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「安全、無料、そして簡単」と検査促すニューヨーク 新型コロナ対策は成功したか?

南龍太記者
(写真:ロイター/アフロ)

 感染拡大が続く新型コロナウイルス、症状や抗体を調べるための検査を受けられる態勢は日本でも少しずつ整ってきた。

 先んじて、大規模に検査を行ってきたニューヨークは、新規の感染者数がピーク時の1日6000人超から現在100人以下に抑えられている。

 「市民なら誰でも無料で受けられる」とうたったニューヨーク市の検査を、今あらためて振り返る。ニューヨーク市に住む筆者が検査を受けたのは5月、スマートフォンやパソコンを利用したその手続きは効率的で簡単だった。

スマホに届く「検査受けませんか?」

 ニューヨーク市は感染のピークだった3月下旬から4月上旬にかけて、1日の新規感染者数連日5000~6000人で推移するなど、厳しい状況が続いた。現在は1日の感染者数が100人を下回り、ひと頃に比べれば感染が大幅に抑えられている。

ニューヨーク市の感染者数の推移(市のサイトより)
ニューヨーク市の感染者数の推移(市のサイトより)

 徹底した検査の実施により感染者の年齢層や居住エリアなどを特定し、状況に応じた対策を取ってきたことが、感染抑制の一因になったとされる。

 市、州を挙げて検査態勢の拡充に取り組んだ。州知事は記者会見の場で検査を受ける実演を見せ、「これで終わり?」と検査の容易さをアピールしていた。

 検査態勢を整えると同時に、市はコロナウイルスの情報配信サービスを通じ、登録した市民に対して連日メッセージを送った。その中で、

ニューヨーカーは現在、新型コロナウイルスの抗体検査を予約できます

などと抗体検査の受検を促してもいた。

筆者のスマホ画面、5月下旬
筆者のスマホ画面、5月下旬

民間の医療機関と提携

 時期や居住地によってさまざまな検査の機会が用意された。ニューヨークに拠点を持つヘルスケア企業「CityMD」や、「BioReference Laboratories」などと連携して検査を行った。

抗体検査の日時を予約する画面
抗体検査の日時を予約する画面

 市からのメッセージに促されるまま、ネットで最寄りの検査会場と実施日時などを予約した。

病院でもお店でもなく…

 当日指定場所に着くと、多少の順番待ちの列ができていたが、10分と待たずに入れた。中に入る際には検温され、感染を防ぐために手袋を渡され、着用を求められる。

建物に入る前の検温
建物に入る前の検温
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 会場は何か他に使われていた倉庫のような施設だった。赤いコーンが等間隔に置かれ、常に他者と6フィート(2メートルほど)のソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つように求められた。床にも「6フィート リマインダー」のステッカーが所々に貼られていた。

採血の様子
採血の様子

 いざ会場に入ってから検査終了までは早く、15分とかからなかった。左腕をまくるように言われ、消毒されてぷすっと注射針を刺されて終了、あっという間だった。

 翌日には検査結果のメールが届いた。結果は「陰性」。

抗体検査「陰性」を知らせるBioReferenceの画面
抗体検査「陰性」を知らせるBioReferenceの画面

1日3万5000人を検査

 検査の担当者にこの会場はいつまでかを尋ねると、「ここは明日で最後、閉鎖される」と言われた。場所は時期によってさまざま変わっているらしい。

 その後も今に至るまで、ニューヨーク市のさまざまな場所で無料の検査は続けられてきた。市のウェブサイトでは

安全、無料、そして簡単です

(The COVID-19 diagnostic test is safe, free, and easy)

と診断テストを促し、抗体検査も、「保険は不要」「抗体検査は無料です」と受検しやすさを強調する言葉が並ぶ。

 こうしたPR効果もあってか、日々の検査数は多い日で3万5000人を超えた。今も1万人前後が日々受検している。

ニューヨーク市の感染診断テスト受検者数の推移
ニューヨーク市の感染診断テスト受検者数の推移

 一時、全米で最も多い累積感染者数を記録したニューヨークは今、最悪期を脱した。ただ、気の緩みによる第2波の到来を恐れる声も聞かれる。また、検査結果の通知が2週間かかるなどの遅れも目立つようになり、課題とされている。

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 日本に目を転じれば、現在各地で感染者数が最多を更新している。依然先行きは不透明だ。まもなく月の変わり目、気を引き締めていくしかない。

(※特に注記のない画像は筆者撮影)

記者

執筆テーマはAI・ICT、5G-6G(7G & beyond)、移民・外国人、エネルギー。 未来を探究する学問"未来学"(Futures Studies)の国際NGO世界未来学連盟(WFSF)日本支部創設、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科で2050年以降の世界について研究。東京外国語大学ペルシア語学科卒、元共同通信記者。 主著『生成AIの常識』(ソシム)、『エネルギー業界大研究』、『電子部品業界大研究』、『AI・5G・IC業界大研究』(産学社)、訳書『Futures Thinking Playbook』。新潟出身。ryuta373rm[at]yahoo.co.jp

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