Yahoo!ニュース

ジャッキーもトムも憧れる、命知らずの俳優のヤバすぎアクションを劇場で!今回は王道のセレクション

水上賢治映画ライター
「エースの中のエース」より

 昨秋、コロナ禍にありながら、連日大盛況となった特集上映<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選>。

 あの「ルパン三世」や「コブラ」のモデルにもなり、アラン・ドロンと人気を二分するフランスのスターとして活躍し、ジャッキー・チェンやトム・クルーズらにも大きな影響を与えながら、ここ日本では忘れられつつあったジャン=ポール・ベルモンドに再注目した同特集の第2弾となる<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>が現在、新宿武蔵野館で開催中だ。

 再び大きな反響を呼ぶ本特集の仕掛け人である配給プロデューサーで映画評論家の江戸木純氏のインタビューの後編。前回のインタビューでは主に第一弾の反響と、第二弾開催への経緯、そして作品のセレクションについてきいた。

 今回の後編インタビューでは、今回プログラムされた選ばれし5作品、ラインナップの経緯について語ってもらう。

 前回のインタビューでも触れたが、ベルモンドの映画はスクリーンでこそ!そのアクションシーンのすごさはスクリーンでこそ伝わってくる。スクリーンのサイズをきちんと意識して名カメラマンたちが撮っているという話が出た。

ベルモンドの代表作『リオの男』と『カトマンズの男』をいま

スクリーンで上映してお届けできる喜び

 江戸木氏自身も今回の第2弾の上映に当たり、こんな体験をしたという。

「『リオの男』と『カトマンズの男』は、傑作中の傑作で、ベルモンドを語る上で欠かせない、いわゆる代表作であることは疑いようがない。

 ソフト化もされている。なので第一弾の<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選>では、あえて外すことにした経緯がありました。『有名な作品だし、見ようと思えば見られるだろう』と

 ただ、ベルモンド映画総選挙をやってみたら、『リオの男』が1位で、『カトマンズの男』が4位と、案の定というか予想通りというか、両作品ともにひじょうに人気が高く、多くの人の支持を集めた。

 これでまだまだスクリーンで観たいと思っている人がいることがわかって、スクリーンで再び上映する意義が生まれた

 それで今回の第二弾はこのベルモンドの代表作2作品を主軸に、いわば王道のラインナップになっていくんですけど、よくよく考えると、『リオの男』と『カトマンズの男』を映画館で実際に観た方は、相当ご年配のみなさんで。

 実は、僕もスクリーンで観たことはなかったんですよ。今回の第二弾の開催に当たってのDCPのチェック試写でみたのが(スクリーンで観たのは)初めてでした。

 劇場の開館前、早朝7時からはじまったんですけど、もう感動でした。

 『リオの男』と『カトマンズの男』をスクリーンでみたいから、『自分はこの特集を企画したんだ』と思えるぐらいでした。

 とりわけおもしろかったのは『カトマンズの男』ですね。

「カトマンズの男」より
「カトマンズの男」より

 『リオの男』は、物語の筋もきちんとしていて、わりとちゃんとした映画なんですけど、『カトマンズの男』はひと言で表せば、たがが外れている(笑)

 ただただ、ベルモンドのアクションのために話が進んで、そのためにあっちに行ったり、こっちに行ったりしている。ベルモンドを『わざわざ』危ない方へ進ませるんですよね。アクションのために(笑)。

 テレビでみたときも、それらのアクションは『すごい』と心躍らされた印象が強く残っていたんですけど、映画館で観ると、もうそのすごさが倍増どころじゃない。アクションが畳みかけるように連なってこちらに押し寄せてきてもう圧倒されました。

『これまでの生涯でダントツにおもしろい映画じゃないか』というくらい面白かったですね『カトマンズの男』は。

 とにかく『リオの男』と『カトマンズの男』は、映画館で見たら、みんなびっくりするんじゃないかと思います。『これぞ映画だ』と。

 もうストーリーは突っ込みどころが満載なんですよ。通常で考えると物語を進めていく上で回収しないといけないことがある。

 でも、この2本は、ほっぽらかしにしているところがある(笑)。でも、そんなことどうでもよくなるんですよね。もう、ベルモンドさえ追っていれば間違いない。

 『映画ってこれでいいんだ』と納得させられてしまう。

 だから、今回、この2本を上映できて、みなさんに届けられることがうれしいです」

本特集の仕掛け人で配給プロデューサーで映画評論家の江戸木純氏 筆者撮影
本特集の仕掛け人で配給プロデューサーで映画評論家の江戸木純氏 筆者撮影

今回のラインナップは、ベルモンド映画の王道プラスα

 今回のラインナップ全体のセレクションの意図するところとしてはまず、ベルモンド映画の王道をいく「リオの男」「カトマンズの男」があって、ここに『アマゾンの男』が加わったという。

「この作品は、『リオの男』『カトマンズの男』と同じ、ベルモンドとのコンビで傑作を生みだしたフィリップ・ド・ブロカ監督の作品。

 『怪盗二十面相』以来、25年ぶり、久々にベルモンドとド・ブロカがタッグを組んでいて、『リオの男』と同じくアマゾン川流域を舞台に撮っていて、セルフオマージュが満載なんです。

 そして、現時点でのベルモンドにとっての最後の冒険アクション作でもあり、ド・ブロカ監督との最後のコンビ作でもある。

 つまり、名コンビであったベルモンドとド・ブロカ監督がいろいろやってきてたどりついた終着点といっていいかもしれない。

 そこで自他ともに認める傑作で二人が(『アマゾンの男』から)36年前に共に作り上げた同窓会というか、最後の一仕事と『リオの男』として感慨深いものがある。

 そういう意味で考えると、二人のコンビのひとつの最後の到達点だったのかもしれない。

 なので、『リオの男』『カトマンズの男』とあって最後に『アマゾンの男』と、この流れで見てもらえたらという気持ちがあってラインナップに入れたところがあります。

 この3本をみることで、ベルモンドとド・ブロカ監督という名コンビの遍歴もおおよそ見えてくると思います。

 そしてこの幸せな3本のラインナップを叶えてくれたのは何を隠そう、みなさんのおかげなんです。

 というのも、『アマゾンの男』はフランス公開時、とりわけ若年層から『時代遅れ』と無視されさんざんで、世界のほとんどの国で上映されることがなかった。

 いわば『忘れられた』作品だったんです。

 でも、昨秋の<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選>に多くの皆さんが足を運んでくださって、今回の第二弾につながって。

 反響があったことで王道である『リオの男』『カトマンズの男』の上映の道が拓けた。

 そして『リオの男』『カトマンズの男』の上映ができることで、今回『アマゾンの男』も上映する意義が生まれてくれた。

 なので、『アマゾンの男』はファンのみなさんのおかげで上映が叶った映画といってもいいかもしれません

「アマゾンの男」より
「アマゾンの男」より

 その3作品に、ド・ブロカ監督とはある意味対照的で、コメディとは一味違う、シリアスなベルモンドに出会えるフィリップ・ラブロ監督の『相続人』と、僕のセレクションとして日本では劇場未公開のままでVHS化はされたもののDVD化されていなかった幻の傑作『エースの中のエース』を加えたのが今回のラインナップです。

 前回は8作品で、僕が一観客として考えてもすべて観るのは難しいと思ったんですけど、コンプリートしてくださる方がたくさんいらっしゃった。

 ほんとうにありがたいことだったんですけど、今回は前回に比べると少しだけ楽になったかなと(笑)。

 また、ぜひスクリーンでベルモンドに出会ってもらえればと思います

 こう最後に言葉を寄せてくれた江戸木氏だが、次回、インタビュー番外編として、江戸木純的全5作品のみどころをお届けする。

<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>ポスタービジュアル  提供:エデン/キングレコード
<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>ポスタービジュアル  提供:エデン/キングレコード

<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>

新宿武蔵野館、名演小劇場、京都シネマにて公開中!

フォーラム仙台、横浜シネマ・ジャック&ベティ、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、中洲大洋映画劇場ほかにて上映決定! 

詳しくは公式サイト

写真は、「エースの中のエース」L’AS DES AS a film by Gerard Oury 1982 (C) STUDIOCANAL - Gaumont - Rialto Films GmbH All rights reserved.

「カトマンズの男」  LES TRIBULATIONS D’UN CHINOIS EN CHINE a film by Philippe de Broca (C) 1965 TF1 Droits Audiovisuels All rights reserved.

「アマゾンの男」 AMAZONE a film by Philippe de Broca (C) 1999 STUDIOCANAL - PHF Films All rights reserved.

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

水上賢治の最近の記事