Yahoo!ニュース

アギーレ問題、メキシコの報道は控えめ。無罪を信じる

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
レアル・サラゴサを13ヵ月指揮したアギーレ監督(中央)

何でいまさら?

リーガ・エスパニューラの八百長疑惑の渦中の人物ハビエル・アギーレ日本代表監督。彼の母国メキシコでこの問題はいったいどう報じられているのか。早速、知人のフリージャーナリスト、エドムンド・エルナンデス記者に連絡してみた。「確かにここメキシコでもその件はメディアが取り上げ、メキシコ人監督が八百長に巻き込まれたことを残念に感じている。でも最後に私が知ったのはサラゴサのトラブルは解決した、ハビエル・アギーレは無罪だったんじゃないかな」

最初にニュースが伝わったのは9月末から10月初めにかけてだった。発信地は当然スペイン。一通り、各メディアが流したが、比較的大きく報道したのはESPNデポルテス(拠点は米国)とメキシコシティの一般紙「エル・ウニベルサル」だったと思う。たとえば、メキシコで一般紙も含めてもっとも購読者が多いといわれるスポーツ紙「ESTO」(エスト)や近年その対抗紙として販売数を伸ばしている「RECORD」(レコード)は他の試合レポートやニュースとごった煮となり、人々の注目はそれほど高くなかったような気がした。エルナンデス記者の言葉にもそのあたりの事情が感じられる。

詳しく報じたESPNデポルテスにしても現地通信員のレポートをそのまま使い、エル・ウニベルサルもスペインの記事をそのまま流用するか通信社の原稿を使っていた。突っ込んだ記事がなかったこともファンやメディアに「過去の出来事」として映ったのかもしれない。「何でいまさら?」という雰囲気。これがもし、アギーレ監督が再びメキシコ代表を指揮している状況だったら、もちろん大事件だが、現時点で直接影響を受けるのは日本代表。優秀な監督が異国で采配を揮っていることは事実にしても、以前のような親近感を抱かなくなっているのだろう。

ちなみに先月下旬、今回の問題を取り上げたといわれるメキシコ紙「バンガルディア」について恥ずかしながら私は知らなかった。調べてみると、この新聞はコアウイラという州で発行される地方紙。記事もエル・ウニベルサルが発信したものに思えた。アギーレ氏がこの州の出身かというとそんなことはなく、なぜ大々的に?報道されたかわからない。ついでながらバンガルディアとは前衛とかアバンギャルドといった意味である。

器量の大きいカリスマ指揮官

状況が変化してきたのは4日(日本時間5日)。アギーレ氏が日本協会で事情聴取に応じた後だった。各紙のネット版がいっせいにそれを報じた。だが記事はいずれもAP通信が流したもので、どこも同じ内容。以下に見出しだけ記してみる。

「アギーレと日本は、それを知っている。策略があったケースは問題に陥るだろう」(ESTO)。「アギーレの件は日本代表に大問題となる」(ラ・アフィシオン紙)。「スペインの告発に対し日本はアギーレをサポートする」(RECORD)。「アギーレは八百長に関与していないと確信する」(エル・ウニベルサル)。

コラム的な記事や独自の見解を記すものを読みたいのだが、今のところ目にしていない。エルナンデス記者から2度目の連絡が入った。

「アギーレが潔白だと思っていたけど、そう決まったわけではなかったんだね。もし彼が有罪なら、悲しむべき事実で、メキシコサッカーにとってとても恥ずかしいことだ。今後、メキシコ人監督に対する見方が変わってくる。日本は代表監督が不在になるかもしれない。でもメキシコでは、ほとんどの記者がアギーレは無罪だと思っている。サッカーで相当いい金を得ている彼が買収に応じたとは考えにくい。それに彼が常々発散する人間的スケール、魅力、誠実さから(悪事に)手を出すことはないと断言できる。すべてがうまく解決することを願うばかりだ。仮に責任を問われ有罪となったら、これまでイタリアや他の国で起こったように彼の罪がサッカー界に教訓として残ればいいのではないか」

おおむねメキシコではアギーレ監督を弁護する意見が主流。アギーレ氏が日本代表監督に就任した時、「もし素晴らしい仕事をすれば、次回ワールドカップでメキシコ人は日本チームを応援するかもしれない」と言ったのはエルナンデス記者。まだまだそんな段階ではないが、雨降って地固まるのたとえもある。今回の難関を無事乗り越えれば、いっそうカリスマ指揮官として認知されるのではないだろうか、

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

三浦勝夫の最近の記事