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亀田和毅と戦うバルガスを直撃。「結果はお楽しみ。トモキとはリングで答を出す」

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
統一戦で対決するバルガスと亀田和毅(写真:ゴールデンボーイ・プロモーションズ)

 ボクシング、WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、正規王者レイ・バルガス(メキシコ)vs暫定王者亀田和毅(協栄)が7月13日、米ロサンゼルス近郊カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツパーク(旧称スタブハブ・センター)で挙行される。団体内(WBC)の王座統一戦。アマチュア時代、メキシコでデビューした亀田が唯一喫した黒星の相手がバルガス。その因縁もあり、WBOバンタム級を含めプロで2階級制覇を達成した亀田との対決はファンや関係者の間で大きな関心を集めている。

 決戦まで3週間弱。メキシコシティのロマンサ・ジムで調整中のバルガスに電話を入れ、試合に向けた抱負を聞いてみた。

プロとアマは別物だ

――あなたと亀田は12年前、ゴールデングローブ・トーナメントの決勝で対戦しました。その時の思い出を聞かせてください。

「もちろん。好試合でこちらが判定勝ちした。重要な大会で優勝することができた。外国人(亀田)がスコアに不満を訴えることもあったけど(https://news.yahoo.co.jp/byline/miurakatsuo/20190510-00125575/を参照してください)私は判定と勝利に値したと思っている」

――その試合はあなたにとり困難なものでしたか?

「うーん、それほどでもなかったね。自分のボクシングができたから」

――今回はその試合と同じ戦法で戦うつもりですか?

「ノー(ときっぱり)。アマチュアとプロは別物。当然、戦い方は変わってくる」

――参謀のナチョ・ベリスタイン氏は「まずは判定勝利を念頭に考えている」と言っていましたが、それは正しい?

「すべてリングの上で回答したい。だから今それは話したくない。結果はお楽しみ。うまく運べばノックアウトで勝てるだろうし、判定でも構わない」

――亀田のスピードは警戒していませんか?

「確かに彼はとても速い。それに自信を持っている。でもこちらも対策を立てている。もっと速いパンチを繰り出すことも可能だ」

――亀田はプロとして向上が著しいと見ていますか?

「アマチュアからプロフェッショナルになったら当然、変わらなければならない。先に言ったように今回は全く異なるファイトになる。私はトレーニングに精を出し、この拳で対抗する。その時トモキがどれだけ成長したのか、衆人の目に晒されるだろう」

口では戦わないよ

 ジムではプロ入り以来コンビを組むベリスタイン・マネジャー兼トレーナーのアドバイスで鍛えるバルガス。「私は大口を叩くのが嫌いだ」と強調するように「必ず勝つ」とか「絶対倒す」と力まない代わりに堅実なコメントが目立つ。その対極に位置するのが和毅が属する亀田家といえるのだが。

――亀田兄弟は対戦相手を挑発する言動が話題になります。それに対して心配していませんか?

「ノー。私は口では交戦しない。彼らが何と言おうと全く興味がない。挑発を繰り返すことは重要ではないよ」

――今回の試合、勝利をつかむカギは何でしょう?

「トレーニングの成果。それだけ」

――万が一、負けたらそれが不十分だと。

「残念ながらそうなるね」

ベリスタイン氏(写真後方)の指導でスパーリングに励むバルガス(写真:ゴールデンボーイ・プロモーションズ)
ベリスタイン氏(写真後方)の指導でスパーリングに励むバルガス(写真:ゴールデンボーイ・プロモーションズ)

マクドネルとはスキルが違う

――セニョール・ナチョとはどうやってコンビを組んだのですか?

「ボクシングの手ほどきをしてくれた父がアマチュア時代からナチョのアミーゴで、その縁でプロ転向の際に弟子入りすることになった。父はセコンドに就かないけど、試合に行くかもしれない」

――数年前、和毅が2度対戦した英国のジェイミー・マクドネルはあなたが決定戦でベルトを獲得したギャビン・マクドネルの双生児です。マクドネルvs和毅は今回の試合の参考になりませんか?

「(和毅の)全部の試合が参考になる。作戦を立てる意味でもね。ただ、すべての試合は違った展開になるから1,2試合だけで判断して作戦を立てることはできない」

――マクドネルに関して質問したのは身長、リーチなど体型があなたに似ているからです。

「そうかもしれない。でも我々はテクニックが全然違う」

 「全然違う」とはテクニックの質や使い方が異なるというよりもマクドネルとはレベルが違うと言いたげだ。慎重な発言が多いバルガスが初めて発した強気な言葉。やはり自信は隠せないのだ。同時に決戦が近づきピリピリムードも感じられる。

ナーバスになっている?

――スパーリングはプロ15戦の選手を中心に行っているそうですが名前を教えてくれませんか?

「名前は憶えていない。(スパーリングは)プロスペクトたちとやっている。スパーリングに関してはノーコメントだ」

――今回の一戦に関して特別強化していることはありますか?

「重要な試合に臨むのだから全部だ」

――ですから例えばスピードとかパワーとか。

「それは言えない。秘密だ」

――1日のスケジュールを教えてください。

「それも明かせない」

――試合までキャンプを行う計画がありますか?

「シー。高地で集中トレーニングを実行する予定」

――和毅はあなたのプロキャリアで最強の相手になりますか?

「うーん、たぶんそうだろう。正確には試合の内容と結果によるだろう」

――昨日、挑戦者決定戦でキューバ人のギエルモ・リゴンドウがTKO勝ちしました。彼との防衛戦を視野に入れていますか?

「トモキとの試合をクリアするのが前提だけど、一応、頭の中には入れているよ」

――和毅へのメッセージを。

「チャンピオンになってトモキはいつも意識する存在だった。どちらがトレーニングを周到に実行したかが結果にそのまま表れるだろう」

トレーニングが佳境に入ってきた正規王者バルガス(写真:ゴールデンボーイ・プロモーションズ)
トレーニングが佳境に入ってきた正規王者バルガス(写真:ゴールデンボーイ・プロモーションズ)

 いよいよ調整がトップギアに入ってきた様子のメキシコ人王者。亀田もかつてない密度のキャンプを実行している。“エル・メヒカニート”がリベンジを果たすのか。それともレイ(王様)が5度目の防衛に成功するのか。目が離せない攻防が待っている。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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