昭和天皇即位の写真「2枚買ったら1枚タダ」 世界最大ネット競売に出品 問われる「御真影」の扱われ方

 米電子商取引大手のイーベイ(ebay)による世界最大の出品・オークションサイトで、昭和天皇の直筆入りとされる写真「御真影」などが出品されていると書いたが、同じサイトで天皇の写真が別途売られている事実が明らかになった。

 米国の事業者により、複製(reproduction)された「御真影」が1枚8.98ドルで出回っている。元々の値段11.97ドルから「値引き」されている上、米国のスーパーなどでよく目にする「BUY 2, GET 1 FREE」(2つ買うと1つ無料)として安売りされている。

 米国とは商習慣や法律が異なるが、日本ではアイドルグループのポスターなどを複製、無断販売して逮捕された事業者もいる。

 ITやネット環境の向上、物流の効率化に伴い、複製や出品のハードルが下がり、品々がやすやすと売り捌かれている実情。天皇の写真に関する作品などに対する抗議で一部展示が中止となった「あいちトリエンナーレ」をめぐり依然議論が紛糾する中、御真影の扱われ方が問われそうだ。

(※ 参考記事「昭和天皇の「御真影」、世界最大競売サイトで高値取引 直筆サイン「正真正銘」か」)

出品されている複製の「御真影」
出品されている複製の「御真影」

高品質の複製品

 写真は「JAPANESE EMPEROR HIROHITO (NOW KNOWN AS SHOWA)」として売られ、前回の記事で触れたオークションの「1928年に昭和天皇が即位の礼に臨む際の写真」と同じ。ebayにある該当ページの説明文によると、写真は再印刷(reprint)された白黒で、高品質の複製品(high quality reproductions)だという。元の設定価格から25%引きとして割安感を打ち出している。写真は1度に6枚まで買える。

 同じ業者は他に、「JAPANESE CROWN PRINCE HIROHITO, PRINCESS NAGAKO AND DAUGHTER SHIGEKO」(1925年)や「GENERAL DOUGLAS MACARTHUR MEETS WITH JAPANESE EMPEROR HIROHITO」(1945年)の写真も同様に複製品を用意し、割引価格で売っている。

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出品者は高評価

 出品はHistorical Mediaという業者が手掛けている。ebay上では約1万4千の高評価を集め、マイナス評価は一つもない。紹介文には「過去の思い出を捉えたユニークな製品を提供します」(Historical Media provides unique products capturing memories from the past.)とある。

 天皇の写真以外に、NASAの月面着陸など歴史上の出来事や米国の歴代大統領、映画「猿の惑星」の俳優などの写真も、複製して同様に販売している。

無断複製販売、日本では逮捕者も

 複製をめぐっては2017年、人気グループ「嵐」の写真を複製したグッズを無断で販売していたとして、著作権法違反容疑で東京都内のアイドルグッズ製造販売会社の社長が逮捕された。ただ、国も法律も被写体も全く異なるため、複製した昭和天皇の写真を米国で販売する行為の当否は測りかねる。

 なお、Historical Mediaは、著作権情報(Copyright Information)の項目を設け、「商品には幅広いソースを使用しますが、(著作権を)侵害していると知りながら商品を掲載することはありません。商品はパブリックドメインであり、著作権を侵害しないと考えています」(We use a wide variety of sources for our items and never knowingly list infringing items. It is our belief that the item is in the public domain and does not infringe on copyright.)と説明している。

 一方、宮内庁は「皇室の方々が写っている画像、映像等については、宮内庁ホームページ利用規約に該当しますので、使用を希望される場合はご相談ください」としている(宮内庁「皇室の方々の著作物、ご肖像などについて」より)。

宮内庁のウェブサイトより
宮内庁のウェブサイトより

「不敬」な取り扱いなきよう

 ネットを通じた売買や画像・動画の送受信が全盛の現代、画像検索・共有サービスのピンタレストなどでも、皇室関係の写真が多くシェアされている。

 昔はどうだったか。日本では明治以降、時代が下るにつれて、御真影が広く大衆の中に出回るようになってきた。京都大学が発行する学術誌によると、明治時代以降「官製の写真が出回ったのちにその写真をもとした、さまざまなバリエイション」の皇室画が登場し、「写真とはちがい、錦絵や石版画として天皇・皇族の肖像を販売することは、それを天皇・皇族の図像と明記しないかぎり、当局から黙認されていた。もっとも、その販売にさいしては、「不敬」な取り扱いが行なわれないよう」政府が求めていたという(右田裕規「京都社会学年報」「「皇室グラビア」と「御真影」:戦前期新聞雑誌における皇室写真の通時的分析」〈2001〉)。

 

(※注記のない画像はいずれもebayのウェブサイトより。当該サイト掲載品の購入に当たっては一切の責任を負いかねます)