そして日の丸は廉売された 令和もさまよう遺品の行方

(写真:西村尚己/アフロ)

 第二次世界大戦終結から来年で75年。時代が令和に改まった今もなお、米国内で所有権が転々と移ろう、旧日本兵の遺品が少なからずある。遺族らのもとに返そうと有志が取り組んでいるが、古物商などの品を網羅的にチェックするのは、財源や人手の観点から難しい。そうした中、長らく買い手が付かず、値下げして売られる遺品も出ている。

 ITの進歩を背景に、ネットショッピングの感覚で手軽に“Add to cart”と「買い物かご」へ入れられ、他人の手に渡ってゆく遺品の数々。戻るべき所に戻る日は来るだろうか――。

届かなかった「武運長久」の願い

 米国にある古物商「グリフィン・ミリタリア」(Griffin Militaria)は戦時の日本やドイツの兵士らの物とみられる遺品や軍事関連品を多数扱う。運営者は40年以上にわたり収集に当たってきたという。

グリフィン・ミリタリアのサイトより
グリフィン・ミリタリアのサイトより

 メダルやヘッドギア、コート、私物などジャンルが細かく分かれ、そのうち「日本の旗」(Japanese Flags and Banners)は、兵士の家族や友人が日の丸に寄せ書きをした「出征旗」をはじめ、品数は20超に及ぶ(12月1日現在)。その多くに、兵士の無事を祈る「武運長久」や「祝入営」といった言葉、願いを込めた家族らの名前が記されている。

 出征旗は、多くの日本兵がお守りのように持ち歩いていたが、死亡した際に米兵に持ち去られるなどして米国各地に散らばったとされる。グリフィン・ミリタリアでは、おおむね1点数百ドルで売られている。

安売りされるケースも

 順次「売却済み」(SOLD)となっている一方、2、3年売れ残っているような旗も少なくない。そうした背景から安売りされる日章旗も散見される。

IMAのサイトより
IMAのサイトより

 世界中で軍事関連の骨董品を集めてきた「インターナショナル・ミリタリア・アンティーク」(IMA;International Militaria Antique)も旧日本兵の刀やヘルメット、日章旗を扱う。物によっては1~3割程度安いセール品とし、購入を促している。

有志が橋渡し

 本来の持ち主が判明していれば、その家族のもとへと返されるのが自然だろう。実際に返還を望む米国人がおり、実現した例も少しずつ増えてきた。その橋渡しをしようと、買い集めるなどした出征旗や軍隊手帳を遺族らのもとに届けようとしている人たちもいる。

 「旧日本軍人の遺留品」のサイトを運営する日本人の有志らは、そうした取り組みを50年近く続けてきた。2009年にはNHKが「クローズアップ現代」で「さまよう 兵士たちの“日の丸”」として様子を伝えた。

 また同じ09年には「日章旗を返還したいと願われている人と、受け取られるご遺族」の間を取り持つ「OBONソサエティ」が活動を始めた。

 それから10年、地道な活動が続き、出征旗は少しずつ遺族のもとへと戻っている。ただ、依然として多くの遺品が当てどなくさまよい続けてもいる。

 戦中戦後の昭和、平成、そして令和へと時代が下り、画像や情報の拡散力が格段に高まっている今、本来の持ち主や遺族を見つけやすい環境は以前にも増して整っているのではないだろうか。

返還には壁も

 日章旗や手帳には、氏名、時に詳しい住所も書いてある。ただ、だからと言って返還がスムーズにいくとは限らない。「世代によっては関心がなく、受け取りをためらう遺族もいる」(2019年7月9日付朝日新聞「元日本兵の遺品、米国から届けて半世紀 広がる返還活動」)といったケースがあるためだが、同様の指摘は前述のNHKの番組でもなされていた。受け取り手のいないことが、戦後75年を迎える今も日章旗がさまよい続ける一因となっている。

 時間の経過とともに、亡くなった兵士らを直接知る世代も限られてきている。返還は今後より難しくなり、時機を逸すれば一生果たせなくなるかもしれない。

(※ 各サイトでの取り扱い品は本物であるとの前提)