2017衆院選公約・政策比較:どうなる? 生活保護の母子加算 どうする? 外国人生活保護

お金を使うことでしか示せない思いがあります。(写真:アフロ)

明日、2017年10月22日は衆院選投票日。

生活保護、特に母子加算と外国人生活保護について、各党の公約を比較します。

なぜ「母子加算」と「外国人」なのか

 生活保護は人間の生活のありとあらゆる側面に関係をもつ制度ですが、今回は、生活費(生活扶助)の「母子加算」と、外国人に対する生活保護を取り上げます。

 最も影響を受けるのは、選挙権をもたない人々だからです。

 

なぜ母子加算なのか

 

 生活保護の母子加算は、「母子」加算という名称ではありますが、子どもがいて、両親の一方または両方がいない生活保護世帯を対象としています。父子家庭も、子どもを祖父母が育てている家庭も対象です。

 母子加算は、麻生内閣下で2009年4月に完全廃止されましたが、同年、民主党への政権交代が行われた後、鳩山内閣下で2009年12月に復活しました。しかし現在は、来年度から段階的廃止や減額が行われる可能性が非常に高い状況です。もし減額が行われたら、子どものいる生活保護世帯に対して大きな打撃となるでしょう。「母子加算だけ」で止まりそうな流れではないからです。

 2013年8月からの生活費分引き下げ、その後行われた家賃補助(住宅扶助)引き下げは、子どものいる世帯、特に複数の子どもがいる世帯の引き下げ幅が大きくなる形でした。この他、家族の人数に対する保護費の減額幅(逓減率)も大きくなりました。2人世帯は1人世帯の倍の費用がかかるわけではないので、保護費が1人世帯の倍になるわけではありません。「家族の人数が増えれば増えるほど、人数に対するスケールメリットは大きくなる」という考え方から、もともと、人数が多くなればなるほど、1人あたりの生活費は少なくなる形でした。2013年以後の生活保護制度の見直しの中で、この減額がさらに大きくなりました。生活費分本体の引き下げと合わせ、2013年から現在までで約5万円の減額となっている世帯もあります。この他に、家賃補助の引き下げもありました。

 ここにさらなる打撃が加えられたら、子どもの貧困問題は解消どころか、さらに深刻になることでしょう。母子加算の次に、児童養育加算(子どもがいる生活保護世帯すべてが対象)の「見直し」が始まる可能性もあります。そして、最も影響を受ける子どもたちには、選挙権がありません。

なぜ外国人の生活保護なのか

 外国人と生活保護の問題は、生活保護制度を象徴するような問題の一つです。

 生活保護制度には「他法他施策優先」という原則があります。このため、他の法律でどうにもならないことや他の制度の不備が、全部生活保護に押し付けられてきました。日本に在住・在留する外国人の救済も、その一つです。

 現在、外国人が日本の生活保護を新規に利用することは、「日本国籍の子どもがいる」といった例外を除き、「ほとんど不可能」といってよいほど難しくなっています。すでに、厳格過ぎるほど厳格なのです。現在の制度と、以下に述べる1990年の神戸市の事例についての詳細は、ダイヤモンド・オンラインの拙記事もご参照ください。

 このことは、さまざまな問題を引き起こしています。たとえば、日本に在留している外国人が緊急に医療が必要になった場合、無保険状態であれば、国民健康保険で医療費をカバーすることができません。公費で医療費をカバーするとなると、使えるものは生活保護制度しかないのです。外国人が無保険状態になる背景は、本人の故意や「うっかり」だけではありません。「日本の企業で働いていたものの、雇用主が保険加入を怠っていた」という場合もあります。いずれにしても、無保険なら、日本の国民健康保険の対象にはなりません。

 現在とほぼ同じ形の生活保護制度が発足した1950年、国民皆保険制度はまだ発足していませんでした(発足は1961年)。このため、医療だけの生活保護(医療単給)が広く利用されました。「生活保護で医療費を負担するのを止め、国民健康保険に一本化する」という筋の通った方向性は、1950年代から議論されてはいるのですが、2017年現在も実現されていません。

 1990年、神戸市は、急病で医療を必要とした市内の外国人留学生に対し、無保険状態だったため医療だけの生活保護を適用し、病院に医療費を支払いました。神戸市の負担は25%、残り75%は国の負担です。しかし国は生活保護の適用を認めなかったため、神戸市は全額を負担することになりました。神戸市民が市に代わって国を相手に訴訟を行いましたが、敗訴。

 健康保険に加入しているかどうか不明の外国人が医療の提供を受け、後になってから無保険状態だったことが判明した場合、現在は基本的に、医療機関が「自己責任」で医療費の請求を行うことになります。しかし、本人や本国の家族に支払い能力がない場合は、どうしようもありません。「国籍のある国が支払うべき」という意見は広く見られますが、その国の政情によっては、帰国した本人や家族が危険な状況に陥る可能性もあります。

 そもそも、人の「見た目」や言語と国籍は、必ずセットになるものではありません。「日本国籍の父親と外国籍の母親の間に生まれ、見た目がまったくアジア系らしくなく、日本以外の国で育ち、日本語はほとんどできず、日本文化に馴染みがない」という日本国籍の人も実在します。

 外国人生活保護の問題は、国籍の問題ではなく人間の問題と考える必要があります。まず、現在すでに厳格過ぎるくらい厳格な運用となっている現状、生活保護によってしか救済のしようのない場面が多々ある他法他施策の現状を捉え、そこから「では、どうすればよいのか?」を丁寧に考えていく必要があります。

では、各党の政策を拝見

自民党

 公約パンフレット内の生活保護に関する言及は

生活保護世帯の子供の進学支援の強化など生活困窮者の自立に向けた支援や子供の貧困対策を強化します。

のみです。

 母子加算・外国人生活保護に関する明確な言及はありませんが、外国人に関しては、訪日観光客・外国人労働者に関する記述が多数あります。

公明党

 公約パンフレットに、母子加算・外国人生活保護に関する明確な言及はありません。

 生活保護全般については、下記の記述があります。

生活困窮者一人ひとりに寄り添う自立支援を実現するため、居住支援や子どもの学習支援など生活困窮者支援のさらなる充実を図るとともに、生活保護世帯の子どもの大学等への進学を含めた自立支援を推進します。

 また外国人に対しては、観光・労働に加え、難民に対する記述があります。

急増する難民申請者問題に対応するため難民認定制度を適正化するとともに、認定難民及び人道的配慮等で保護された外国人への日本語支援等、公的支援を強化します。

希望の党

 公式ページ内の「政策について」に、生活保護に関して

格差が極大化するAI(人工知能)時代を念頭に、基礎年金、生活保護、雇用保険等をBI(ベーシックインカム)に置き換えることを検討する。所得税増税と差引きすると、低所得者は給付増、高所得者は負担増となる。

という言及があります。

 母子加算・外国人生活保護に関する明確な言及はありませんが、外国人労働者への期待は語られています。

日本共産党

 公約パンフレットには、生活保護を他法他施策と関連させた記述があります。

安倍政権は、この5 年間で社会保障予算の「自然増」を1 兆4600 億円削減し、社会保障を劣悪にしながら、“小泉内閣を上回る規模で社会保障費を削った”と自慢しています。安倍政権の「自然増削減」は、医療費の負担増、介護の利用料値上げ、生活保護費の切り下げなど、社会保障制度の基盤を掘り崩し、国民生活に深刻な打撃を与えています。「自然増削減」以外にも、「すでに決まっていた」ことだからと、年金額の1 兆7000 億円削減や年金保険料の値上げを冷酷にすすめました。これらをあわせた国民が受けた被害─負担増と給付減は、6 兆5000 億円にものぼります。

 母子加算の廃止には反対の姿勢が、公式サイトで示されています。

自公政権のもとで廃止され、国民の世論と運動を受けて民主党政権で復活された「母子加算」をめぐっても、2018年度の制度改変に向け、「有子世帯への加算の見直し」の名で、再び削減・廃止する動きが持ち上がっています。これらの改悪に反対し、「母子加算」「障害者加算」など、社会的弱者の生活と権利をまもる仕組みをまもり、拡充します。

 外国人生活保護については、難民認定手続きと関連させた記述が、公式サイトにあります。

支援団体や弁護士などからは、この期間の生活保障が不十分であることについて、多くの指摘があがっています。かつては国民健康保険の加入、生活保護の受給は認められず、就労にも制約があるなか、外務省所管の財団法人が難民認定申請中の生活困窮者に支給する生活支援金が唯一の頼りという状況でした。国連の人種差別撤廃委員会からは2010年、わが国に対し、すべての庇護希望者の権利、とくに適当な生活水準や医療ケアに対する権利が確保されるべきであるとの勧告がありました。同年3月、申請者の生活に配慮して、申請から6カ月を超えれば就労できるように改善されましたが、一部メディアには「これが偽装難民を多数生む温床となっている」と問題視する論調もあり、不十分・不安定な状況が続いています。

立憲民主党

 公約パンフレットには、母子加算・外国人生活保護とも、記載が見当たりません。

 政府の再分配機能については、

所得税・相続税、金融課税をはじめ、再分配機能の強化

とあります。

 また、一般的な差別解消については

あらゆる差別の禁止―LGBT差別解消、性暴力被害者を守る支援センターの設立、選択的夫婦別姓の実現、国政選挙へのクオータ制の導入

と述べられています。

日本維新の会

 公約パンフレットには、母子加算・外国人生活保護とも政策の記載がありません。

 大阪市での実績のみ、

【維新改革】大阪市による生活保護の抜本的見直し

○自立支援の強化と審査の適正化の取組により平成24年度に初めて前年を下回る。

○国に対し生活保護法の改正を働き掛け平成25年12月に実現し、

 福祉事務所の調査権限の強化や返還金と保護費の相殺など多くが盛り込まれた。

○日雇い労働者の自立支援など「西成特区構想」。

と紹介されています。

社会民主党

 公約パンフレットには、母子加算・外国人生活保護に関する記述は見当たりませんが、生活保護一般に関して

生活保護

○生存権を保障する生活保護制度の縮小を許しません。行政の対応を点検、改善するとともに、ケースワーカーの育成、増員、資質の向上に取り組みます。

と記述されています。

日本のこころ

 母子加算および外国人生活保護に関する明確な記述はありません。

 公式サイト内の政策実例には、

生活保護制度を見直し、給付付き税額控除制度の導入による最低所得保障と一体化を図る。また、生活保護者への医療制度の改革を推進する。

とあります(どうでも良いツッコミですが、「生活保護者」という用語が意味しているものは何なのでしょうか? 生活保護受給者(厚労省用語では「被保護者」)のことでしょうか? それとも保護を行う側(≒福祉事務所+各自治体)のことでしょうか?)。

記述が「ほとんどない」ことが意味するもの

 正直なところ、母子加算と外国人生活保護についての記述が「ほとんどない」ということに驚きました。具体的な記述があると言えるのは日本共産党だけ。他の政党は、生活保護全般について「どうしたいのかを読み取れる記述は、まったくないことはない」という状況、母子加算や外国人生活保護といった個別の課題についての記述はありません。

 このことは、日本全体の無関心の反映ではないかと思われます。生活保護世帯の子どもや貧困状態にある外国人は、愛情や憎悪の対象ではなく、もはや関心も向けられない存在になってしまったのかもしれません。

 でも、彼ら彼女らは確かに、現在の日本に生きている存在です。愛情と関心を必要とする子どもたちとして。あるいは、日本人同様あるいはそれ以上の義務はあるものの、権利は制約されている外国人として。

あなたに選挙権があるのなら

 あなたが選挙権を持っているのなら、まずは、ご自分の権利を大切にしていただければと思います。

 子どもたちや外国人には、選挙権はありません。

 あなたの選挙権には、将来の日本の大人たち、日本社会に生きる隣人たちの運命も託されています。

 棄権だけはやめましょう。