ニューヨークの日本人向け保育もオンライン化 触れ合えぬ歯痒さと不可欠な親の協力 新型コロナウイルス

(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な状況が続くニューヨーク、公立校の閉鎖とオンライン授業が始まって2カ月近くがたった。通信機器やネット環境の問題でいまだ授業にアクセスできない子どももいる。さまざまな課題がある中、幼稚園以下の未就学児とその保護者は、子どもが好奇心旺盛な時期に散歩も思うようにできず、厳しい状況に立たされている。相次いでオンライン保育に乗り出している現地の日本人向け教育機関は、保護者の理解と協力を得ながら試行錯誤の日々が続く。

友達と次に学校で会えるのは秋

 コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、非常事態宣言が出ているニューヨーク州では3月16日以降学校が閉鎖され、その翌週から順次オンライン授業が始まっている。学校閉鎖は学期末の6月まで続くことも今月決まった。

 学校再開は早くて9月だ。6月下旬以降教師らは休暇に入り、約3カ月の夏休みの間、共働きの家庭などは子どもたちを日中「サマーキャンプ」と呼ばれる、博物館やYMCA、ダンス教室などさまざまな機関や施設が行うプログラムに参加させるのが通例だ。しかし今年はその頼みの綱のサマーキャンプが例年通りには実施されなそうで、悩みの種となっている。 

Launch Math + Science Centersより
Launch Math + Science Centersより

 夏もコロナウイルスによる外出自粛や規制が続くのを見越し、オンラインによる「バーチャルサマーキャンプ」を提供するサービスが登場し始めている。STEMと呼ばれるITやサイエンスに特化した内容が目立ち、無料で参加できるクラスもある。ただ、当然ながら子どもたちは自宅などからタブレット端末やパソコンを使って参加するため、親にとっては「日中に子どもを預かってもらう」という本来のサマーキャンプの大きな目的は果たせない。

Varsity Tutorsより
Varsity Tutorsより

悩める親

 小学校では、学年が上がるにつれて授業でブラインドタッチを習うなど電子機器の扱いに習熟していく。しかし、入学したばかりの1年生を中心に「Google Classroom」や「Google Meet」もZoomも使ったことがない低学年の子どもは少なくない。そのため大抵はまず親が手取り足取り教えないといけない。

 それが小学校入学前の子どもであればなおさらだ。ニューヨーク市内は日本の幼稚園年長に当たるKindergarten(キンダーガーテン)も実質義務教育の対象となっていて、多くの場合小学校に併設されている。ただ、コロナウイルスの影響により子どもと対面で触れ合うことができなくなり、オンラインでの保育に切り替わっている。

 さらにその下、幼稚園の年少や年中に当たるPre-K(プリK)も同様にオンライン保育の形を取っている。公立のKindergartenやPre-Kに通う子どものうち、タブレット端末の用意がない家庭に対して市は無償でiPadを貸し出している。

 園児らは画面を通じて先生と顔を合わせ、工作したり、歌を歌ったりしているが、保護者はほとんど目を離すことができない。在宅での仕事と子育ての両立、家事とのバランスに悩む日々が続く。

iPadの貸与を申し込むニューヨーク市のサイト
iPadの貸与を申し込むニューヨーク市のサイト

ニューヨーク育英学園

 ニューヨーク州と隣のニュージャージー州で幼稚園や小学校を運営する「ニューヨーク育英学園」も学期初めの4月から遠隔による授業・保育の取り組みを進めている。

 「オンラインでの保育は本当に初めての経験で、手探り状態でした」と話すのは、幼児部主任のレスコビッツまり教諭。

 1クラスを10人以下と少なくし、毎日、園児1人1人の名前を呼び、声を掛けるようにしている。従来スキンシップを大切にしてきたが、「今はそれができないので…会話を通じて子どもたちとコミュニケーションを取るようにしています」。

 1日の流れは、午前8時40分から朝の会で25分、Google Meetを使って各家庭を結び、ライブ(中継)による保育を行っていく。25分という時間設定は、事前に保護者らにアンケートを取った結果を考慮して決めた。

 4月に保護者の意見を踏まえ、午後に「お帰りの会<また明日ね>」として25分のライブの時間を追加した。また、全日制幼児部専用のページを開設して保護者が毎日閲覧できるようにし、幼児部を身近に感じてもらえるようにした。今後は日本とつないで特別講師を招き、特別なオンライン保育を計画している。

 オンラインでもできる限りのことをしようと、対面の時より身振り手振りを一層大きくしたり、ぬいぐるみをひょっこり登場させたりして、子どもたちの集中力が続くように工夫を凝らしている。通常時は子どもと笑顔で握手したり、タッチしたり、そうした触れ合いがやりがいにもつながっていたと話すまり教諭。「今はそれができずもどかしく、寂しくもあります。でもオンライン保育だからこそできる1人ずつ目を見てできる話を大切にしていきたい」

ニューヨーク補習授業校

 週末に日本語による授業を行う補習校としてはニューヨーク最古の「ニューヨーク補習授業校」も幼児部があり、4月からオンラインで保育を行っている。

 最初の30分に「今日は折り紙でこんなものを作りますよー」とか「歌を歌いますよー」と画面越しに説明した後にいったん終了し、1時間後にまた発表会として「できたかなー?」と言って互いに見せ合ったり、音楽に合わせてダンスを踊ったりといった内容だ。

 ただ、オンライン保育の間も、大人が子どものそばで手伝わなければならない。「以前は学校側が用意していた折り紙なども、今は各家庭で用意してもらっていて…」とプリントの印刷や工作の補助を各家庭に頼っている心苦しさが募る。

視力低下も悩み

 ニューヨークの事例に限らず、保護者の協力なくしては成り立たないのが今のオンライン保育の実情だ。

 そうした幼児を持つ家庭の負担感が増している中、保護者らが最も懸念していることの1つは端末を長時間見続けることによる視力の悪化だ。

 「子どもたちの視力が年々、悪化しています」(「スマホが原因?子どもの視力が悪化」、2019年7月4日朝日新聞)といった子どもの視力低下に関する記事に登場する数値は

小学生の視力低下止まらず 1.0未満が30.9%に」(2016年1月22日日本経済新聞)

視力1.0未満が過去最多 小学生34%、中高生も」(2019年12月21日日本経済新聞)

のように年々悪化の一途をたどっている。警鐘が鳴らされて久しいが、有効な解決策のないまま、デジタル教科書の採用、タブレット端末を通じた授業が推し進められつつある。子どもの目のケアをどうするかは引き続き課題として残る。

 こうしたPCやタブレット端末の長時間視聴に伴う疲れ目、視力低下の問題を解決するかもしれない1つの手段として、今後は一家に一台、プロジェクターの活用が広がると筆者はみている。少しでも大きく映し出すことができれば、目の疲れが多少は緩和されると期待される。ヤフーショッピングのプロジェクターの販売状況などを見る限り、まだ数万円のものが多いが、今後は低価格帯の製品が一層広まるだろう。

 iPhoneの画面をテレビに映し出すミラーリング機能なども駆使しつつ、今後オンラインによる学習環境の整備が、世界的に進むはずだ。

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 オンライン保育にしても、オンライン授業にしても、各家庭のネット環境とデバイスの配備、少しずつ増え始めた事例を盛り込んだマニュアルの整備と教える側の習熟、そして疲れ目など長時間の視聴に伴う弊害への対策を、同時並行で急いで検討していかないといけない。

 ニューヨーク育英学園もニューヨーク補習授業校も、オンライン化に取り組もうとしている教育関係者から要望があれば、自分たちの経験や教訓を共有していく考えだ。

ニューヨーク育英学園:https://japaneseschool.org

ニューヨーク補習授業校:http://www.jwsny.org

(※ 注記のない写真は筆者撮影)