトロ銀座線での死亡事故に続いて時々、同様の事故が起きてしまう。

その都度、ホームドアの設置が急務であると叫ばれる。

確かにホームドアの設置はこうした事故を回避するためには有効な手段である。

だが、ホームドアの設置という方法が現実的に想像できるのは、実は大都市圏だけだということをどれだけの人たちが知っているだろうか?

地方では、ホームドアが現実的な解決手段ではない実態がある。

地方で放送されたニュースのDVDを視聴して、私自身も初めてそうした現実を知った。

それは昨年12月にNHKの北九州局で放送されたニュース「欄干のない橋」だ。

「欄干のない橋」というのは、視覚障害者が駅のホームを例えて表現する言葉だという。

橋に欄干がなければ目が不自由な人は、ちょっとしたはずみで川に落ちてしまう。

このニュースに登場するのは、福岡県中間市に住む視覚障害者の栗田陽子さん(45)だ。毎日、JR筑豊線の中間駅から鞍手駅まで盲導犬を連れて通勤している。ところが通勤で使っているJR九州は中間駅と鞍手駅を含む多くの駅を「無人化」を検討する計画を発表した。

栗田さんら視覚障害者らは11月に無人化計画の署名を集めて、JR九州に計画撤回を求めた、というのだ。

ニュースでは実際に栗田さんが盲導犬を連れて出勤する様子に密着取材している。

栗田さんは時折、改札口にいる駅員に自分が乗る電車のドアの位置を尋ねて、改札口から駅員の目が届くところに立つようにしている。

栗田さん自身、ホームから転落して電車とホームの間に挟まれた経験があるという。

このため無人化に視覚障害者たちは不安を募らせている。

NHKの取材に対してJR側は以下のように説明している。

「無人化しても監視カメラやインターホンなどで常時監視し、連絡が取れるし、いざとなれば警察にも協力を求める」と。

もし、視覚障害者が無人駅でホームに転落してしまって電車がそのことに気がつかずに突入してきた時、とっさの救出はできるのか?

JR側の回答を聞く限り、そのことを考慮しているようには感じられない。

まるで他人事である。

あらかじめJR側に何時にどこからどこまで電車に乗るということを伝達しておけば駅員がサポートすることも可能だが、前日までに詳しい予定を伝えなければならないという。

実際、JR九州のエリアでは経営合理化のための駅の無人化計画が進められている。

JR九州、半数以上が無人駅に 3月のダイヤ改定受け(朝日新聞)

JR九州は3月26日のダイヤ改定で、在来線9駅を無人化する。管内の全567駅のうち半数以上の291駅が無人となる。こうした駅には列車の遅れを知らせる装置などを設置するほか、係員が定期的に巡回する。JR九州は赤字の鉄道事業の採算改善のため駅の無人化を進めている。

無人になるのは、鹿児島線西牟田駅(福岡県筑後市)、筑肥線加布里駅(同県糸島市)、日田彦山線石田駅(北九州市)、日豊線豊前善光寺駅(大分県宇佐市)、同幸崎駅(大分市)、豊肥線緒方駅(同県豊後大野市)、長崎線肥前白石駅(佐賀県白石町)、佐世保線三間坂駅(同県武雄市)、指宿枕崎線山川駅(鹿児島県指宿市)。

出典:朝日新聞デジタル

JR九州に限らず、地方経済は疲弊し、地方の鉄道会社の合理化はどんどん進んでいる。

そうした中で、障害者の存在が軽視されているような現実がある。

JR蕨駅で起きた男性の死亡事故でも、駅員が不在だったことが判明している。

いったい、どうなっているのだろう。

昨年、障害者差別解消法が施行され、障害を持っていることを理由にした差別的な取り扱いをなくする社会に向けて、国をあげてとりくんでいるはずではないのか。

全盲男性転落死 ホームに駅員不在 埼玉・蕨(毎日新聞)

当時、駅構内には少なくとも4人の駅員がいたが、ホームにはいなかった。同駅では平日の通勤時間帯はホームに駅員を配置するが、14日は休日ダイヤだったため配置していなかった。ホーム上の様子は事務室内の監視カメラのモニターで確認できるが、常時見ている駅員はいない。

男性は蕨駅近くで1人暮らしをしていた。近所の住民によると、隣の西川口駅近くでマッサージ店を経営し、ほぼ毎日、電車で通っていたという。

出典:毎日新聞ホームページ

大都市圏の首都圏でさえ、こんな現状なのだ。 

まして、地方の小さな駅では「ホームドア」の設置など、口に出すことも憚られるような現実がある。

こうした問題に光を当てたNHK北九州局の報道は、小さなニュースではあっても大事な問題提起をしていたと思う。

記者が伝えた「欄干のない橋」は、見渡せばいろいろな「地方」でじわじわと広がりつつある。

そのことに私たちは関心を払っていかなければならない。 

根本的な対策はどうすれば実現できるのか。

官民あげて、考えていく必要がある。