”かけあい名人”の鈴木奈穂子アナは最後も明るく・・・ 出演者たちの卒業コメント(2)

鈴木奈穂子アナウンサーは33歳。

2010年から『おはよう日本』の平日のキャスターとして、多くの日本人にとって朝をさわやかなものにしてくれた人だ。

偶然だが、筆者が現在、教えている 法政大学社会学部の出身者でもある。

明るいオーラが満ちあふれ、この人の笑顔を見ると朝から元気がわいてくる。そんな人が3月27日(金)、番組を「卒業」した。

『おはよう日本』(平日版)では、鈴木さんを始め、5人のキャスターが交替する。

そこで全国放送の枠で鈴木さんの相方だった阿部渉アナウンサーから指名されて鈴木さんが5人を代表してあいさつした。

一人ひとりがそれぞれの持ち場でわかりやすいニュースや情報をお伝えできるように取り組んでまいりました。

至らない点もあったと思いますが、みなさん、番組を見てくださって、本当にありがとうございました。

(と一同頭を下げる。)

では最後はみなさん、一緒に行きましょうか。

どうぞみなさん、これからもお元気で!

(と手をカメラに向かって振る。鈴木アナは人一倍大きく手をパーに開いて。)

さて、私が鈴木アナの非凡さを痛感したのは、落ち着いた読みの上手さもさることながら、NHKには珍しい「かけあい」の上手さだった。

特に家庭でも使える「便利グッズ」を紹介する『まちかど情報室』というコーナーでの鹿島綾乃アナウンサーとのやりとりは絶品だった。

鹿島アナは、鈴木さんよりもたぶん先輩の女性アナウンサーだが、この2人が向かい合うと、公私ともにウマが合って仲が良いのが、言葉の端々にうかがえて、一段と家庭的な雰囲気になった。

鈴木アナがうまいというよりも、先輩である鹿島綾乃アナがうまく鈴木さんの人間的な部分(おちょこちょい、けっこう怠け者でずぼら、など)を引き出したということができる。この鹿島アナ、見た目はおばちゃん風だが、実はドキュメンタリーのナレーションでも非常に上手い、確かな技術を持ったアナウンサーでもある。

生放送での会話を「かけあい」と呼ぶが、この2人の「かけあい」は絶妙だった。

たとえば、3月17日(水)の『まちかど情報室』から。

(コーナーの冒頭スタジオで)

(鹿島)

「鈴木さんは最近はゴミを捨てているんですか?」

(鈴木)

「『は』じゃなくて、いつも捨てています。たまには一括ですけどね。」

(鹿島)

「旦那さんが捨てているんです。では今朝のテーマは『かぶせてチャン』です。」

(鈴木)

「鹿島さんのお口にフタをかぶせたいです!」

(鹿島)

「すぐこうやって猫かぶって困ったもんだわ!」

(となかなか本題のVTRを紹介できない)

(中略)

VTRの中で、鹿島アナが物干し竿が汚れないように、竿にかぶせるカバーを紹介していたら・・・

(VTRの中で主婦の声)

「物干し竿はホコリがたまるので毎日拭くのが、面倒」

(スタジオで鈴木)

「毎日、拭いてないやー」

(スタジオで鹿島)

「えっ。自分で言っちゃったよ」

(中略)

(VTRを降りてからスタジオで)

(鈴木)

「毎回、拭くのと毎回カバーかけるのとどっちが手間かなと思ったんですけど、(片側に)寄せちゃえるんですね」

(鹿島)

「私はそれ毎回拭いていないって自分でカミングアウトするとは思ってなかった・・・」

(鈴木)

「えー、みんな毎日拭くんですね~(と感心する)」

(鹿島)

「拭いてごらんなさいよ。真っ黒になりますよ。本当に」

これまで鹿島アナを通じて、主婦としては手抜きもするし、お酒好きで食べることが好きな人柄が伝わってきた。

2人のコンビが最後になっ3月20日(金)の放送では、

(鈴木)「今日でこのペアも最後ですね」

(鹿島)「言った!」

(鈴木)「また、このペアでいつかお会いしましょう。『まちかど情報室』でした!」

鈴木アナ本人も、「人間・鈴木奈穂子」を隠さずに出すことができただけに、鹿島アナとの最後の放送でへの思い入れが伝わった放送だった。

さて、3月27日(金)の鈴木奈穂子アナ『おはよう日本』の全国放送の後の関東ローカル。

全国放送でいったんは挨拶したもののもう一度、最後の挨拶をするチャンスがある。

毎回ここでは『朝ドラ』に行く直前のほんの7、8秒前に、お天気カメラの映像に合わせてメインキャスターの阿部渉アナウンサーが「それではみなさん、今日も一日、お元気で!」と挨拶し、『マッサン』などが始まるのが通例だ。

が、最終回とあって、この日は違っていた。

(阿部)

「来週は『おはよう日本』は装いを新たにスタートします」

(鈴木)

「これまで5年間、本当にありがとうございました」

(阿部)

「もう一度、外の様子です」

(鈴木)

「東京・北区から見た今の様子です。今朝はよく晴れていますね。今日1日、よく晴れそうです。

最高気温は20度くらい。ポカポカした陽気になりそうです」

(阿部)

「鈴木奈穂子アナと一緒にお伝えする『おはよう日本』。あと10秒」

(鈴木)

「いやー、名残惜しいですが、笑顔でお別れしましょう。

みなさん、本当にありがとうございました」

(阿部)

「じゃあ、最後も!」

(鈴木)

「今日も一日」

(阿部)

「言って!」

(鈴木)

「お元気で!」

「ありがとうございます」

そして番組は終わった。

いつもの番組最後の台詞を鈴木アナに譲った阿部アナの粋な計らい。

鈴木アナがいかに同僚たちに愛されながら出演してきたかが、伝わってきた。

鈴木アナが「笑顔で」と言った時には、映像はお天気カメラだったので、視聴者は想像するしかなかったが、番組終了後のスタジオの感動の場面を想像することができた。

そういう意味では、鈴木奈穂子アナは「人間」の「素の部分」をぶつけて、それが愛されるキャラである。

こういた生放送ゆえの「かけあい」の絶妙さを見せてもらえたことには感謝したい。

さて、彼女は来週から『ニュースウォッチ9』のキャスターを務めることになる。

彼女にとって大きな舞台ではあるが、鈴木奈穂子アナの天然の人間の良さを出すには、堅苦しい夜のニュース番組がはたして良いのかどうかはちょっと微妙だと思う。

彼女がその良さをなくさず、萎縮することもなく、鹿島アナと展開したような「ぶっちゃけぶり」をたまには見せてくれるといいなと願っている。