あの田母神さんが噛みついたNHKニュース。そんなにひどかったの?と見直すと、違う意味で「びっくり」!

 都知事選にも出馬を表明している田母神俊雄氏。

 なにかと過激な言動で知られる人物だが、1月13日のNHK「おはよう日本」に噛み付いた。

今朝のNHKのトップニュースはサッカー本田選手のイタリアのミランでの活躍の様子でした。始めから12分間がそのニュースです。サッカーも人気が有るのかもしれないが、トップニュースで12分間もやることなのか。これでは国民が馬鹿になります。

出典:田母神俊雄氏のツイッター(ガジェット通信)

とツイートしたのだ。

 そのことはガジェット通信の独自ネタだったが、これが賛否両論で反響が大きかった。

 スポーツの祭典である東京五輪のホストである知事候補がスポーツが嫌いではどうなるという話もあって、スポーツ嫌いではという話もネット上でささやかれたが、田母神氏は昨年5月には元巨人の長島茂雄と松井秀喜の栄養賞の受賞のニュースは歓迎していたという。

長嶋、松井両選手の国民栄誉賞を称えるテレビ報道が繰り返し行われています。お二人とも国民に夢を与えた立派な選手でした。多くの子供たちが野球の選手を目指すでしょう。学校で我が国の近代史に影響を与えた偉人の話をもっと教えるべきです。そうすれば国家国民のために頑張ろうと思う子供が増えます

出典:田母神俊雄氏のツイッター(ガジェット通信)

 野球だったら許せるのか。サッカーというスポーツは関心がないから、本田特集は許せなかったのか、などいろいろな説がネット上を飛び交った。

 そのNHKニュース、そんなにひどかったのかと興味を抱き、録画していたニュースを見てみた。

 田母神氏が問題にしたのは1月13日、月曜だが「成人の日」で祭日で仕事は多くの人にとってお休みの日だ。

 

 朝7時から1時間の「おはよう日本」。

 確かに番組の冒頭から、ACミランに移籍して背番号10番をつけて試合に出場した本田圭祐選手の話題が12分間も続いた。

 試合の様子や現地、ミラノの歓迎ぶりだけでなく、この日に合わせて本田選手の小学校時代の担任の先生までインタビューしていた。小学校の卒業文集を見せてもらうと、本田少年は「将来は一流のサッカー選手になって、セリエAのチームに入り、背番号10番をつける」と作文に記していた。そこのシーンは確かに興味深いものだった。

 

 ただ、田母神さんが指摘するように、ニュースの冒頭からサッカーの話を12分もやるか?というのはもっともな話。

 なぜ、天下のNHKの朝のニュースがこんな放送をしたかというと、この朝、NHKの判断としては本田選手のイタリアデビューに勝る大きなニュースが存在しなかったからだろう。

  

 祭日のニュース番組や情報番組は、「祭日モード」になる。

 私自身も以前、民放テレビの解説キャスターをやっていた頃、スタイリストが用意してくれるるスーツが、祭日には、ワイシャツがカラフルになったり、ネクタイなし、になったり、ちょっと遊び心満載になっていて驚いたことがある。

 当然、ネタも、柔らかいものが中心になる。

「だって祭日なんだから」

「あんまり硬いもの、休みの日の朝から見たくないでしょ」

 そんな会話で、祭日の番組のネタも決まっていった記憶がある。

 民放だけのことかと思っていたら、最近はNHKも同様らしい。

 田母神さんが怒った「冒頭から本田特集」にはこうした背景もあったのだ。

 NHKのニュースまで、柔らかい話ばかりで伝えるべきことをきちんと伝えない状況、というのは、最近、NHKのニュースのあちこちで起きている。

 たとえば、昨年、特定秘密保護法案の内容について、自民党と公明党が合意して国会提出が決まった日の「ニュースウォッチ9」での扱いはわずか1分の短い扱いだった。しかも、その前に「ホット炭酸」商戦などの柔らかい企画を長々放送していた。

 

 TBSなど他の民放のニュースが長く報道したのと対照的だった。

 

 新聞の一面トップのニュースと同様に、番組の冒頭のニュースは世の中で起きている事象の一番、重要と思われることを持ってくるのが報道のセオリーだったはずだ。忙しい視聴者の中には、番組の冒頭だけ見て、その日に世の中で起きていることを判断して、仕事にでかける人もいることだろう。

 こうしたセオリーをテレビ局が守らなくなった理由は簡単だ。

 「視聴率」を取るためだ。

 視聴率の数字が会社の収益にかかわってくる民放と仕組みが違う公共放送といえども、視聴率を意識していることに変わりはない。

 

 では、「おはよう日本」は、本田特集の後はちゃんとニュースを放送したのか。

 その後のニュースは、スタジオに安倍首相の顔写真が出て「東京都知事選」とテロップが出て”幅広い政策課題めぐり議論 望ましい”とアフリカを外遊中の安倍首相が都知事選に言及したニュースを伝えた。

 

 脱原発を訴える細川護煕元首相の参戦で「原発問題」が大きな争点になりつつある都知事選について、首相として釘を刺す発言をニュースにしたのだ。まるで安倍首相が一番放送してほしいことを伝えたようなニュースだった。

 その後も「安倍首相は・・・」と、主語は安倍首相がどう言った、という「首相の考え」を伝えるのに終始。

 「集団的自衛権」の行使について、

”判断時期決めていない””私は自然体で行きたい 政府の有識者懇談会 多岐にわたり議論”

と、首相の発言を””で引用するニュースが続いた。

 同じく集団的自衛権について、

”報告受けたのち内閣法制局で協議し、政府見解まとめて行く過程でー” ”公明党 自民党 与党とも相談していくことになっていく””今から判断時期などスケジュールを決めているわけではない”

 アナウンサーの読みも「安倍総理大臣は公明党が集団的自衛権の行使に慎重な姿勢を示していることに対し」と、

”どういう対応が国民の生命 財産 守ることにつながるかの観点から” ”虚心たん懐”に責任感もって考えていく問題だろう” ”そのことによっておのずと結論に近づいていくと思う”

と、一時一句を字幕で表記して伝えた。

 通常国会についても、

”まずは来年度の補正予算案と来年度予算がある” ”補正予算案は消費増税の影響 緩和するためのもの” ”成長軌道に戻ることができるかどうか大切な予算” ”1日も早く通すことが好循環実現のうえで非常に重要”

と、細かく、安倍首相の言葉をアナウンサーがそのまま読み上げた。

 また、東京都知事選についても、

”国際都市 首都東京の顔を決める非常に重要な選挙” ”いろいろ人の名前が上がっているが都民の関心高まることはいいこと”

 脱原発が争点の一つに浮上していることについて、

”エネルギー政策は東京都だけでなく国民みなの課題だ” ”当然議論と思うが都知事としての課題もバランスよく議論されるべき” ”少子高齢化 東京五輪開催など 幅広い政策課題を議論 望ましい”

と首相が語ったというニュースを、「安倍首相は・・・・と言った」という形式で伝え続けた。

 映像を見ながら、ここまで書いて、あまりに細かく、首相の言葉を言ったそのままに長々と引用していることが分かって、正直ウンザリしてくる。

 百歩譲って、集団的自衛権や国会運営、予算などは、国のトップの発言だから伝える価値はあるとしても、でも、ここまで細かく一語一語を首相の言った通りに伝える意味が果たしてあるのだろうか?

 

 それに東京都知事選については、首相としての発言というよりも、自民党総裁としての思惑が交じった発言だ。であれば、他の野党などの声も放送すべきだ。それを「首相発言」として、ひとくくりにして、これほど細かく伝えるのは「報道」というよりも、もう、「広報」と言ってよい。

 

NHKのニュースはいつから、安倍首相の広報機関になってしまったのだろう。

 この安倍首相がこう言ったという特集が3分ほど。

 この後で「各地で厳しい冷え込み」という気象情報。

 さらに、東京五輪の組織委員会の会長の就任を下村文部科学相兼五輪担当相が森元首相に要請し、元首相が受け入れたというニュース。

 ゴールデングローブ賞の発表前に「風立ちぬ」が受賞なるか、というニュース。

 その後は、関東ローカルのニュースになって、水戸で一人暮らしの女性が遺体で見つかったニュースの続報、JRの新型車掌の紹介。

 7時半からは、浅田真央、高橋沙羅らソチ五輪の有望株について解説する大特集。

 つまり、この朝のNHKニュースは、大きく分けると、ACミラン本田特集→安倍首相の発言特集→ソチ五輪特集と、特集づいた構成だったのだ。

 

スポーツ選手と安倍首相ばっかりではないか?

 まるで安倍首相のPRみたいなニュースの伝え方。

 田母神さんが指摘したのは、本田選手のコーナーが長い問題だったが、でも安倍首相の発言を逐一伝えるニュースの方が不自然だった。

 特に都知事選の伝え方なんて、「安倍首相は・・・」と安倍さんが何と言ったか、だけでニュースが作られていた。

 来週、会長が交代することも影響しているか、最近のNHKは「安倍首相への気遣い」が露骨すぎる。

 他の民放のニュースは、タイの首都バンコクでの反政府運動がヤマ場になっていることなどを伝えていたが、伝えるべきニュースはもっとあったはずだ。

 され、田母神さん、「国民は馬鹿になります」とつぶやいた3日後に、本田選手についてつぶやいた。

つい先ほど、本田選手がミランで初ゴールを決めたそうです。こんなに早く初ゴールとはすごいですね。日本国民として嬉しいです。私は防大時代にグランドホッケー部に属しフォワードでした。関東学生リーグ一部でプレーしましたが、ゴールを決めるのが如何に大変か良くわかります。

出典:田母神俊雄氏のツイッター(ガジェット通信)

 これを伝えたガジェット通信やJ-CASTニュースは、田母神さんのつぶやきに「『手のひら返し』の声も…」と伝えている。

田母神俊雄氏「本田初ゴール、日本国民として嬉しい」 「馬鹿になる」発言から3日、「手のひら返し」の声も

サッカー・イタリア1部リーグ(セリエA)のACミランへ移籍した本田圭佑選手(27)が2014年1月16日(日本時間)、ミラン移籍後初先発となる試合で初ゴールを決めた。

この快挙に東京都知事選に立候補している田母神俊雄氏も賛辞を送った。しかし田母神氏は13日、NHKのトップニュースが本田選手のデビュー戦だったことに「12分間もやることなのか」「これでは国民が馬鹿になります」などと発言したばかり。たった3日での変化に「手のひら返し」との声も上がった。

出典:J-CASTニュース

 あくまで個人の「つぶやき」ならば何をつぶやいても自由だから関知することではないが、現在65歳の田母神氏が率直に「国民が馬鹿になります」と指摘して話題になった問題は、実はメディア研究者の立場からみても、テレビ報道の最近のあり方についてポイントを突いたものだった。

 NHKニュースはどうしてしまったのか。スポーツ特集を朝のニュースの冒頭に持ってくるセンスだけなく、安倍首相の発言のニュースでの、一言一言のそのまんまの引用。

 

 民放出身者が余計なお世話だと思うが、本当に大丈夫か。