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わかりあえないのは「議論」をするから・・・「対話」によるチーム運営を忘れてませんか

三城雄児治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者
ビジネス場面では「議論」を重視します。一方、チームづくりには「対話」が大切です。

「結論から先にいってください」というプレッシャー

「論点を整理してから話してくれませんか?」

「何が言いたいのですか?簡潔に述べてください」

「それはあなたの個人的な感情でしょう?事実を述べてください」

ほとんどのビジネスパーソンは、学生から社会人になってから、上記のような指導をされた経験があるはずです。

そして、仕事ができる人というのは、合理的で効率を重視できていて、短時間で結論に達することができる人、という評価も多くの企業であるのではないかと思います。

ビジネスの世界では、こういった「議論」が上手い人が出世する傾向にあるようです。

このような環境では、できる限り個人的な感情は挟まずに、ファクトと呼ばれる「事実」をもとに、発言することが求められます。

組織で起こっている「問題」をみつけて特定し、解決策をすぐに決めて、仮説検証しながら解決していく。

このような行動が求められています。

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといったビジネススクールでの学びも、一般社会人の間で広まっていると思います。

私も若くしてコンサルティングファームで働くことになったので、こういったコミュニケーション方法を習得して活用していました。

これは「問題解決スキル」だと世間では言われています。

ずっと解決しなかった赤字体質を解消させたのは殴り合いの喧嘩だった

しかし、組織人事のコンサルタントとして活動し始めてほどない頃、私は、大変貴重な経験をし、「問題解決スキル」よりも大切なことに気づかされます。

私は、ある複合事業を行なう中堅企業にて、管理職以上全員を集めた合宿プログラムを企画運営していました。この会社は、創業から30年ぐらいは順調に業績を伸ばして、複数の事業領域に進出し多角化を果たしていました。しかし、ある時期から会社全体の業容の拡大がストップし、それに合わせて、ほとんどの事業が赤字に陥ってしまったという会社でした。

みんなで会議をしたり、コンサルティング会社に頼んでサーベイを実施したり、問題をみつけては解決策を実施するということを繰り返していましたが、数年間ずっと赤字を垂れ流すという体質は、改善することがありませんでした。

当時、経験も浅かった私は、自分では解決策が思いつきませんでした。そこで、みんなで考えてもらった方が良いということで、苦し紛れに管理職以上全員を集めた3日間の合宿プログラムを企画しました。今の組織において何が問題なのかを、2泊3日の合宿でみつけだし、管理職以上全員で解決策をつくって実行するというものでした。

合宿の当初2日間は、私が事前に用意したワークシートにしたがって、過去からの伝統的な自社の強みを分析したり、競合他社を分析したり、財務数値を精査したり、社員の育成上の課題を洗い出したり、様々な観点から問題を洗い出しては解決策を考えるという「議論」を続けていました。

そして、2日目の夕食までには、予定していたワークシートを全て埋めて、各事業のリーダーが方針をまとめあげて、翌日の準備に備えるという段階に入っていました。

事件はこの後、夕食後に起こります。

2日間の議論を経て、疲れていたのか、ある事業部のリーダーが別の事業部のリーダーに対して、「お前たちの事業部が一番大きな赤字をつくっているんだ!それに俺たちが付き合わされている、悪いのはお前たちだ、もっと真剣に仕事しろよ!」といきなり殴りかかったのです。すると、その事業部のリーダーも対抗して「お前たちだって赤字じゃないか、何を言っているんだ」と殴り合いの喧嘩に・・・。

あと少しで、合宿も成功だったのに・・・。

夕食後の時間で各事業のリーダーが結論をだして、みんなで進むべき方向を決めて、アクションプランに落とし込んで、3日目の朝に発表するという予定でした。

しかし、喧嘩によって議論は中断。予定の時刻を過ぎていました。喧嘩自体は、ベテラン社員が仲裁に入り収まったのですが、そこで2日目のプログラムは終了。

「明日は、口頭でもいいので2日間で思ったことを発表してください」

私は、翌日の発表内容を変更することを参加者全員に伝えました。

そして、喧嘩の余韻で微妙な雰囲気の合宿会場を後にして、翌日の最悪の展開を想像して、大変な心配をしていました。

「対話」のあとの発表は、前日までの「議論」とは違っていた

翌日、どう進めようかなと悩みながら会場に到着すると、なんと参加者全員が私が到着する数時間前から会場で対話をしていたのです。

前日の喧嘩の雰囲気とは全く逆で、とても和やかに笑顔や冗談も交えながら・・・。

私はその雰囲気がなぜ起こっているのかつかめず、会場の後ろの方でずっと傍観していました。

朝のこの対話は、雑談ではあるのですが、ちゃんと事業の話もしていました。

しかも、前日までのお利口さんの議論とは異なり、なんでもありの友達同士の意見交換という感じで、雰囲気も和やか。

その中で、一番赤字だった事業の解決策がたくさんだされていました。事業をやめてマッサージ店にしちゃおうとか、テーマパークをつくって商品を売ろうといった、ほとんど冗談のような意見もたくさん交わされていました。

どうやら、前日の喧嘩のあと、喧嘩した同士が仲直りして、そのことを周囲のメンバーも笑い話に変えて、それ以降ずっと朝から皆で対話をしていたようです。

後から聞いた話なのですが、最初は「なんで喧嘩しちゃったんだろうね」「ごめんね」といった話題だったようですが、そのうちに喧嘩の話も忘れ、なんでもいいから話そうという雰囲気になり、家族の話やプロ野球の話など、皆が居心地よくなって、大学生がラウンジで話すようにずっと対話を続けていたとのことでした。

3日目のプログラムが始まる時刻になり、前日にアクションプランまで完成できていなかったので、私は口頭でいいから2日間の議論で感じたことを発表してくださいと、お願いをしました。

すると、前日までの2日間での発表とは異なり、一人ひとりが自分の想いを自分の言葉で語るようになっていました。

全員の話が面白い。そして、やる気に満ち溢れている。アイデアもどんどん湧いている感じでした。

そして、その後、この会社は発表したことを一人ひとりが実行して、V字回服を果たしました。

特に、喧嘩を売られた事業部と喧嘩を売った事業部の回復が顕著でした。

「議論」は外面しか扱わない、「対話」は内面を扱う

上記の経験は、私のコンサルティングのスタイルを大きく変えることになりました。

組織で起こっている問題は、表面的に見えているのは外面にある問題と、その背景にある個人の気持ちや感情といった内面にある問題にわけられます。

そして、外面にある問題だけを議論しても表面的な解決しかできない。問題の本当の根っこには、一人ひとりの内面にある葛藤や感情というものが大きく影響しているからです。

そのようなことに気づかされたのです。

言葉で書くと、そのようなことは当たり前だと思われるかもしれません。

しかし、皆さん、会社の会議で議論されていることを観察してみてください。

上記の会社は、喧嘩によって、はじめて皆が内面にある感情や気持ちを話しし始めたのです。それまでのワークシートの議論では、決定的な何かが欠けていたのです。しかし、そのことに気づかず、最初の2日間は全員が淡々と外面の分析をしていました。

パワーポイントやワードに記述できるようなことばかりを議論していて、本当に必要な個人の内面にまで踏み込んで対話をしていない。

この事実にもっと着目した方が良いと私は考えています。

「議論」と「対話」は違う

合理化や効率化といった観点では、早く結論をだして実行をするということが重要です。

ビジネスの世界では、こういった「議論」は大事だと私も思います。

しかし、

問題がずっと解決しないままでいる。

組織の雰囲気が悪くなっている。

繰り返し同じ問題を起こし続けていて一向に解決しない。

このような場合は「議論」による解決ができないようです。

「議論」は、合理化・効率化のために外面ばかりを扱うため、内面を扱いません。

そのため、根っこにある本質的な問題を無視してしまうという「副作用」があるのです。

「議論」と「対話」は違います。

「対話」では、合理化・効率化を求めませんので、一見すると無駄なことをしているように感じます。

しかし、この無駄なことと思われる中に、目に見えない「大切なこと」があるのだと思います。

これは冒頭に示した「議論」と「対話」の比較をみてもらえればわかると思います。

「対話」は、合意が目的ではなく共感が目的ですから、個人の内面にあるものを扱うことができます。

「対話」では、「議論」のように解を一つにして合意することを求められませんから、相手を「説得」する必要はなく「受容」することができます。問題を分割して単純化するのではなく、問題を複雑なものとしてそのまま捉えます。一つの結論をだすことはせず、大切なことを感じとる機会を増やすのです。

皆さん、周囲の人たちと良質な「対話」の時間をとっていますか?

治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

早稲田大学政治経済学部卒業。銀行員、ベンチャー企業、コンサルファームを経て、JIN-G Groupを創業。グループ3社の経営をしながら、ビジネス・ブレークスルー大学准教授、タイ古式ヨガマッサージセラピストの活動に取組む。また、会社員としてコンサルファームのディレクターとしても活動し、新しい時代の働き方を自ら実践し、お客さまや学生に向け、組織変容や自己変容の支援をしている。組織/個人に対して、治療家として、東洋伝統医療の技能を活用。著書に「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」(日経BP社)「リーダーに強さはいらないーフォロワーを育て最高のチームをつくる」(あさ出版)がある。

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