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Z世代がハマる「Y2Kファッション」って? 20年ぶりに復活、受ける理由

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
リリー=ローズ・デップ。シャネル 2021年春夏プレタポルテコレクション(写真:REX/アフロ)

お腹見せやミニ丈、ボリュームシューズなど、今から約20年前にあたる2000年頃に流行したファッションがいわゆる「Z世代」に「Y2Kファッション」として受けています(Y2Kは「Year 2000」の短縮形。Kはkgやkmでおなじみの1000という意味)。日本で流行したギャル系ルックにも通じる装いです。世界的なブームになっていて、欧米の若きセレブリティの間でもY2Kルックが大はやり。今回はこのY2Kファッションを読み解いていきます。

今をときめくZ世代。その定義は「1990年代半ば~2000年代終わりに生まれた世代」。ざっくり10代~20代にあたります。「ジェネレーションZ」とも呼ばれ、生まれたときからスマートフォンがあった世代です。つまり、2000年当時をあまり知らない年頃なのですが、どうして当時のおしゃれを好んでいるのでしょうか。

2000年時代に活躍したセレブやポップスターが着こなしのお手本!

2003年のラスベガスでのパリス・ヒルトン(左)とニッキー・ヒルトン(右)。この時代に流行したストレートロングヘアも2022年に復活する予感!
2003年のラスベガスでのパリス・ヒルトン(左)とニッキー・ヒルトン(右)。この時代に流行したストレートロングヘアも2022年に復活する予感!写真:ロイター/アフロ

「Y2Kファッション」の共通点は、ポジティブ気分や未来的ムード、キュート感など。短め丈トップスや厚底ブーツなどが象徴的なアイテムです。ケミカルな色使いやキラピカの素材にもパワーと元気感が宿ります。こういった気持ちを上向かせるようなおしゃれは、制約の多かった2年間を経て、若い人たちが望むようになったものかもしれません。

2000年当時のおしゃれアイコンだったのは、LAセレブの代表格だったパリス・ヒルトンや、ポップスターのブリトニー・スピアーズ。派手め、リッチテイスト、自己主張を印象づける装いが持ち味でした。このような押し出しの強さには堂々とした自信がみなぎる凜々しさがあり、その雰囲気も「自分らしさ」を大切に考えるZ世代に支持を得ているように見えます。

Z世代には新鮮な驚き 当時のままでなく、モダンに今風アレンジ

復活した理由の一つに、流行のサイクルも挙げられます。ファッションのトレンドは20年周期といわれます。なぜ20年かといえば、それぐらい経つと、前回のブームを多くの人が忘れ、世代も入れ替わってしまうから。Y2Kもちょうどその20年周期のタイミング。いったん忘れ去られたので、今のZ世代には新鮮に映っているようです。

今回取り上げる「Y2Kファッション」の中でも、今のリバイバルで目立つのは「ヘルシーな肌見せ」です。バブル時代のボディコンシャス(ボディコン)とは違って、もっと健康的な見せ方で、メンズアイテムとのミックスでジェンダーレスに仕上げています。そのあたりのさじ加減が「モダンY2K」流着こなしのポイント。トップブランドもこぞって2022年春夏コレクションでZ世代向けにファッションを提案しました。今回は復活がめざましい「Y2K」の装いをご紹介します。

スリットを使って動きを強調 キーテイストは「健やかモード」

デュア・リパがヴェルサーチェ 2022年春夏コレクションのショーに登場!
デュア・リパがヴェルサーチェ 2022年春夏コレクションのショーに登場!写真:REX/アフロ

「VERSACE(ヴェルサーチェ)」と「FENDI(フェンディ)」が、お互いの役割を“スワップ”した「フェンダーチェ」(Fendace)コレクションのファーストルックを飾ったのは、イギリスのポップアイコンでファッションモデルのデュア・リパ。ラグジュアリーブランドもY2Kを積極的に取り入れています。

こちらのルックでは部分的にお腹をチラ見せ。スカートにもスリットを入れて、伸びやかな脚線を演出。素肌を見せる演出としてはほかにも布を切り取るカットオフやカットアウトがあります。2022年春夏コレクションでは様々なブランドが肩周りや腕周り、腰、太ももなどをくり抜くような形のデザイン服を提案しています。

深いスリット入りのドット柄ワンピースにロングブーツでコーデしたゼンデイヤ
深いスリット入りのドット柄ワンピースにロングブーツでコーデしたゼンデイヤ写真:REX/アフロ

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』への出演で話題を集める女優で歌手のゼンデイヤ。自らも1996年生まれのZ世代であり、同世代から強い支持を受けているファッションリーダーです。この日の装いでは、ドット柄のワンピースに入った深いスリットから、健康的に脚を露出。膝上まで届くニーハイブーツとのコンビネーションで、健やかなフェミニンを薫らせています。両袖もほんのり透けて、センシュアル(官能的)なたたずまいです。

ミニ丈×ボリュームシューズがお約束 「スポーティに初々しく」

ニューヨークで発表されたコーチ Spring 2022 コレクション
ニューヨークで発表されたコーチ Spring 2022 コレクション写真:IMAXtree/アフロ

ミニ丈もY2Kファッションの主役的な存在です。ワンピースやミニスカート、ショートパンツと、アイテムは様々。「COACH(コーチ)」は2022年春コレクションをZ世代に向けて発信しました。チェック柄のワンピースはミニ丈のキュートな着映え。逆に太めに張り出した両袖が華奢感を引き出しました。

実はこちらのピンク色ワンピースはベースボールシャツがベース。同じピンクのベースボールキャップをかぶって、スポーティ感たっぷりの装いにまとめ上げています。新トレンドに浮上したミニボトムスの足元はボリューム靴がお約束。あえてゴツめの靴で合わせることによって、ジェンダーレスの要素をプラス。脚の細感も引き出しました。

ミニ丈ボトムス×ボリュームシューズで決めた「BLACKPINK」
ミニ丈ボトムス×ボリュームシューズで決めた「BLACKPINK」写真:Shutterstock/アフロ

世界的なスターとなり、勢いが止まらない「BLACKPINK(ブラックピンク)」。彼女たちのファンにもZ世代がたくさんいます。そんな「BLACKPINK」のメンバーたちはY2Kファッションのおしゃれアイコンでもあります。マイクロミニ丈に足元はボリュームシューズでスポーティテイストをミックスしました。

Y2Kファッションの基本テイストはやりすぎやくどさを抑えた、ヘルシー感が肝心。「BLACKPINK」のお腹見せや脚見せも健やかでクリーンな雰囲気です。白スニーカーや黒ブーツが装いのムードメーカーになっています。

「腹見せはジェンダーレス」に仕上げる アンチ・セクシーのさじ加減

ローライズデニムが復活!MSGM 2022年春夏コレクション
ローライズデニムが復活!MSGM 2022年春夏コレクション写真:REX/アフロ

2000年代にヒットしたボトムスの一つがローライズのデニムパンツです。いわゆる「腰ばき」のスタイルが街のあちこちで見られました。このローライズデニムも2022年春夏シーズンには復活の兆し。ただし、当時と違うのは、セクシー感を遠ざけているところ。むしろ、性別を感じさせにくい「ジェンダーレス」の風情が濃くなっています。ボディラインを拾わないバギーシルエットが打ち出されている点もジェンダーレス寄りの提案を印象づけています。

「MSGM(エムエスジーエム)」の2022年春夏コレクションではローライズデニムがお目見えしました。腰ばきのスタイルは健在ですが、たっぷり幅があるので、メンズライクな見え具合。トップスはかなりのクロップド丈で、お腹周りを広めに肌見せ。大胆でありながらスッキリした雰囲気に整えています。デコルテも開いていますが、むしろ水着のような表情を感じさせ、いやらしさを感じさせないヌーディルックに仕上がっています。

ヘルシーに腹見せした、ジェンダーレスコーデのヘイリー・ビーバー
ヘルシーに腹見せした、ジェンダーレスコーデのヘイリー・ビーバー写真:Splash/アフロ

肌見せはセクシーなイメージでとらえられがちですが、演出次第ではむしろワイルドな表情をまとうこともできます。たとえば、ヘイリー・ビーバーはカラフルなカーディガンのボタンを1個だけ留めて街に出ました。ほとんど全開に近い留め方ですが、不思議とセクシーというよりは、タフな雰囲気が強く出ています。

ほとんど色落ちさせていないロウデニムのパンツがマニッシュ感を高めています。黒レザーのバケットハットも男っぽいアイテム。カーデの色となじむグリーンのクラッチバッグがアクセントに。アスレティックなスニーカーもストリート気分を漂わせました。

「Y2Kファッション」は大人世代にも取り入れどころいっぱい

Z世代がハマっている「Y2Kファッション」をいろいろなバリエーションでお伝えしました。大きなうねりに育ってきたジェンダーレスの装いとも相性がよいから、Z世代以外でも試してみたくなるスタイリング。

スリット使いやボリュームシューズ、ジェンダーレスコーデなど、20年を経ての新たなアレンジが加わって、Y2Kはさらにファンを増やしていきそうな気配です。

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ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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