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悪童ルイス・ネリが強気の発言。1年ぶりの試合を前に母国ファンは「規律を守れるかしら…」

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
前回パヤノを沈めたネリは久々のリングとなる(写真:REX/アフロ)

スーパーバンタム級でも自分が最強

 前WBC世界バンタム級王者ルイス・ネリ(メキシコ)の復帰戦が迫ってきた。試合は26日、米コネチカット州アンキャッツビルのモヒガンサン・アリーナで開催される。相手は同じメキシコのアーロン・アラメダ。WBC世界スーパーバンタム級王座決定戦としてゴングが鳴る。同級王者レイ・バルガス(メキシコ)が脚を骨折したためすぐにリングに上がれず休養チャンピオンへシフト。強運の持ち主ネリに2階級制覇のチャンスが巡ってきた。

 23日(日本時間24日)現地でプレスカンファレンスが行われた。アラメダ(25勝13KO無敗)もWBC6位にランクされる選手だが、ネリ(WBC1位。30勝24KO無敗)は勝って当然、眼中になしとも取れる態度で対応。「122ポンド(スーパーバンタム級)で自分がベストであると本当に信じている。私以外ではブランドン・フィゲロアがクラスのトップだと思う。ぜひとも次は彼と戦いたい」と明かした。

 WBAスーパーバンタム級レギュラー王者のフィゲロアも同じリングでダミアン・バスケス(米。元WBC&IBFスーパーバンタム級王者イスラエル・バスケスの甥)と防衛戦を行う。これまで同級の体重で戦ったこともあるネリだが、アラメダ戦が公式なデビュー戦。いきなり「俺が最強だ」と主張されても納得できない。ネリらしい大口と言えばそうなのだが、土曜日、先にリングに登場する予定のメキシコ人は勝利を収めて次のターゲット、フィゲロアの試合を観察するつもりでいる。

 「それがホテルの部屋になるのか会場のドレッシングルームになるかはわからないけどソーシャルディスタンスを保ってじっくり彼のファイトを観戦したい。まあ、向こうも私の試合を見ることはわかっているけどね」(ネリ)

 一部のメディアによるとネリはフェザー級進出まで口にしているという。開いた口が塞がらないが、会見でネリは「アラメダに勝ってまずは2階級チャンピオンなる。そしてフィゲロアとやりたい」と締めくくった。

23日の会見で抱負を語ったネリ(写真:Amanda Westcott/SHOWTIME)
23日の会見で抱負を語ったネリ(写真:Amanda Westcott/SHOWTIME)

アラメダはサウスポー対決に自信

 さて相手のアラメダだが、メキシコ・ソノラ州ノガレス出身の27歳。ネリが所属するサンフェル・プロモーションズのライバル、プエブロ・プロモーションズのサポートでキャリアを進めてきた。世界的な選手との対戦はなく、正直、現在のランキングは評価され過ぎの印象もする。スタンスはネリと同じサウスポー。

 予想不利は承知で「私がアンダードッグであることはよくわかっている。でもファンにグッドアクションを提供して勝つ自信がある。ネリを破った後、私の名前が知れ渡るだろう」とアラメダ。16年1月、ロサンゼルスでリングに上がり6回KO勝ち。それが今まで唯一の米国での試合。今回はそのロサンゼルスでじっくり調整を図った。「スパーリングをたくさん行うことができ有意義なトレーニングを積めた。ネリはバンタム級ではビッグパンチャーだったけど、122ポンドではパワーが通用するだろうか」と番狂わせを目指す。無観客試合とはいえ、ビッグステージ登場も彼のモチベーションアップにつながる。

 だが冷静に見て、ネリが2本目のベルトを巻く可能性が高い。アラメダは台頭時期にエンリケ・ベルナチェ(メキシコ)という中堅選手に8回戦で2-1で判定勝ちした。試合はグアダラハラ(メキシコ)で行われ、ベルナチェの勝利を支持した米国人ジャッジは大差だった。ベルナチェはバンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)に挑戦するジェイソン・マロニーと前WBOスーパーバンタム級王者エマヌエル・ナバレッテにはいずれもTKO負けしている。アラメダはホープの一人には違いないが、もう一押しほしい選手。力量感でネリに劣るのは否定できない。

対戦者アラメダ。ネリ同様これまで無敗(写真:Team Tigre Alameda)
対戦者アラメダ。ネリ同様これまで無敗(写真:Team Tigre Alameda)

チャベス親子の露払い役

 土曜日、メキシコではTVアステカがネリvsアラメダを中継する。当日はネリの地元ティファナでレジェンド、フリオ・セサール・チャベスが元軽量級複数階級王者のホルヘ・アルセ(ともにメキシコ)と3度目のエキシビションマッチを行う。同じリングで息子の元WBCミドル級王者フリオ・セサール・チャベスJrがセミファイナルに出場予定(これは公式試合)。ネリの試合はこれらのカードの露払い、前座としてメキシコ国内に中継される。

 当初は3月に行われるはずだったアラメダ戦はコロナパンデミックで延期。その後7月、8月と暫定スケジュールが通達されながら実現せず結局、半年後の仕切り直しとなった。未来に向けての発言が先行するネリだが今回の一戦できっちりと結果を出すことが肝心。その前に明後日の計量を無事クリアするかがまず注目される。

母国ファンからも苦言

 サンフェル・プロモーションズのフェイスブックでは、ある男性が「ネリは卓越したボクサーであることをリングで披露してきた。でも彼を嫌いな人間もいる。その人たちに言いたい。個人的な問題に時間を割くよりももっとボクシング自体を知ってほしいと」と投稿。これに対し別の男性が反論。「アミーゴ、あなたの言うことはもっともだ。ネリはいい選手に間違いない。しかし彼は規律を守れない。規律が守れなければリスペクトできない。このスポーツをリスペクトできなければ、他のスポーツに転向した方がいい」。メキシコにも良心的なファンがいるのだ。

 同じ書き込みには女性ファンが「レッツゴー、パンテラ(ネリのニックネーム。豹の意味)ネリ!土曜日、応援しています。でも規律を守れるかしら……」と昨日書き込んでいたが、今日見ると最後の部分が無くなっていた。一番大事な個所なのに、どうして?

 やはり金曜日に行われる前日計量が気になる。問題児が同じ失態を繰り返さないことを祈る。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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