「みのもんた」の降板で朝の番組が失う「大人」「老人」の視点

 みのもんた降板で失うもの

 みのもんたの降板がついに決定した。10月24日、TBSは朝の報道・情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』と『みのもんたのサタデーずばッと』を11月の第2週から刷新すると発表した。

 同日、TBSは番組ホームページに以下の「お知らせ」を掲示した。

TBSテレビは、「みのもんたの朝ズバッ!」「みのもんたのサタデーずばッと」への出演を自粛しているみのもんたさんと話し合いを重ねた結果、みのさんの出演を終了することを決定しました。11月第2週より二つの番組ともリニューアルし、再出発します。引き続きご支援をよろしくお願いします。

出典:TBS「朝ズバッ!」公式ホームページ

 みのもんたについては、日本テレビ社員だった次男の窃盗容疑での逮捕や女子アナへのセクハラ問題などをきっかけに集中豪雨のようなネガティブ報道が週刊誌などで相次いだ。みのもんたの名前を冠した2つの朝番組を持つTBSにも「降板させろ」などといった苦情電話が殺到していたという。

 こうした環境にあっては、いかに「テレビ界の帝王」と言われた大物キャスターでも降板は時間の問題だった。

 ここでは、みのもんたという人物が報道・情報番組のキャスターとして適格か不適格かは論じない。この問題は、すでにウンザリするほど言い古されている。私自身も一緒に仕事をしたことがあったが、みのもんたという司会者は番組の仕切りが見事な一方、酒好きで女性好きの「困ったおじさん」でもあった。「朝ズバッ!」では公私混同の言動も目立ち、番組中に居眠りするなど増長ぶりも目立っていたキャスターでもあった。

 ただ、みのもんたという69歳のタレントが民放キー局の月曜から土曜までの朝の時間の報道・情報番組で8年半にもわたって(土曜だけに限れば11年半にわたって)画面に登場し続けてニュースなどを仕切ってきた時代が終わろうとしていることの「歴史的な意義」を考えてみたい。

 『みのもんたのサタデーずぱっと』が開始されたのは2002年4月。

 『みのもんたの朝ズバッ!』の開始は2005年3月。

「老人」に肩入れしたみのもんたの貧困報道

 2006年頃、みのもんたの朝の番組が、サラ金のグレーゾーン金利撤廃を求めるキャンペーン報道を行い、撤廃を実現させた原動力となったことは世間ではあまり知られていない。

 しかし、サラ金による過酷な取り立ての実態を報道する急先鋒になり、サラ金によって自殺に追い込まれた老夫婦の事件などを熱心に報道したことがグレーゾーン金利の撤廃につながった。

 生活困窮に陥った人をさらに追い込む「貧困ビジネス」といえるサラ金への規制を強化するグレーゾーン金利の撤廃。

 そこには、みのの高齢者への並々ならぬ共感があった。

 

 また、年金の問題を頻繁に特集し、おそらく民放の番組でこれほど数多くの年金問題を扱った番組は他にないだろう。

 みのもんたは、消えた年金問題、年金の世代間の格差、国民年金と厚生年金の格差などもその都度、問題視して報道した。

 

 2004年から生活保護の老齢加算が段階的に廃止されたことで、生活保護を受ける老人たちが苦境が始まると率先して報道。廃止の是非を問う裁判を報道したのも「サタずばっ!」や「朝ズバッ!」だった。

 2008年に創設された「貧困ジャーナリズム大賞」という貧困報道において顕著な功績があった人物を表彰する賞でも、第1回でみのもんたは「朝ズバッ!」スタッフとともに「貧困ジャーナリズム特別賞」を受賞している。

貧困ジャーナリズム特別賞

みのもんたおよびTBS「朝ズバッ!」スタッフ(グレーゾーン金利廃止での「なし崩しは許さない!」という徹底した検証報道および生活保護の老齢加算問題での弱者に寄り添った報道)

出典:「貧困ジャーナリズム大賞2008」ホームページで特別賞

 みのもんたの口癖は「日本の経済発展を支えてくれた人たちが高齢になった時に(年金の引き下げや老齢加算の廃止で)みじめな生活に追いやられる。もっと感謝の気持ちを持って扱うべきだ」というもの。

 この点だけは頑固なほど徹底していた。

 みのもんたは「朝ズバッ!」においては、間違いなく「老人の味方」だった。

 

 さらに母子家庭の母親や障害を抱えた人など「生活弱者の味方」でもあった。

 

 そうした人たちの声を代弁してくれる朝の番組は当時も今もほとんどいない。

今後は「若者狙い」がますます露骨に

 現在、「朝ズバッ!」のTBSを除いて、現在、民放の朝の番組は、各局とも明確な「若者狙い」にシフトしている。フジテレビの「めざましテレビ」。日テレの「ZIP!」。テレ朝の「グッド!モーニング」。特に視聴率で先行する「ZIP!」と「めざまし」は老人など自分の番組の視聴者ではないと言わんばかりの露骨な若者狙いの作りだ。

 

 F1と言われる20歳から34歳の女性視聴者層での視聴率が高いとCMの値段も高くなり、スポンサーもつきやすいので、その層の視聴者を狙う。いきおい番組で扱う話題も年金などの「高齢者向け」の話よりは、若手のイケメン俳優が作る手料理レシピなど「若者向け」になっていく。

 

 50歳を超えた視聴者には民放の朝の番組はみるべきものがなくなるなか、みのもんたの「朝ズバッ!」だけは高齢者の味方だった。

 しかも、経済評論家や政治評論家、ジャーナリストなどを毎回ゲストに呼んで、「ニュースになっている問題」について時間をかけて議論する、という「論」を重視する番組でもあった。

 

 

 いわば「老人の目線」「大人の目線」が生かされた報道・情報番組。

 それが消えていく。

 みのもんたが朝の番組から退場することで、どうなるか。

 確実なことはTBSも含めて、朝の番組はますます「若者シフト」が強まる。

 

 結果として、年金問題、医療問題、生活保護問題などが朝から扱われることはほとんどなくなる。

 朝の番組の低年齢化、エンタメ情報に特化した娯楽志向がますます強まる。

 考えさせる「論」は減り、短い時間で楽しいニュースが次々と切り替わるアップテンポの情報番組化が進むだろう。

 「怒り」から「楽しく」のシフトへ 

 みのもんたはの『朝ズバッ』は、名物コーナー『不連続シリーズ ほっとけない!』に代表されるように、みのの「怒り」を前面に押し出していろいろな問題に切り込むのがが特徴だ。

 「怒り」の路線は、物事の理不尽に怒り、改善させようとする力を持つ。

 一種の報道番組といえる内容をもっていた。

 それがみのもんたが去った今後、もっともっと「明るく」『楽しく」「軽く」「短く」なっていく。

 「楽しく」の路線は、ひとつの物事を突き詰めて考えない。

 

 みのもんたの毒舌や見当違いの主張が混じる「論」を、うっとうしいと思ってきた人も多いかもしれない。しかし、もう、そうした「論」は朝の番組から永遠に消えてしまうに違いない。

 次男の逮捕やセクハラ問題などで、一気に決定してしまった朝の報道・情報番組からみのもんたの退場。

 これから、朝のテレビがますます大人の視聴者や高齢の視聴者にとっては、縁遠いものになっていくことは間違いない。