強姦とDVの共通点 ”性暴力被害者”の「弱み」につけこむ男たちを許すな!

「性暴力」根絶を訴えるNPO「しあわせなみだ」のHP

 宮崎県で起きた強姦事件での弁護士の対応をめぐって、女性への性暴力にくわしい団体が声を上げた事実を伝えたら予想以上の反響があった。多くが「許せない」「弁護士として不適格」というものだった。

強姦事件「盗撮ビデオ」で示談を迫った弁護士 「許せない」と怒りの声上がる(ヤフーニュース個人・3月8日)

「強姦魔そのものも許せませんが、盗撮ビデオの存在を材料にして『これが出ると傷つくことになる』などと被害者女性を脅すような振る舞いをした弁護士も、性犯罪に苦しむ女性を精神的にセカンドレイプするのと同じで許すことができません」

こう強い憤りをみせているのが、強姦被害者の女性たちから相談を受けるなど、性暴力の問題に関する様々な活動を行なっている東京のNPO「しあわせなみだ」の代表を務める中野宏美さんだ。

出典:ヤフーニュース個人

 このニュースを配信した直後、DV事件で被害者側に被害届の取り下げを強要したという弁護士が東京で逮捕された。

強要未遂容疑で弁護士逮捕=DV被害届取り下げ迫る―警視庁(時事通信・3月10日)

交際相手からの暴力(DV)事件の被害者らに対し、被害届を取り下げるよう迫ったとして、警視庁捜査1課などは10日、強要未遂と証人等威迫容疑で、第一東京弁護士会に所属する弁護士棚谷康之容疑者(52)=東京都豊島区北大塚=を逮捕した。容疑を否認し、「考えてほしいと頼んだだけ」と供述しているという。

 逮捕容疑は昨年9月中旬、国選弁護人を務めていた傷害事件の被害者の20代女性とその母親に、「お前は公開の法廷で証言させられ、何もいいことはない」「一日も早く心にもない被害届を取り下げろ」などと記した封書とはがきを送付した疑い。

出典:ヤフーニュース(時事通信)3月10日

 前者は、「強姦」が容疑の事件。

 

 後者は「DV」(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力と訳される)が容疑の事件。

 

一見、違うようにみえるかもしれないが、実は、「DV」では多くの場合に「強姦」などの性暴力を含むのだという。

 

 「DV」というと、殴る、蹴るというイメージが強い。

 写真のイメージでいえば、夫に殴られて顔にあざを作った女性というイメージだ。

 実際にはそうした暴行傷害行為にくわえて、強姦や強制わいせつなどの罪名に該当しうる「性暴力」がかなり多いという。

 

 性暴力被害女性の相談にのったり、この問題の深刻さを訴えているNPO「しあわせなみだ」の代表・中野宏美さんによると、

「DV」として相談されるほとんどの場合に「性暴力」もあるのが実態だという。

 以下、中野さんの言葉を引用する。

 DVの場合、結婚している夫婦だと、殴る、蹴るなどの身体的な暴力や人格を貶めるような精神的な暴力の後で、

夫が一方的に妻に対して性暴力を行なうことが少なくありません。

 具体的にいうと、強姦したり、性欲を満足させる行為に従属させたりすることです。

 

 もちろん、妻の同意はありませんから”望まない夫婦関係”です。

 

 しかし、多くの場合、DV では男性が女性に暴力をふるったり、精神的に貶めたりした後で、

加害者側の男性からすれば「仲直り」のつもりだという口実でそうした行為に及ぶケースも多いのです。

被害者側の女性からすれば、それまで殴られていたりする恐怖心から従わざるをえないわけです。

 

 また、そうでない場合は凶暴だった夫が急に求めてきたりするので女性の側は混乱し、

性行為そのものを暴力だと認識していない場合もあります。

 つまり、DVでは男性の側が「性行為」をつかの間の仲直りの手段としてうまく利用している、という実態があります。

 

このようにDV行為ではほとんどの場合、性暴力はつきものと言っていいくらいです。

 DVで裁判になった場合に、被害者の女性は加害者側の弁護士から

「*月*日*時頃に殴られた蹴られたというが、その後で夫の求めに応じて性行為に及んだだろう」と追及されることがありうる。 

 実際、東京で弁護士が逮捕された事件では、

この弁護士は、裁判になれば「お前は、公開の法廷で証言させられ」る、と被害者側を脅したという。

 この事件での証言についての”脅し”は、そうした性行為にまつわる部分も含まれていたのである。

 もちろん、こうした形で被害者を脅すという行為は弁護士として許されるものではない。

 東京の弁護士逮捕事件の後で、中野さんが率いるNPO「しあわせなみだ」のメールニュースは以下のように訴えた。

★1.性犯罪裁判が被害者に過酷である3つの理由

   ~DV裁判加害者側弁護士逮捕から考える~

───────────────────────

東京で、DV被害者に直接告訴取り下げを交渉した加害者側弁護士が

逮捕されました。弁護士は、被害者とその母親に対し、「公開の

法廷で証言させられ、何もいいことはない」と手紙等で被害届の

取り下げを強要した罪に問われています。

なぜ弁護士は「公開の法廷での証言」を理由に、裁判を止めるよう

働きかけたのでしょうか。それは、DVを含めた性犯罪裁判が、

被害者にとって非常に過酷であるためです。

以下のような状況があります。

☆1.自分の性暴力を語らねばならない

裁判では、被害者が、事件について証言することが求められます。

つまり、心身を深く傷つけられた性暴力を、自ら説明することに

なります。性暴力に遭った方の中には、性暴力が原因で、PTSD

(心的外傷後ストレス障害)等の精神疾患を抱える方も少なく

ありません。性暴力を証言することは、トラウマの体験を想起する

ことであり、非常に過酷です。

☆2.過去の性体験や異性関係が問われる

裁判の中で、加害者側弁護士が、事件とはまったく関係のない、

過去の性体験の人数や回数、結婚や恋愛の経験等を執拗に尋ねる

ことがあります。それは「恋愛に積極的」「性体験が豊富」等と

いった被害者像を作り出し、被害者が自ら性的接触を望んだ

(=加害者は無罪)という印象を、裁判官に与えるためです。

性暴力によって、性に対して複雑な感情を抱いている被害者が、

性体験を追及されるのは、非常に過酷です。

☆3.不特定多数が傍聴する

裁判には、加害者だけでなく、裁判官、傍聴者、そして一般市民が

参加する裁判員裁判の場合、裁判員も同席します。加害者のみ

ならず、まったく知らない人の前で、本来プライバシーの領域に

ある性を語ることが求められます。傍聴人には守秘義務は

ありません。また、裁判員裁判では、裁判員になった人には守秘

義務が課せられますが、裁判員候補者となり、裁判の概要を知った

人には、守秘義務は定められていません。不特定多数に性体験を

知られることは、非常に過酷です。

こうした状況を改善するために、以下のような対策が考えられます。

☆被害者支援制度の拡充

犯罪被害者への支援は、「犯罪被害者等基本計画」によって

定められています。「裁判前後の心身的ケアの保障」「裁判で

証言するための訓練」「裁判中の経済的支援」等、性犯罪被害者が

安心して裁判できる仕組みを整えることが求められています。

☆被害者の人権が侵害されない法制度

海外では「レイプ・シールド法」と呼ばれる、事件に関係ない

性体験や異性関係を、裁判で尋ねることを禁じた法があります。

こうした法制度によって、裁判による人権侵害が起こらない

体制を整えることが求められています。

本来人権回復の場である裁判が、さらなる人権侵害の場に

ならないよう、改善が望まれます。

 宮崎県の強姦事件も東京のDV事件でも共通するのは、

「性暴力」について赤裸裸に明かすかどうかをめぐって弁護士から

「裁判になると公開されて困るのはあなたの方だ」と示唆された点である。

 「性暴力」の実態について、くわしいとことは、NPO「しあわせなみだ」のHPを読んでほしい。

http://shiawasenamida.org

 性暴力をめぐる裁判のあり方は日本ではまだまだ被害側の女性の側にばかり過酷な現状がある。

 女性の被害者たちの多くが「泣き寝入り」を強いられている。

そうならないようにするには、性暴力の被害者を法廷で守るための法律を一刻も早く作るべきだろう。