直径は最大30メートル?!「鳴門の渦潮」を世界遺産に

大鳴門橋と渦潮(ペイレスイメージズ/アフロ)

 四国と兵庫県・淡路島の間にある鳴門海峡で発生する「鳴門の渦潮(うずしお)」。激しい潮の流れが海面に描く渦巻き模様は圧巻で、観光客らに人気です。そんな自然現象を世界遺産に登録しようという取り組みが、地元で進められています。

大鳴門橋の近くを通る観潮船。潮流が激しくなる時間帯は多くの観光客が乗船する
大鳴門橋の近くを通る観潮船。潮流が激しくなる時間帯は多くの観光客が乗船する

 そもそも鳴門の渦潮はどうして発生するのでしょうか。それは、鳴門海峡の狭さと深さが関係しています。

鳴門海峡周辺の地図
鳴門海峡周辺の地図

 海峡の幅は、わずか1.3キロメートルで、V字型になっている海底断面の深さは約100メートル。一度にたくさんの潮が通れないため、潮の満ち引きによって、海峡の両側、瀬戸内海と太平洋との境目で海面の高さに落差ができます。例えば、瀬戸内海側が満潮の時、太平洋側が干潮となるのです。この高低差は、最大1.5メートルにもなります。

 両側で大きな高低差ができた海峡を潮が通る時、中央部は速く、両岸部は遅く流れるため、その速度の違いで回転力が生まれ、渦潮が発生します。鳴門海峡では、両側が満潮と干潮となる約6時間ごとに、渦潮ができます。

 国内や海外の他の海峡でも、渦潮が起こりますが、鳴門の渦潮は、昔から「世界最大規模」、大きいもので直径30メートルあるといわれてきました。そして、1990年代後半から、「このダイナミックな自然現象を世界遺産に登録しよう」という動きが起こったのです。

大鳴門橋の下では、海面に高低差ができているのが分かる
大鳴門橋の下では、海面に高低差ができているのが分かる

世界遺産への登録を目指し推進協議会を設立

 まずは渦潮の地元、徳島県鳴門市や兵庫県南あわじ市で民間レベルの団体が設立され、鳴門市と南あわじ市も加わります。そして2014年12月、兵庫、徳島両県の関係自治体などでつくる「兵庫・徳島『鳴門の渦潮』世界遺産登録推進協議会」が発足しました。

 推進協議会が目指す、自然遺産での世界遺産登録には、「最上級の自然現象、又は、たぐいまれな自然美・美的価値」や「重要な地形学的又は自然地理学的特徴」といった条件を満たす、価値が認められる必要があります。

 しかし、鳴門の渦潮は、これまで世界最大規模といわれながら、うずの大きさや発生メカニズムを詳細に示す公的なデータが乏しく、その価値が科学的に証明されていませんでした。このため協議会は、2017年度から3年間、これらを調査して科学的なデータを集め、世界遺産登録への第一歩、日本国内での暫定リスト入りを目指すことにしたのです。

 2017年11月7日には、潮流が最も激しくなる朝と昼の時間帯に現地調査を実施。ヘリコプターで高度約700メートル、ドローンを利用して高度100~150メートルの上空から、渦潮が発生してから消滅するまでの潮流を動画や静止画で撮影したほか、GPS(全地球測位システム)を内蔵した浮標(ブイ)を渦潮の発生地点に流し、潮流の向きや速さを観測しました。

GPS(全地球測位システム)を内蔵した浮標(ブイ)を、渦潮の上流から下流へと流す
GPS(全地球測位システム)を内蔵した浮標(ブイ)を、渦潮の上流から下流へと流す

 筆者はこの日、長さ15メートル、幅3メートル、重さ9.7トンの観潮船「ヘリオス」に乗って取材しました。うずが発生している場所を通る時は、船がガッタンガッタンと遊園地のアトラクションなみに上下に揺れ、図らずも潮流の激しさ、渦潮の偉大さを実感することができました。

 推進協議会は今後、調査結果を解析するとともに、本州と九州の間にある関門海峡や愛媛県の来島海峡など他の場所で発生する渦潮についても調査し、鳴門と大きさや発生のメカニズムなどを比較するそうです。イタリアや米国にある渦潮を調べることも検討しています。

高度100~150メートルの上空から潮流を撮影したドローンを慎重に着地させる
高度100~150メートルの上空から潮流を撮影したドローンを慎重に着地させる

 

 今回の調査に同行した兵庫県淡路県民局の吉村文章局長は「鳴門の渦潮は世界一大きい、すごいと言われているが、どうすごいのかを科学的に実証したものがなかった。調査で渦潮のすごさを立証して、登録に向けた準備を進めていきたい」と話していました。登録までのプロセスを発信することで、観光客の増加にもつなげたいようです。

 調査によって、鳴門の渦潮の秘密やすごさが解き明かされるのでしょうか。そして、世界遺産登録は達成できるのでしょうか。今後の動きに期待です。 

撮影=筆者