昭和天皇の「御真影」、世界最大競売サイトで高値取引 直筆サイン「正真正銘」か

サイン付き「御真影」の出品画面

 米電子商取引(EC)大手のイーベイ(ebay)による世界最大の出品・オークションサイトで、昭和天皇の直筆とされるサインを添付した「御真影」(皇族の写真)が、4795.29米ドル(約51万円)で売りに出されていることが分かった。サインは、皇太子時代の1921年に欧州を訪問した際のものだといい、「裕仁」と左から右の横書きで記されてある。また同じ訪欧時にパリで鑑賞したとされるコンサート曲目の一覧表も、自筆という「裕仁」のサインが入り、別の出品者が売り出し中。いずれも今のところ買い手はついていない。サインが昭和天皇本人のものかどうかについて、出品者は「正真正銘」の直筆だとしている。

 昭和天皇にまつわる競売品をめぐっては、2017年に独白録の原本とみられる書物が米オークションに掛けられ、美容外科クリニックの高須克弥院長が落札した例がある。

 尊厳のある品々が、ネットの普及や物流の効率化に伴い、容易に国境を越えて流通している実態があらためて浮き彫りになった。

サイン付き「御真影」の出品画面
サイン付き「御真影」の出品画面

(※参考記事 「昭和天皇即位の写真「2枚買ったら1枚タダ」 世界最大ネット競売に出品 問われる「御真影」の扱われ方」)

本物のお墨付き

 御真影は「EMPEROR Hirohito JAPAN autograph, signed album page mounted」と題して売られ、1928年に昭和天皇が即位の礼に臨む際の写真。横11.75インチ(約30センチ)、縦16.5インチ(約42センチ)の大きさでアルバムに納められている。ただ、サインはそれより前の21年、約半年かけて英国やフランス、イタリアなどを訪れた際のものだと紹介されている。

出品中の「御真影」
出品中の「御真影」

 「裕仁」のほか、訪欧に随行した閑院宮載仁(かんいんのみやことひと)親王と、外務次官や侍従長を歴任した珍田捨巳のものとされるサインもあり、いずれも横書きで「載仁」、「珍田捨巳」と黒のインクで記されている。

 サインの部分は横7インチ(約18センチ)、縦5.5インチ(約14センチ)で、「魅力的に」(attractively)に貼り付けられ、「取り外し可能」(removable)という。この品は現在、スイスの湖のほとり、Kesswilにあるそうで、発送は世界中に対応する。

 出品サイトによると、サインは「全くの本物」(100% Authentic)だとして証明書が付され、生涯にわたって返金保証に応じる。

 もう1つの出品は「Emperor of Japan Hirohito - RARE Document Signed - re/ His Western Europe Tour」として4500ドル(約48万円)で売りに出されている。21年6月3日にパリ市庁舎の招宴で演奏された音楽のプログラムだといい、左上に縦書きで「裕仁」と記載がある。

コンサート曲目の一覧表の出品画面
コンサート曲目の一覧表の出品画面
サインの入った一覧表
サインの入った一覧表

 「裕仁皇太子が日本語でサインした、極めてレアなクラシック音楽プログラム」(Extremely rare classical music program signed in Japanese characters by Prince Hirohito)との触れ込みで出品している。真正を証明するフランス語のレターが添付され、「A gauche, signature au crayon du prince Hirohito」(左が裕仁皇太子の鉛筆のサイン)だとしている。

フランス語による証明書
フランス語による証明書

 プログラム右端には「載仁」と書かれている。外務省ウェブサイトで公開中の「皇太子裕仁親王欧洲諸国訪問一件」などによると、一行は当時フランスでベルサイユ宮殿やエッフェル塔を見学していた。

「皇太子裕仁親王欧洲諸国訪問一件」より抜粋
「皇太子裕仁親王欧洲諸国訪問一件」より抜粋

 この品は元々パリで個人のコレクションとして保管され、サインの競売大手「International Autograph Auctions」によって本物だと証明されているという。米サウスカロライナ州から出品されている。

世界最大の競売サイトebay

 個人間で売買ができるebayのサービスは、1億7700万人の買い物客、利用者がいる。ネットオークションとしては世界最大だ。ebayは1995年に米国で創業し、国をまたぐ「越境EC」を掲げて世界展開している。日本にもイーベイジャパンがある。

 オークションの仕組みは、日本の「ヤフオク!」と同様、購入希望者は会員登録をした後、電気製品や衣料品などさまざまな物を買える。基本的な流れとしては、目ぼしい品を見つけたら応札し、オークション終了日時に一番高い値を提示していた人が落札者となる。さらに、出品当初から値段が決まっていたり、複数買うと割引になったりするなど、オプションは多様化している。

ebayのウェブサイト
ebayのウェブサイト

 ネットの普及で売り手も買い手も、互いに物を取引しやすくなった。ただ、買い手にとっては実際に商品が届くまで実物を確かめられないといった不安感や不信感がある。多くの取引はつつがなく行われているが、一部では落札した品が「届かない」「壊れている」「掲載内容と違う」といったトラブルが後を絶たない。

 買い手にとっては、ネットで見られる出品物の写真や説明文に加え、出品者の評価も重要な判断材料となる。ebayもヤフオク!も売買の後に取引相手を評価できる仕組みになっており、信用度を図る指標だ。

「国の宝」競売に

 昭和天皇にまつわる競売をめぐっては、太平洋戦争などの出来事を戦後に天皇が回想し、書籍にもなっていた「昭和天皇独白録」の原本とみられる品が2017年にニューヨークでオークションに掛けられた。「高須クリニック」の高須院長が「日本にあるべき国の宝だ」などとして約27万5000ドル(約3千万円)で落札した。

 その後18年、高須氏は宮内庁に寄贈した。一連のやり取りの中で、どういった経緯で流出したかなど、議論を呼んだ。

(※注記のない画像はいずれもebayのウェブサイトより。当該サイト掲載品の購入に当たっては一切の責任を負いかねます)