もしもスズメバチに襲われたら? 「逃げるが勝ち!」

この写真はアシナガバチ。相手は飛べますが、それでも逃げるが勝ち。(写真:アフロ)

 突然スズメバチの群れに襲われたら、どうすればよいのでしょうか?

 生態学の専門家に、対策を聞いてみました。

 対策を一言でまとめると、

まずは逃げること、迅速に逃げられない場合は逃げながら相手を叩き潰すこと

ということです。

スズメバチに人が襲われて死傷する事件は続いています

 長崎県佐世保市の公園で、親子連れを含む来訪者たちがスズメバチに襲われました。このとき、公園の看板犬が助けに駆けつけたことが話題になっています。

 佐世保市江迎町の白岳自然公園では、ボーダーコリーのロン(オス、8歳)が看板犬として来園者を迎えている。1日に近くの山で登山客がスズメバチの群れに襲われた際には、身をていしてかばい、客を避難させた。飼い主で公園の所長、横松賢一さん(62)は「人を気遣うことができる犬だが、ここまでするとは思わなかった」と愛犬の勇気ある行動に驚いている。

出典:長崎新聞 :ハチから幼児守った看板犬 (2017年10月28日更新)

 それでも6人がスズメバチに刺されてしまいましたが、命に別状はなかったとのこと。犬のロン君は全身20ヶ所以上を刺され、1週間ほど体調不良が続いたそうですが、回復したそうです。ロン君、よかったね。

 しかし9月には、愛媛県で電動車椅子に乗った高齢女性が、スズメバチに50分間刺され続けて亡くなる事件も起こっています。

 愛媛県大洲市の山間部で9月、福祉施設のデイサービスを利用し、帰宅途中だった車椅子の女性(87)がスズメバチに刺され、死亡していたことがわかった。

 100匹以上のハチに襲われたとみられ、救急隊員も駆けつけたが近寄れず、約50分間、ハチに刺され続けたという。

 (略)救急隊が現場に着いたが、隊員が防護服を着ていなかったためすぐに近づけなかったという。(略)施設によると、女性は電動車椅子に乗っていたが、自力で避難できなかった。付き添いの職員もハチに刺され、10メートルほど離れて携帯電話で施設に連絡している間に、女性にハチが襲いかかったという。

出典:YOMIURI ONLINE:ハチ100匹が襲撃、50分間刺され続けて…車いす女性死亡(2017年10月6日)

 亡くなった方の不安と恐怖と苦痛、目の前の出来事に対して何もできなかった職員・救急隊員の方々のお気持ちを思うと、言葉もありません。

 何ができたのでしょうか? どうしていればよかったのでしょうか?

 生態学の専門家・Cさんに聞いてみました。

スズメバチは日本中におり、冬以外の時期に活動

 蚊や蜂は主に温暖な地域で問題になるという印象を持たれている方が多いと思われますが、実際にはスズメバチは日本中に分布しています。

 冬、女王蜂が一匹で越冬し、春になると巣を作りはじめ、生殖活動を行い、また寒くなると女王蜂だけで越冬します。

 活動の活発な時期は春から秋ですが、温暖化が進んでいる昨今、「この地域は10月(例)になれば大丈夫だから」という過去の経験に基づく判断は、やや危険かもしれません。

 私自身、福岡県の豊かな自然の中で20歳までを過ごした経験から、自然の脅威を計りがちです。気をつけなくては。

自分が襲われたら? 身近な誰かが襲われたら?

まずは巣から離れる

 生態学者、特に野山に分け入って調査研究を行う方々には、昆虫・ヘビ・獣などの脅威がつきものです。Cさんによれば、医師によるアレルギーテストの結果、必要な人にはアナフィラキシーショックを応急処置するためのアドレナリン自己注射薬が処方され、その場合は携行が必須とのこと。

 スズメバチには襲われず刺されないことが最良ですが、それでも避けられない場面はあります。

 襲われてしまったら、まず逃げること。ただし、どちらに逃げてもいいわけではありません。巣から離れることが重要です。

「襲われた時は、まず即座に、巣から距離を取ることが大切です」(Cさん)

 獰猛なスズメバチといえども、自分の安全な「ホーム」から離れたいわけではありません。

巣から、最低200m離れれば、最後まで取り付いてくる蜂の数は極少化できます。叩ける個体を上から遠慮なく叩き潰しながら、短時間で巣からの絶対距離を稼ぐことを考えてください」(Cさん)

 自分の「ホーム」である巣から離れることは、スズメバチにとっても怖いのです。巣から200m離れれば、よほど根性のある少数しかついてきません。叩き潰しながら逃げれば、ついてくる少数を、さらに少なくできます。

 健康な成人が1分間走れば、200メートルを超えるでしょう。「巣の反対側に1分間以上、蜂を叩き潰しながら走る」と考えておけば、逃げ切れそうです。

払っちゃダメ、叩き潰せ

 私も含め、慣れていないと、ハチを手で横に払ってしまいそうですが、これは絶対にダメということです。

「 蜂は上から力一杯叩き潰し、絶対に横から払わないことが鉄則です」(Cさん)

既に刺されている・噛まれているという状況を考えると、横に払っても離れてくれるわけがありません。まだ刺されたり噛まれたりしていないのなら、横から刺激すると、刺されたり噛まれたりする可能性が増えそうです。叩き潰して一発でご昇天いただくのが最良です。

スズメバチはいるものと考え、逃げる用意を

 人間は、スズメバチにとっても脅威です。人間を襲うスズメバチの心情は、多くは「知らずに巣に近づかれたため脅威認定」、あるいは「食事中のところを人間に近づかれたためパニクりまして」ということのようです。

「愛媛県の事件では、軒先に巣がぶら下がってたんですよね。刺された方のお宅なのか、移動途中なのか、ご近所の例えば廃屋なのかは分かりませんでしたが」(Cさん)

 スズメバチがいるかもしれないと考えていなければ、咄嗟にどうしようもなかったでしょう。職員の方に出来たことは?

「その方を背負って、自分も刺されながら必死で逃げることは、できたかもしれません」(Cさん)

 押して逃げることも出来たかもしれません。

 電動車椅子のどこかには、手押しに切り替えるためのスイッチ類が必ずあります。特に日本では、手動の車椅子フレームにモーターを組み合わせた「簡易電動」と呼ばれる電動車椅子が一般的です。本体重量は25kg程度ですから、人を乗せていても、手押しで動かすのはそれほど大変ではありません。「簡易」ではない電動車椅子の場合、本体重量は100kgを超えることが一般的ですが、それでも押して逃げられない重量ではありません。

 人命を乗せる装置である以上、何かあったときの「どうにもならない」を避けるための仕組みは、必ずあります。思いやりや優しさではなく、装置への理解と知識、いざというときのオペレーションの訓練が大切そうです。

「そうなんですか。介護者が、そういう基本的な知識をシステマティックに得られないとすれば、問題かもしれません」(Cさん)

 電動車椅子ユーザである自分としては、「生活に必要不可欠な、自分の生命身体を預けられる信頼性を持った装置」として、電動車椅子を見てほしいなあという思いがあります。電動車椅子は、他の誰かの感情や障害者観を投影する物体である以前に、車やバイクや自転車や人工呼吸器などの仲間です。

 人命を乗せ、それなりのパワーで動く装置である以上、緊急停止・緊急脱出のための機能は必ずあります。

参考:ヒアリの場合は?

 ヒアリは、冬に向けて話題になる場面が減ってきましたが、来春になればまた警戒が必要でしょう。

「ヒアリ」上陸~正しく怖がるために知っておくべきこと(最終更新17年7月23日)(榎木英介氏)

 対策は?

「同じです。集団の活動範囲から離れることです。でもアリなら、数歩で圏外に出られますよ」(Cさん)

ガゾリンをかけるという対策が、ネットで流布していましたが。

「用意するのに時間がかかります。初動で、どうやって最短で圏外に出るかが大切です。相手、アリは数が武器ですから」(Cさん)

叩き潰すという対策は?

「一発で動きを止める叩き方をしないと、噛まれます」(Cさん)

ハチよりはるかに容易に逃げられるわけですから、まずは数歩離れ、まだ食いついているアリがいたら対策すればよさそうです。

参考:相手が人間だったら? 猛獣だったら?

「刃物を持った通り魔でも、クマでもスズメバチでも同じです。(できれば先に発見して)相手の攻撃できる範囲、つまり間合いを見切って外すことです」(Cさん)

結論:とにかく逃げる(より安全な方へ)

いずれにしても、とにかく逃げること、より攻撃されにくい方向に逃げることが正解のようです。