新型コロナ 兵庫・淡路島のカメラマンが「フェイスシールド」を自作、医師の監修得てNPO法人と販売

兵庫・淡路島のカメラマンが、医師の監修のもと製作した顔を覆う「フェイスシールド」

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、医療現場での医療資器材の不足が問題となっています。そんな中、兵庫・淡路島で顔を覆う「フェイスシールド(フェイスガード)」を製作し、医師の監修を受けて販売しようという取り組みが始まりました。

 フェイスシールドのサイズは、縦26センチ×横36.5センチで、厚さ0.3ミリ、重さ50グラムです。硬質塩化ビニル樹脂(PVC)と厚さ2センチのスポンジシート、幅2センチ程度のゴムバンドで製作します。南あわじ市のカメラマン、沼田浩孝さんが試作し、友人の岩崎病院(香川県三豊市)医師、国立病院機構兵庫あおの病院(兵庫県小野市)名誉院長、栗栖茂さんや岩崎病院の看護師らのアドバイスをもとに実用化しました。栗栖さんの専門は消化器外科で、内視鏡などで救急も担当しています。

 現在、文具のクリアファイルなどで作られたフェイスシールドが話題になっています。沼田さんによると、PVCはクリアファイルに比べると分厚いですが、強度は優れており、ガラスを通して見るような感覚で細かい作業ができるそうです。

 組み立ては簡単にできるため、淡路島内で知的障害のボーダーラインや発達障害のグレーゾーンにある人や引きこもりの人など、いわゆる“就労弱者”のジョブトレーニングなどに取り組むNPO法人ソーシャルデザインセンター淡路(SODA、事務局・南あわじ市)に委託します。

 販売もSODAが請け負います。4月30日現在、予約分を除いて約600個分の材料を確保していて、さらに需要があれば、ゴールデンウイーク明けには追加で材料を確保できる見込みです。注文は10枚5000円(税別、送料別)から受け付けます。

沼田さんが製作した「フェイスシールド」。透明性が高く、強度も確保されているという
沼田さんが製作した「フェイスシールド」。透明性が高く、強度も確保されているという

医師や看護師の協力で細かい点を改善

 なぜ、沼田さんはフェイスシールドを製作しようと考えたのでしょうか。

 それは、2020年3月末ごろにニュースで見た写真がきっかけでした。海外の医療現場の過酷な状況を伝えるニュースで、ゴーグルを着けて1日中働き、目の周りを赤くはらした看護師の写真が掲載されていました。「ゴーグルよりもフェイスシールドの方が目が痛くならないだろう」。そう考えた沼田さんは、シールドに適した素材を探し始めました。

 OHPシートやクリアファイル、ラミネートフィルムなどいろいろな素材を試してみましたが、強度が足りずにふにゃふにゃしてしまう、息でくもるといった課題がありました。試行錯誤を続けながら、4月半ばに見つかった素材がPVCでした。ある程度の強度を確保できるほか、透明度が非常に高く、長時間着けていても問題のないほどの軽さだったのです。

 周りの人々の意見を聴きながら試作品を完成させ、4月22日に自身のフェイスブックにアップしたところ、多く反響が寄せられました。古くからの友人の栗栖さんもその中の1人です。現在勤務している岩崎病院や関連介護施設でフェイスシールドが大量に必要となり、料理用のものを買ったり、自分たちで作ったりしていました。栗栖さんは、沼田さんに試作品を見せてもらえるよう依頼しました。

 沼田さんが栗栖さんに試作品を送り、病院の看護師ら患者の対応をしているスタッフの意見を聴いたところ、構造的に上部から飛沫が入ってくるリスクがあるなど、さまざまな改善点が見つかりました。沼田さんは、栗栖さんらのアドバイスを取り入れてシールド部分のサイズやおでこへの取り付け角度、密着感といった細かい部分を調整し、ようやく医療者にも納得してもらえるものが完成しました。

組み立て作業は“就労弱者”を支援するNPO法人に委託

 自作したフェイスシールドへの反応に手ごたえを感じた沼田さん。国の緊急事態宣言で外出自粛となり、観光客のいない淡路島は閑散としています。沼田さんが運営する観光スポット、走ってくる犬を空を飛んでいるように撮影する飛行犬撮影所も閉めています。もちろん感染拡大を防ぐためには仕方がないことなのですが、それなら他に地域で仕事をつくれないかとSODA理事長の木田薫さんに組み立て作業を持ちかけたところ、快諾を得られました。

 SODAでは普段、清掃や瓦のはし置きづくり、カッティングボードの研磨作業などを請け負っています。木田さんは「細かい作業が得意な器用な利用者もいるのでできそうだと思いました」。新型コロナウイルスの感染が拡大し、木田さんは、入院中の自身の家族とも面会ができません。厳しい状況の中で洗濯物を受け取ってくれる看護師さんをはじめとした医療従事者に対して、強い感謝の気持ちを抱いていました。

「最前線で頑張ってくれている医療従事者の方々には、本当にありがたく思っています。できることはやっていきたい」(木田さん) また、フェイスシールドの組み立ては、SODAの利用者らの生活の糧、仕事にもなるものでした。

 沼田さんや木田さんは、医療現場以外、スーパーのレジや介護施設、歯科など、利用者とスタッフが対面で対応する現場でも、フェイスシールドの需要があると考えています。「中国からの医療資器材が入ってこないという話も聞きます。私たちの製品は国内にある材料を使って、国内で作れます」(沼田さん)

 栗栖さんは、岩崎病院の病院長の許可を得て、さっそく沼田さんを通じてフェイスシールドを100個発注しました。「フェイスシールドについては、無償で提供の申し出があるほか、別の事業者にも発注していますが、対応に時間がかかっています。沼田さんには早急に作ってもらえそうだったのでお願いすることにしました」(栗栖さん)

 沼田さんや木田さんの取り組みは、多くの人々の需要に応えられるだけでなく、地域の就労弱者の支援にもつながります。外出自粛で淡路島を訪れる観光客が減少する中、島の活性化にもつながる取り組みとして、注目したいです。

NPO法人ソーシャルデザインセンター淡路のホームページ

写真はいずれも沼田さん提供