コロナ禍で明るみに出た妊活迷子の駐在員妻たち

コロナ禍で妊活が難しく(写真は本文とは関係ありません)(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス感染の“先進国”となった中国では、日常生活が徐々に戻りつつある。それにもかかわらず、今、北京に駐在する日本人の一部の夫婦の間では、コロナ禍の影響を受け妊活が難しくなっているという。

妊活迷子の駐在員夫婦

「自分が仕事を辞めて専業主婦になれば妊娠のチャンスが増えると思いました。しかし現実はそう簡単にはいかなかったです。その上、今回のコロナです」

 コロナ禍での駐在員の妊活問題を訴えるのは、北京に住む31歳のさとみさん(仮名)。さとみさん自身も、北京の会社に勤める夫と妊活中だ。

 さとみさんの世代にとって、夫の海外赴任に妻がついていく大きな理由の1つが、妊活なのだという。

 さとみさんは、夫の海外赴任が決まった後、仕事を辞めて一緒に北京にやってきた。年齢的にも妊活に専念できる良い機会だと考えたのだ。さとみさんと日頃から交流のある、日本人の駐在員の妻たちの中にも、夫の赴任が最初から2~3年の期間限定と分かっていながら、日本での仕事を辞め、妊活を選択した人が多いという。

 しかし、夫は慣れない土地での激務に加え、連日、接待や出張に駆り出される。妻たちも環境の変化への戸惑いなどで、当初、期待していたように妊活に専念できず、「タイミングを逃してしまう事もしばしば…」だとか。

 さとみさんは「“妊活迷子”の駐在員夫婦は意外に多かったんです」と話す。その上にコロナ禍が起きた。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国は今年3月に入り、水際対策を強化した。国際線の飛行機を減便させ、さらには、外国人は有効なビザを持っていても原則的に入国を禁止した。

 さとみさんの駐在員妻の友人の中には、一時帰国のつもりが、予想以上の長期帰国となり、ビザの有効期限が切れてしまったり、夫の残りの任期を計算して中国に戻ることを諦めたりした人もいる。

焦る30~40代夫婦

「終わりの見えない別居生活に、特に焦りと不安を感じているのが私のような30代や40代の妊活夫婦なんです」

 さとみさんと同世代の夫婦は、別居生活が長引けば妊娠のチャンスを逃し、高齢出産になってしまうことへ不安が強いという。さらに、不妊治療が必要なカップルにとっては、別居によって選択肢が著しく狭まってしまう。

 さとみさんの友人の中にも、不妊治療を始めようと思っていたが別居によって先延ばしにした夫婦や、不妊治療を進めていたものの、別居によって治療を中断せざるを得なかった夫婦がいるという。

「不妊治療は金銭面の負担も大きいです。妊婦向けの治療薬もワクチンも無い今の状況で、コロナの感染リスクを考えると判断が難しく、不妊治療の先延ばしを決断した夫婦も多いです」

北京で妊娠しても…

 さとみさんは、一時帰国はしなかったため別居は免れた。夫とともに北京で妊活を続けられる状況にはある。

 コロナ禍の当初は、「在宅勤務時間が増え、接待や出張の自粛により夫が家にいる時間が増えて、これまで妊活迷子だった夫婦にとっては願ってもないチャンス」と却って喜んだが、冷静になって考えてみると、いざ妊娠したとしてもハードルが多いと気づいた。

 何より里帰り出産は難しい。

 先に述べたように、中国と日本の間の航空便は激減中。その影響で、里帰りするには、乗り継ぎが必要となり、1日で移動出来るとも限らない。そもそも人の集まる空港に行くのは感染リスクが高まり怖い。

 また現状では一度、出国すると中国への再入国は出来ないので、夫の付き添いを期待するのは難しい。

 万が一、感染の疑いなどがあれば隔離されるかもしれない不安がある。

 では北京で妊娠生活を送り、出産する方が良いのか?

 検診や出産費用には海外保険が適用されず、全額自己負担となる。北京で日本人に定評のある外資系病院に問い合わせたところ、宿泊料や新生児のワクチン接種などを含んで、費用は自然分娩の場合は66000元(約99万円)、帝王切開なら88000元(約132万円)と言われた。

 日本語対応をしてくれるなど安心できる環境を重視すると、どうしても日本で出産するより割高になってしまう。費用を考えただけでもなえてしまったという。

「せっかく夫と長くいられるのに、妊活に前向きになれなくなってしまいました」

 さとみさんは、コロナ禍が早く収束し、安心して妊活できる環境が一日でも早く戻ってほしい、と祈っている。