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中国人が大挙して目指す日本。新型肺炎の感染拡大は避けられない?

宮崎紀秀ジャーナリスト
羽田空港でも中国で感染拡大した肺炎に警戒を呼びかける(2020年1月20日東京)(写真:ロイター/アフロ)

 週明けの中国で、初めて武漢以外で新型コロナウイルスによる感染が確認された。患者はいずれも武漢への訪問歴があった。旧正月の大型連休で、延べ30億人の「民族大移動」が起きる中国。海外旅行先で人気トップの日本への感染拡大に警戒する必要がある。

首都北京で感染確認

 中国中部の武漢で集団発生している新型コロナウイルスによる肺炎で、ついに首都北京でも2人の感染者が確認された。感染を発表した北京市大興区の衛生部門によれば、2人は武漢への訪問歴がある。

 また南部の広東省深センでも、66歳の男性1人の感染が確認された。この男性も、やはり去年末に親戚に会うため武漢を訪れていた。今月3日に発熱などの症状が出て、深センに戻った後、診察を受け、感染が確認されたという。

 中国国内で、武漢以外の地域で感染が確認されたのは初めてである。

週明けに一気に感染拡大。死者は3人に

 さらに深センでは、この66歳の男性以外にも8人の感染が疑われ、隔離状態におかれている患者がいるという。その他にも中国沿海部、浙江省の衛生部門が同省内で、今月17日以来5人に発熱など感染の疑われる症状が出ていると発表した。この5人も武漢から来ていた。

 一方、感染の「爆心地」である武漢の衛生部門によれば、先週土曜日(18日)から日曜日(19日)22時までに、新たに136人の感染が確認された。うち1人が死亡した。

 これで、武漢での感染は合わせて198人、中国全土では201人。死者は3人に上った。

さらに韓国でも感染確認

 一方、中国以外では、日本、タイに加え、きょう韓国でも1人の感染が確認された。感染者は、武漢からの飛行機で訪韓した中国人女性という

 週明けに一気に感染が拡大した感があるが、これまでの感染例を見ると、いずれも武漢から、あるいは武漢への訪問歴があり、人の流れに伴い同地からウイルスが運ばれているであろう様子がよくわかる。

 中国では、今月25日に迎える旧正月、春節を挟んだ大型連休で、帰省や旅行など人の大移動が起きる。「春運」と呼ばれる、言わばこの「民族大移動」は、今月10日からすでに始まっている。2月18日まで合わせて40日間、延べ30億人が移動すると予想されている。

30億人が移動?人気訪問先トップは日本!

 そうした中で、忘れてはいけないのは、中国人の旅行先における日本人気だ。

 アジアを中心とするホテル予約ネット「アゴダ」が、きょう発表した春節期間中の中国人の旅行先で、人気トップは日本。それにタイ、フィリピンと続く。

 さらに、人気都市は、東京、大阪、札幌と日本の都市が上位3位を占める。ソウル、シンガポールと続き、京都も6位にランクインしている。

中国人が大挙して訪れる日本はどう対応するのか?

 日本政府観光局によると、2019年に日本を訪れた中国人は前年より14.5パーセント増の959万人以上。2014年以降、伸びは続き、日本人気は衰えを見せない。

 日本社会はこのインバウンドで多大な恩恵を得ており、外国からの訪問客を拒むことはできない。だからこそ、同時に、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を許すリスクがある点、特にこの春節期間中にそのリスクが高まる可能性を、関係者は改めて思い出して欲しい。

補足:最新データ

 日本時間20日20時のニュースで中国国営テレビが最新のデータを報じたので補足しておく。

 20日の18時(日本時間19時)までに国内で感染と感染疑いは224人。うち感染確認217人(武漢198人、北京5人、広東省14人)、感染疑い7人(四川省2人、雲南省1人、上海2人、広西チワン族自治区1人、山東省1人)。

 その他、日本1人、タイ2人、韓国1人。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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