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KO負けしたネリの参謀に直撃インタビュー「運に見放された夜だった」

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
フィゲロアの強打を浴びるネリ(写真:Esther Lin/SHOWTIME)

 15日(日本時間16日)米カリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツパークでWBC・S・バンタム級王者ルイス・ネリ(メキシコ)がWBA同級レギュラー王者ブランドン・フィゲロア(米)に7回2分18秒KO負け。初黒星を喫しベルトを失った。試合から3日後、ネリのトレーナーでメキシコ・ティファナで「サングレ・ヌエバ(新しい血)ジム」を営むイスマエル・ラミレス氏に電話で話を聞いた。

コンディション?「彼に聞いてくれ」

――オーラ、コモエスタ?(やあ元気?)

ラミレス「ビエン、ビエン(元気だよ)」

――フィゲロア戦の感想を聞かせてください?

ラミレス「いいよ。でも感想と言われてもねぇ……(苦笑)」

――失望した?

ラミレス「確かにそうだけど、(敗戦の)責任を感じている。ただ選手と同じで『絶対に勝つ』と信じていても必ず実現するとは言えないからね」

――セコンドとしては自信があった?

ラミレス「自分では(ネリが)ノックアウトで勝つと思っていたよ。敗因を分析すればキリがない。常に勝つチャンスを求めてコーナーから送り出していたけど、アドバイスを聞き間違えたところがあった」

――具体的には?

ラミレス「たとえば自信過剰になるな、少し抑えろと言ったんだけど……」

――ネリのコンディションはよかった?

ラミレス「それは彼に聞いてほしい。私から言えるのはスパーリングをはじめ、調整に怠りは全くなかった」

――あなたに負けの責任をぶつけることはなかった?

ラミレス「ノー。今のところはないよ。勝った時と同じで、こっちのことはそんなに重要とは思っていないから」

運に見放された……

 長年コンビを組み、当初は私生活もサポートしたラミレス氏と一旦別れたネリはロサンゼルスの名将フレディ・ローチ・トレーナーに弟子入りした。その後サウル“カネロ”アルバレス、オスカル・バルデス(ともにメキシコ)をはじめ今、多くのトップ選手を指導するエディ・レイノソ・トレーナーの門を叩いた。しかしレイノソ氏とは昨年9月のアーロン・アラメダ(メキシコ)との王座決定戦の後コンビを解消。再びラミレス氏との二人三脚でフィゲロア戦に臨んだ。

――ネリは122ポンド(スーパーバンタム級)にとどまるのか、それとも118ポンド(バンタム級)にUターンするのか、はたまたフェザー級に上がるのか?

ラミレス「それはまだわからない。これから時間をかけて決断すると思う。プロモーターとの関係も影響するだろうから」

――フィゲロアについてネリは何と言っていますか?

ラミレス「ネリは『年齢も近いし、無敗同士。だけど今回がプロで32戦目の自分よりキャリアは10戦ぐらい少ないから負けるはずがない』と言っていたよ。その点はショックだったみたいだ。でも無敗の選手でもいつかは負ける。“マラ・ノーチェ”(運に見放された夜)だったと。私も同感だ。すべてのボクサーは敗北を喫する運命にある」

――ネリが「またいっしょにやりたい」と望むなら受け入れますか?

ラミレス「彼にその気があるなら、こちらはいつでも教える準備をしておく。常にドアは開いているよ。我々の間でトラブルになったことは一度もない。自分の仕事を全うするだけだよ。もし彼が別れたい、別のコーチのもとへ行くと決断しても私は引き止めない。今は家族と子供たちとゆっくり休養してほしいと思っている」

左端がラミレス・トレーナー(写真:BoxingScene.com)
左端がラミレス・トレーナー(写真:BoxingScene.com)

サムライ精神に目覚めたネリ

――ネリが一時期レイノソ氏のもとへ移ったことに関して……。

ラミレス「たくさんのことが話題になったね。(レイノソ氏が)実行したモデルチェンジとかね。でもメディアが取り上げたほどネリに変化があったわけでない。その前ネリはフレディ・ローチを師匠にした。その時、ジムに出入りする誰からか、日本のサムライ精神のことを吹き込まれたらしい。名人や師匠、教師の存在は絶対だと。『でも彼らにしてもパーフェクトな者はいない、時には害を及ぼすこともあるのではないか』と彼はこぼしていた。『だから、まず強い選手ありきで、その選手がいい師を探すのだ』と。それでも今度の敗戦でネリはサムライのスピリットを見直して今後の糧にしたいとも思っているようだ。それは『ボクシングだけでなく、人生において間違いを起こさないための模範にしたい』とも」

 悪童ネリも今回のKO負けでようやく改心するのか?ただ痛烈な敗北を喫したことで、他人に責任転嫁し、再びトレーナー行脚に出る可能性もある。しかし結局また“恩師”ラミレス氏のもとへ戻ってくる気がする。だんだん口数が多くなってきた同氏に質問を続ける。

名将フレディ・ローチ氏(中央)に師事したこともあったネリ(写真:Amo Tijuana)
名将フレディ・ローチ氏(中央)に師事したこともあったネリ(写真:Amo Tijuana)

山中戦のように仕上げてみせる!

――また試合のことに戻りますが、フィゲロアが途中から左右にスイッチし出したのは影響しませんでしたか?

ラミレス「ノー。それはなかった。純粋にフィゲロアがいいボクサーだと認めたい。それとフィゲロアには特別コーチとしてホエル(英語ジョエル)ディアス(カリフォルニア州の名将の一人)が陣取っていたけど、それも勝負には関係なかった」

――以前、ご自身の報酬のことでネリに不満を表していたようですが、今回はどうですか?

ラミレス「この件は他人に公言したくない。彼と2人だけでよく話し合いたい。繰り返すけど、人生には“マラ・ノーチェ”が必ずある。エクスキューズはそれだけ。あの夜はフィゲロアがベターだっただけ。もし次、フィゲロアと再戦できれば(ネリは)ノックアウトで雪辱できる。私がまたコーナーにいるという条件でね」

――ネリは復活しますか?

ラミレス「ヤマナカに勝った時のトレーニングが実行できれば必ず彼は復活する」

――今日はいきなりの取材ですみません。ありがとうございました。

ラミレス「デ・ナダ(どういたしまして)。アミーゴ、ミウラ」

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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